映画『ドラマなふたり』が暴く、結婚までの出会いとリアル。男と女の視点から赤裸々レビュー!

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ゼンデイヤとロバート・パティンソン。いま最も旬なふたりが共演するA24の話題作『ドラマなふたり』は、男女が出会って恋に落ち、その後いかに関係崩壊の危機を迎えるのかを見事に描いた悲喜劇である。身につまされる「男女あるある」と衝撃のラストをどう解釈するか、観終わったあとに確実に誰かと語りたくなるストーリー。―――そんなわけで、バツイチである私、恋愛コラムニストのさかいもゆる(アラフィフ)をはじめ、アラサーからアラフィフまでの男女混合チームで自らの恋愛体験を絡めつつ、好き放題のレビュー座談会を開催してみた!

この物語のあのシーン、このシーンをどう解釈するかで恋愛観やモラルが浮き彫りになるので、カップルで観に行くには「自己責任で」と謳われているほど。なぜ人は恋に落ち、愛は終わるのか。そんな永遠のテーマについて考察する。

【座談会メンバー】
さかいもゆる:アラフィフ、バツイチライター。セレブゴシップと恋愛コラムが専門分野。離婚経験があるため愛を失う物語に涙腺崩壊する傾向があり、『ドラマなふたり』ラストでは号泣。
N村:30代、メンズファッションエディター。6年間の結婚生活に終止符を打ったばかりで毎晩飲み歩いているバツイチシングル。
R子:40代、エディター。10年単位で恋愛無風。そもそも男嫌いで恋愛にはもはや興味なし。本作ラストにはドン引き派。

男女の危機はどんな「きっかけ」でやってくる?

結婚式1週間前の幸せの絶頂にあるカップル、エマ(ゼンデイヤ)とチャーリー(ロバート・パティンソン)。しかし酔った勢いでした付添人の友人カップルとの「秘密の告白」ゲームでふたりの関係は一転、天国から地獄へ。誰にでも起こり得りそうなシチュエーションを上質な脚本と当代きってのスター、ゼンデイヤとロバートの演技力でブラックな笑いに変え、観ているこちらはキュンキュンからのハラハラ、ドキドキと心臓と情緒が目まぐるしく揺さぶられて行く。そんな風に、最近すっかり忘れていた、恋愛にまつわる様々な感情を味わえた本作だけど、実はラストの感想は座談会メンバー内で真っ二つに。

さかい:(試写を観終わって)いや〜、面白かった! 芸術性高めなA24にしては王道で、男女間のトラブルが自分にも思い当たることだらけで見ていて身につまされたな。ラブコメじゃなくて、悲喜劇?

N村:遠目で見てる分には笑えるけど、近くから見るとトンデモない悲劇だという(笑)。

さかい:自分がいま、どういう状況にいるかによって視点が変わる作品だよね。私がラストで泣いたと言ったら、R子は「え、泣く要素ありました?」ってなってたし。そこも含めて語りたくなる映画だった。

R子:普通なら出会ってから離婚するまでに何年間もかけて味わうような感情を、結婚式前の準備期間の7日間に凝縮して一気に描いて見せているスピードと、切羽詰まってる感も良かった。

さかい:ロバート・パティンソン好きの私としては、「ロバートの生かし方わかってるな」っていう、100点満点のスタイリングもツボだったな。ぼさぼさの髪の毛に黒縁眼鏡という無頓着さに、肩幅を生かしたパーカ姿や洗面所でのTシャツ姿、最高。

R子:「ブリティッシュ男子」の見本!

さかい:ゼンデイヤも可愛かったし。ふたりともさすがに演技上手いなと思ったのが、最初のダンスのシーン。踊っているだけなのに、このふたりはすごい幸せで愛し合ってるんだと伝わって来て。

R子:それなのに、急転直下(笑)

さかい:怖いのが、あれって男女間のどの段階でも起きることなんだよね。初めは勝手に相手を理想化していたのに、知らない一面を知った途端に「思ってたんと違う……!」って疑心暗鬼になり、それまでスルーしていたことに気がついたり、悪い方に妄想が膨らんで暴走しちゃう。小さなことをきっかけに恋の魔法が解けて、幸せが壊れて行くっていうのが、身に覚えありすぎて(泣)。

N村:そういう描写がすごく上手いですよね。自分もちょっと何かを踏み間違えたらああなってしまう、という怖さ(笑)。

R子:この映画、男性がどう感じるのかをすごく知りたいと思っていたのよ。

N村:僕的にはまず、好みだったり好きになると一度は盲目になってしまう部分に強く共感しましたね。たぶん男の方が理想化は強くて、現実を見られなくなるところはあると思う。とにかく付き合いたい気持ちが先行して、欠点はどうでも良くなって受け入れるフェーズがあるから、チャーリーの葛藤はめっちゃわかる。

さかい:やっぱりそうなんだ! それが怖いよね。たぶん性欲もあって欠点をオブラートに包んで見えなくさせるんだろうな。それが剥がれ始めるのは、いつ頃からなんだろう?

N村:うーん、4ヶ月目くらいですかね。

さかい:やっぱり、そうか〜〜〜!! 「交際4ヶ月目までは、お試し期間」説! アプリで出会って別れるのもそれくらいだって聞くものね。

R子:エマとチャーリーは、28歳で出会って30歳で結婚って言ってたから、交際2年くらいなのかな。

N村:チャーリーは学芸員で、部屋のインテリアもさすがのセンスでした。まさに“プライドと偏見“って感じの人物。悪い人じゃないけど、世間体を気にして結婚式にあんなにお金をかけて、だから今更もう引くに引けないしと、葛藤して追い詰められている感じがリアルで。

さかい:そういえば、エマとチャーリーの出会いのシーン。あれ、「デュア・リパじゃん!」って興奮した。デュアは、今年6月に俳優のカラム・ターナーと結婚したばかりなんだけど、ふたりが恋に落ちたきっかけが、一冊の小説だったの。出会ったときにふたりは『トラスト』っていう同じ本の同じ章を読み終わったところだったんだって。読書家のデュアは、それで一気に運命感じて盛り上がったらしいんだけど、この映画観ていたら、カラムも本当にその本を読んでいたのか怪しいもんだな、と思っちゃった(笑)。

N村:最近観た国際ロマンス詐欺を描いた香港映画でも、ターゲットのSNSを見れば趣味がわかるから、その人が読んだ本を「最近こんな本を読んで面白かった」と会話を進めれば、運命は簡単に作れます、と言ってました。

R子:アルゴリズムみたいなものですね。運命を感じさせる罠を仕掛けるのは、案外簡単。

さかい:怖い! こんなデジタル社会の現代で同じ本を読んでいるって何かロマンチックだから、結構引っかかりやすいテクニックなのかもしれないね。

―――劇中では、「いままでしでかした最悪なこと」をエマとチャーリーが友人夫婦と打ち明け合い、それがきっかけで信頼関係が壊れて行く。

パートナーには酒の席で打ち明け話をしてはいけない!?

さかい:あの友人夫婦役のキャラクター設定も上手いよね。女友達が、みんなで楽しんでいたのに社会問題的な話題で見事にスイッチが入って空気を凍らせる感じ。

N村:彼女は、良い・悪いの判断がはっきりしていましたよね。

さかい:でも旦那さんの方は、チャーリーの挙式スピーチの草案読んで泣いちゃうとか、いいやつ。

R子:いやいや。あのご主人は、いい人と見せかけて裏で結構酷いこと言ってましたよ。そこがまたリアル。私的には女友達の方が裏表がなくて人としては好きなタイプ。っていうか、過去の秘密は全員酷かったですよね。

さかい:たまたま今回はエマのエピソードがブライズメイドの許せないポイントを刺激しちゃったからあんなことになったけど……。何を許せないかで分かれると思う。

R子:ふたりの間の信頼関係だけでなく、友人関係、つまり彼らを取り巻く社会の地盤が揺らいだのがかなり大きな原因なんだろうなと思いましたね。結婚となると、自分だけが目を瞑ってればいい、というわけにもいかないし。周囲が騒いで揺さぶってきますからね。

N村:酒を飲みながらああいう話をしてはいけないという教訓。笑い話にならなかったときが、辛すぎる。

R子:信頼ってすべての基盤ですものね。ちょっとした言葉やエピソードから、人の本質が見えてくるから。日常のストーリーや言葉の中に「ん?」と少しだけ引っかかる部分をナチュラルに散りばめているのが本当に上手かった。

さかい:人と人との間に、一回先入観が入っちゃうと難しいよね。疑心暗鬼になったチャーリーは、もうエマを見ても学生時代のヤバかった彼女にしか見えなくなっちゃっていたし(笑)。

N村:セックス中にビンタされたことまで彼女の過去の行動に紐付け始めたりね。「それは関係ないやろ」と思いましたけど。

一度「信頼できない」という先入観を持たれたら関係は終わる

さかい:私自身、以前付き合い始めた彼に離婚の原因を問われて「夫のスマホを見たら、浮気をしていたことが発覚した」というエピソードを正直に話したことがあるの。もちろん、常にスマホチェックをしているわけではなくて、ずっと様子がおかしくて最終手段として見たらビンゴだったという経緯なんだけど。それ以来、彼の中で「スマホを見る女」とインプットされてしまった。一緒に居るときスマホを裏返しにしたりして、めちゃくちゃ警戒されるようになったんだよね。

R子:それは辛い。

さかい:そう。彼が警戒してコソコソするから、こっちはこっちで「何か隠し事してる?」と疑うようになって。疑心暗鬼の相乗効果を見事に発揮(苦笑)。結局、そこから上手く行かなくなっちゃった。結局、恋愛って幻想と妄想で出来たエゴってことかも。

それにしても、観たあとにこれだけ語りたくなるのは、思い当たる節がかなりあるストーリーってことだね。

N村:気まずい「あるある」がありすぎて、この映画を恋人同士で観に行っていいのか?という懸念はありますね。別々に観に行った方がいいのかもしれない。語り合うにしても、外で話すのはいいけど、家の中で話すとうっかりガチンコになるかも……。

R子:やはり自己責任、ってことで(笑)。

―――さかいが泣いて、R子がドン引きした衝撃のラストシーンについては、ネタバレを含むため後編でそれぞれの解釈を紹介したいと思う。

『ドラマなふたり』
監督・脚本:クリストファー・ボルグリ
製作:ラース・クヌードセン、アリ・アスター
出演:ゼンデイヤ、ロバート・パティンソン 、アラナ・ハイム、ママドゥ・アティエ、ヘイリー・ゲイツほか
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公式サイト:https://happinet-phantom.com/drama
8月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

さかい もゆる

恋愛コラムニスト

恋愛コラムニスト。アラフォーでバツイチになり、以降、自身や取材の経験を活かした恋愛&セクシュアル・エンパワーメントコラムを執筆。多数の女性誌&モード誌で連載を手がける。