トルコ・イスタンブールでしたい6つのこと。

Lifestyle

アジアとヨーロッパが交わる街、イスタンブール。路地裏に漂うストリートフード香ばしさに惹かれ、洗練を極めたファインダイニングで現代の息吹を味わう。湯気と大理石の静寂に包まれたハマムでは、日常のすべてがほどけていくようなラグジュアリーなまどろみに満たされる。モダンアートの鋭い感性に揺さぶられたかと思えば、トプカプ宮殿に眠る絢爛豪華な至宝を前に、かつての栄華の残光にただ溜息をもらす。歴史、カルチャー、グルメ、ウェルネスが一度に楽しめる、五感のすべてがドラマチックに交差するトルコ、イスタンブールの最新旅へ。


1. 今時の進化系レストランと伝統的なソウルフードを食べ比べる

フランス料理、中国料理と並び、世界三大料理のひとつに数えられるトルコ料理。今年はトルコ全土を対象とした初の全国版ミシュランガイドの発刊が予定されるなど、ガストロノミーへの注目度が世界中で高まっている。

イスタンブールを訪れたら、食の最先端のトレンドと、歴史に裏打ちされたローカルフードの両方をぜひ味わいたい。

「ムート・アナトリアン・タパス・バー」のメインディッシュから、牛肉のテンダーロインとししとう、パイナップルの串の炭火焼をフォカッチャの上にのせ、トマトとバジルソースを添えて(1950リラ)。
モダンなインテリアの「ムート・アナトリアン・タパス・バー」の店内。

「Muutto Anatolian Tapas Bar(ムート・アナトリアン・タパス・バー)」は、アナトリア地方の豊かな食文化を、モダンな感性で再解釈したレストラン。ウォーターフロント、ガラタポートに面しており、船が行きかう海を一望できる窓側はまさに特等席。店名に「タパス」とあるように小皿料理の店なので、少しずついろんな種類の料理が食べられるのがうれしい。

「ムート・アナトリアン・タパス・バー」のシグネチャーメニューのタパス5種セット(1690トルコリラ)。

おすすめはシェフのシグネチャーメニューのタパス5種セット。「ナズクタン(焼きナスに香ばしいナッツ類、ヨーグルト、にんにくを合わせたペースト)」や、マッシュルームのフムス、華やかなオレンジとビーツのタブレ、ラベンダーパウダーが香る「チェルケスパテ(じゃがいもとチキンのパテ)」、生とグリルの食感の違いを楽しむズッキーニのサラダと、料理には野菜やオリーブオイルをたっぷり使っているのでヘルシー。ワインやカクテルを片手に、美しい風景を堪能しながらアペリティフを楽しみたい。

一方、歴史に育まれたソウルフードの専門店も外せない。トルコの食卓に欠かせないのがピザの原形ともいわれる「ピデ」。なかでもイチリピデは、舟形のパンの生地に肉やチーズなどをのせてオーブンで一気に焼き上げたもので、まさにトルコ版ピザ。アットホームな雰囲気の家族経営店「Fatih Karadeniz Pidecisi İbrahim Usta(ファーティフ・カラデニズ・ピデジスィ・イブラヒム・ウスタ)」では、外はカリっと中はふわっとした食感の、出来立て熱々が食べられる。

「シェフザーデ・ジャー・ケバプ」のケバブ。薄いクレープ状のパンで野菜などと共に巻いて食べる(2串460トルコリラ)。上: 中央上は「エズメ」(トマトとスマックやチリなどのスパイスを混ぜた辛い前菜)。

そしてトルコといえばやはりケバブ。日本で主流のドネルケバブとは異なり、羊肉を横向きに回転させながら薪火でじっくりと燻し焼く、珍しい「ジャーケバブ」を堪能できるのが、「ŞEHZADE CAĞ KEBAP(シェフザーデ・ジャー・ケバプ)」だ。いつも賑わっているこの店のケバブは薪の香りが香ばしく、ジューシーで、「世界一おいしいケバブ」と絶賛する人が後を絶たない。みずみずしいトマトとパセリのサラダや濃厚なヨーグルトとの相性が抜群だ。

進化を続けるモダン・ガストロノミーと、何世代にもわたって守られてきた街の味の異なる食体験のコントラストを楽しんで。

Muutto Anatolian Tapas Bar
ムート・アナトリアン・タパス・バー
Kılıçali Paşa, Parliament Street, Galataport Beyoğlu, Istanbul
https://www.muutto.com.tr/en

Fatih Karadeniz Pidecisi İbrahim Usta
ファーティフ・カラデニズ・ピデジスィ・イブラヒム・ウスタ
Zeyrek mahallesi Büyük Karaman Caddesi no 40 , 34083 Fatih, Istanbul
Instagram: @fatihkaradenizpidesi

ŞEHZADE CAĞ KEBAP
シェフザーデ・ジャー・ケバプ
Hoca Paşa Sk. No:6 D:4, Istanbul, Istanbul

2. 16世紀のオスマン帝国時代から続くハマムを体験する

左:歴史的建造物の静謐な雰囲気と、洗練されたデザインが融合された空間。右:トルコ出身のファッションデザイナーであるフセイン・チャラヤンが、ハマム内で使用される伝統的なペシュテマル(薄手のタオル)などをデザイン。©Barbaros Cangurgel

13年にも及ぶ大規模な修復プロジェクトを経て、2023年にリニューアルオープンした、「Zeyrek Çinili Hamam(ゼイレッキ・チニリ・ハマム)」。16世紀のオスマン帝国時代に天才建築家ミーマル・スィナンによって設計された、古い歴史をもつハマムだ。名前に冠された青色のタイル(Çiniliはタイルの意)」は大部分が失われ、現在は壁にわずか6枚を残すのみだが、一歩足を踏み入れれば、白く輝く大理石が織りなす圧倒的な美しさに目を奪われる。室内の温度は40~50度で、湿度が高く、穏やかに全身が温まっていき、肌がしっとり。この静謐な空間で受けるマッサージや垢すりは、まさに極上のリラクゼーション。なかでも、施術の最後に仕上げに施されるふわふわの泡トリートメントは、数世紀前のオスマン帝国で愛されたオリジナルを忠実に再現しているのだとか。この歴史的建造物にモダンな息吹を吹き込むのが、現代アートやカルチャーとのコラボレーション。ちなみにオリジナルのペシュテマルタオルやサンダル、スタッフのユニフォームなどのデザインを手がけているは、デザイナーのフセイン・チャラヤン。また、入り口付近にある小さなミュージアムでは、修復中に発見されたビザンチン時代の貯水槽の写真や、地中に眠っていた5世紀のローマガラスの瓶、17世紀のタバコパイプなどの遺品を展示。オスマン帝国の栄華、ローマやビザンチンの記憶、そして現代の洗練されたデザインと、壮大な時間のうねりを肌で感じながら心身ともに癒される。

16世紀にオスマン帝国海軍の提督バルバロス・ハイレッディン・パシャの命により建築されたハマムが現代によみがえった。photography: Murat Germen

「Zeyrek Çinili Hamam」
Zeyrek Mah. Itfaiye Cad. No: 44 Fatih, Istanbul
https://zeyrekcinilihamam.com/en
ハマムのメニューは「オリジナル」(50分)が125ユーロ~

3. 東西の歴史が息づく街で、トルコ現代アートの最前線に触れる。

いま、世界から熱い視線が注がれるトルコの現代アート。その発信拠点となっているのが、2019年に移転リニューアルしたギャラリー「Arter(アルテル)」だ。1,300点を超える現代美術コレクションの半数以上をトルコ出身のアーティストが占め、6フロアに及ぶ展示空間では常にエッジの立った企画展が行われている。現在はコレクション展「Work in Progress」が開催中(2027年4月17日まで)で、気鋭のローカルアーティストをチェックする絶好の機会だ。

「Work in Progress」展から、ブラジル人アーティスト、ルシア・コッホが「アルテル」の窓部分にファブリックを使って表現した作品「Dolapdere Suite (From the series Air Temperature)」2026 Courtesy of the artist and Carlier Gebauer Gallery photography: Murat-Germen
「Work in Progress」展から、トルコ人アーティスト、ネルミン・エルの「Pool Temperature」2026。館内の壁を使用した作品。photography: Murat Germen
「Work in Progress」展から、トルコ人アーティスト、ギョズデ・イルキンの作品「Basphorus Tour」2014-2015  Private Collection  photography: Fırat Rüzgar

あわせて訪れたいのが、5年の歳月を経て2023年に再建された「Istanbul Modern(イスタンブール・モダン)」。レンゾ・ピアノ設計の建築美も見事な館内では、伝説的オペラ歌手であり画家でもあったセミハ・ベルクソイの展覧会(9月6日まで)や、世代を超えた18人の写真・映像表現に迫る「Panorama: Dreams and Places(パノラマ:夢と場所)」(10月18日まで)が開催されている。歴史を感じさせる街並みの中で、現代アートの今を体感するのも一興だ。

レンゾ・ピアノ設計の「イスタンブール・モダン」。館内にはスタイリッシュなカフェ&レストランもある。

Arter
アルテル
Irmak Caddesi No: 13 Dolapdere Beyoğlu 34435 Istanbul
https://www.arter.org.tr/

Istanbul Museum of Modern Art
イスタンブール・モダン
https://www.istanbulmodern.org/en
Kılıç Ali Paşa Mahallesi, Tophane Iskele Caddesi
No:1/1 34433 Beyoğlu-Istanbul

4. トプカプ宮殿の宝物殿で当時の栄華を妄想する

世界遺産に登録されているトプカプ宮殿。約400年もの間、オスマン帝国のスルタンたちが暮らし、政治や文化の舵取りを行ってきた場所であり、華やかな大帝国の面影が、今も静かに息づいている。なかでも足を運びたいのが、約9年間の修復工事を終えて2023年4月に再び公開された「宝物館」。

トプカプ宮殿の広さは約70万平方メートル。じっくり見学するなら、半日は確保したい。
左:86カラットのペアシェイプの「スプーン職人のダイヤモンド」。 右:金や宝石が散りばめられた洗練された装飾品は、細部まで美しく、眺めているだけで心を満たされる。
手前はオスマン帝国の女性が身に着けたアクセサリー。イヤリングのモチーフは幾何学模様や草花をアレンジしたものが多い。

展示されているのは、かつての外交の歴史を伝える贈答品や戦利品の数々。ダイヤモンドやエメラルド、ルビーが配されたジュエリー類をはじめ、玉座や調度品、精緻な意匠の武器などは、当時の卓越した工芸技術と美意識を現代に伝えている。特に有名な「スプーン職人のダイヤモンド」や「トプカプの短剣」の繊細な美しさは、ため息が出るほど。宮殿の魅力は宝物館だけに留まらず、かつての宮廷女性たちの生活舞台であったハーレムや膨大な陶磁器コレクション、そして空間を美しく彩る洗練されたイズニックタイルなど、見どころはたくさん。午後は混みあうので開館と同時に訪れるのがおすすめだ。

Topkapi Palace Museum
Cankurtaran, 34122 Fatih, Istanbul
https://topkapimuseum.com/

5. 高感度な小さなブティックホテルで暮らすように滞在

ボスポラス海峡の目の前に建つ、カラキョイ地区に2025年6月にオープンした「Hovagimyan Hotel and Suite(ホヴァギミャン・ホテル・アンド・スイーツ)」は、暮らすように滞在するのに最適なブティックホテル。

アンティーク家具とモダンなインテリアがマッチ。
各部屋にはオーナーのコレクションである現代アート作品が飾られている。
ボスポラス海峡側のスイートルームなので、窓からは海が一望できる。

約100年前に造られたアールヌーボ調の建物をリノベーションし、各部屋にはオーナーのコレクションであるヨーロッパのアンティーク家具やトルコ人アーティストによるモダンアートがセンス良く配置。21室がすべてスイートルームで、キッチンが完備されているため料理も可能。どこに行くのにもアクセスしやすい繁華街にあるのに、外の喧騒をよそに落ち着いた雰囲気でのんびりできる。1Fのモダントルコ料理のレストラン「センデン」での朝食は、焼き立てのパンに自家製マーマレードや「ウズムペクメズ(ぶどうの糖蜜)」とタヒニ(ごまペースト)を混ぜたディップをたっぷりぬって。フルーティでナッティーなコクがあり、クセになる味わいだ。トップフロアはバーになっており、海側と街が一望できる絶景パノラマビューと共にカクテルやワインを楽しむことができる。

小さな隠れ家的ブティックホテル。
焼き立てのパンにフレッシュなベリーがうれしい「ブレックファストプレート」(1150リラ)。左下のごまがのっているのが、「ウズムペクメズ(ぶどうの糖蜜)」とタヒニ(ごまペースト)を混ぜたディップ。

Hovagimyan Hotel and Suite
ホヴァギミャン・ホテル・アンド・スイーツ
Kemankeş Karamustafa Paşa Mah. Kemankeş Cd. No:45, Karaköy-Beyoğlu, Istanbul
https://www.hovagimyan.com/
料金(1室)/370ユーロ~

6. 世界一、自由な猫たちに癒される。

街を歩くといたるところで見かける、リラックスした様子の猫たち。イスタンブールは「ねこにやさしい街」として知られており、イスラム教的にも猫は清潔で愛されるべき動物とされ、預言者ムハンマドは「猫への愛は信仰の一側面である」と述べたと伝えられている(さすがに「アルテル」のギャラリーのインスタレーションのなかにまで、猫がいたときは驚いた)。表情豊かで愛らしい猫たちの姿は、旅に幸せな彩りを添えてくれる。

photography: Miho Kakuta(1 Muutto Anatolian Tapas Bar,4,5) text: Yumiko Takayama 取材協力: トルコ共和国大使館 文化観光局、GoTürkiye、ターキッシュエアラインズ