【新世代の女性オペラ歌手5人】「ここが自分の居場所」──情感豊かなしなやかな高音が魅力のニコル・カー。

Paris

アールドゥヴィーヴルへの招待 vol.13
モード、カルチャー、ライフスタイルを軸に、豊かに自由に人生を謳歌するパリジェンヌたちの知恵と工夫を伝え続けてきたフィガロジャポン。
アールドゥヴィーヴルの結晶であるフランスの美学を、さまざまな視点からお届け。

卓越した才能を持ちながらも決して傲慢ではない新世代の歌姫たちは、オペラ界に新風をもたらしている。クラシックなレパートリーに情熱を注ぎながら、モダンな感性で舞台を彩り、観客と共鳴し、役柄を超えて感動を生み出す。そんな“リリック世代”と呼ばれる5人のうちのひとり、ニコル・カーに注目。

Nicole Car/ニコル・カー
情感が込もった、しなやかな高音。

――あなたにとってオペラとは?
あらゆる感情、あらゆる芸術が組み合わさったトータルアートです。

――なぜ歌うのか?
普段の私はとても内向的なのです。でも舞台に立つと、ここが自分の居場所だと感じます。私は音楽や人物、物語の「器」になるのです。

――生まれて初めて芸術に衝撃を受けた体験は?
17歳の時に観たプッチーニの『トスカ』が運命の出合いとなりました。それまでオペラを観たことがなく
て、音楽が始まった途端、自分はこれをやるために生まれてきたと感じました。それまではジャズ歌手になりたかったのに。

――あなたはどんな声?
ハチミツのようにとろっとしてしなやかで、暗い音色なのに高音に透明感があります。

――あなたのルーティンは?
静けさを保つこと。たとえ旅先であっても、落ち着いて過ごせる一軒家やアパートに滞在することが大切です。リハーサル期間はまるで修道院生活で、公演当日に厳禁なのはチーズ、砂糖、お酒です。

――いちばん好きなオペラ作品は?
これまでも、これからもプッチーニの『ラ・ボエーム』です。歌手のレベルは問いません。常に何かがあります。だって愛し合う人たちの話ですからね。

2025年10月14日までパリのオペラ座バスティーユで上演されていたプッチーニの『ラ・ボエーム』©Monika Rittershaus ‒ OnP

Nicole Car
ソプラノ歌手。オーストラリア出身。2012 年のオーストラリア・オペラ・アワード、13年のノイエ・シュティメン・コンクールで優勝。夫でバリトン歌手のエティエンヌ・デュピュイとともに、カナダ声楽芸術研究所の共同芸術監督も務める。
https://www.nicolecar.com/

※5月2日~20日、パリのオペラ座バスティーユにてドヴォルザークの『ルサルカ』に出演した。

*「フィガロジャポン」2026年6月号より抜粋

  • photography: Laura Stevens (Madame Figaro)
  • text: Laetitia Cénac (Madame Figaro)

*「フィガロジャポン」2026年6月号より抜粋