「君は僕を好きになるはず」恋愛におけるいいひと症候群を見抜く方法。

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いつもそばにいてくれて、気配りができて、聞き上手な男子。でもその優しさは本物? 心理の専門家がインスタグラムで「ナイスガイ(いい人)症候群」を読み解く。

photography: shutterStock

カリー・バーカー監督の話題作『オブセッション 災愛』が今夏封切られた(日本公開は2026年7月17日)。この映画に登場する青年ベアがネットで話題を呼んでいる。一見、典型的な好青年だ。シャイだけどまじめで、密かに想いを寄せるニッキーのためならいつでもどこへでも駆けつける。でも彼の優しさは徐々に重苦しさを帯びてくる。こんなに彼女に尽くしたのだから、愛されて当然だとでもいうように。心理の世界でこれは「ナイスガイ(いい人)症候群」と呼ばれている。共に心理士のエマ&ジャック・ルサージュは7月26日、やさしさに対価を求めてしまう心理について、インスタグラムにポストした。

条件付きの優しさ

最初、違和感はまったくない。それどころか気配りができて面倒見が良く、いつでも助けてくれる「優しい男の子」だ。『オブセッション 災愛』のベアがニッキーに対してそうだったように、見返りを一切求めていないように見える。だからこそ見抜くのが難しい。心理士のエマ&ジャック・ルサージュによれば、ポイントは「優しさに対する見返りがあるはず」と考えているかどうかだ。優しい彼の行動の裏には「愛情、性的関係、注目、忠誠、承認」といったなんらかの見返りへの期待が隠されている。そこに「何の見返りも求めない本当の優しさ」との大きな違いがある。

時間と共にこの構図が露呈してくると、ふたりの関係は「有害」なものに変わる。関係が深まるにつれ、その親切心も好意も、献身的な態度も、見えない天秤にかけられているように感じられてくる。はっきりと口にしなくても、「優しい彼」はこれだけやったのだから報われて当然と考えるようになる。「あなたを大切にしてきた。だからお返しがあってしかるべきだ」、「僕はいい人だ。だからあなたは僕を好きになるはずだ」という思考パターンなのだそうだ。「けれど、それは愛ではありません。歪んだ認知パターンにすぎないのです」

思い通りにいかない苛立ち

相手が思い通りにならないと、すぐに苛立ちが表面化する。専門家によれば、この手の人物は「思い通りにならないことを受け入れられず、相手が嫌がったり離れて行こうとしたりすることに向き合えない」そうだ。ふたりの関係に「投資」してきたと考えているために、相手が拒絶するのは相手の自由とは考えられず、不当な仕打ちと感じてしまう。「こうなると優しさは消え失せ、非難や被害者意識、嫉妬が生まれ、相手に心理的重圧をかけようとしはじめます」と、エマ&ジャック・ルサージュは説明する。

『オブセッション 災愛』が描くのは、まさにそんな状況だ。ニッキーに尽くしてきたのだから当然、彼女の愛によって報われるはずだと信じ込んでいるベアは、彼女から愛されていないという事実を受け入れられない。誠実な愛情のように見えていたものは徐々に執着へと変わっていき、彼は彼女が繰り返し拒絶していることや「放っておいて」という言葉を無視するようになっていく。

子ども時代からの思い込み

心理カウンセラーによれば、いい人症候群の原因は1つだけではないし、本人に悪意がない場合だってある。元をたどれば生きていく過程で身についた思考パターンに行き着く。「完璧で親切ないい子でいれば愛してもらえる」という考えのまま育つ人がいる。自分に対する愛情が自分の行動と関連していると考えるようになり、やがて愛は勝ち取るものという考えに至る。世の中の風潮に後押しされている側面もある。エマ&ジャック・ルサージュは「男性は“いい人でいれば彼女ができる”と刷り込まれて育ちます」と言う。映画やドラマ、教育を通じ、ずっと親切な人でい続ければ必ず愛が得られると思い込まされるのだ。

尽くしタイプの人のなかには、「拒絶への恐れ」が隠れている場合もある。愛されるためには、常に誰よりも尽くさなければならないと思っている人たちだ。「この場合、優しさは相手を得るための安心材料です」

この思考パターンから抜け出すには

この思考パターンから抜け出すにはどうしたらいいのだろう。エマ&ジャック・ルサージュによればまず、自分の行動の裏になんらかの期待が潜んでいることに気づかなくてはならない。こう自問することだ。「自分は本当にいい人なのか、見返りを求めていないだろうか」と。大切なのは相手に無関心になることではなく、優しさに対価を求めないことだ。

続いて専門家が勧めるのは、拒絶される恐れと向き合うこと、苛立ちや自分が辛いと感じる感情をうまくやりすごす術を身につけること、そして「打算ではない」関係を築くことだ。自分が望むから与え、相手が望むから与えてもらう。そこに打算が入り込む余地はない。従来の思考パターンからどうしても抜け出せない場合はセラピーを受けることが役立つかもしれない。

いずれにせよ、確かなことはひとつある。「愛は貸し借りでもなければ打算でもない。自ら選び取るものだ」

From madameFIGARO.fr

※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

  • text: Tatiana Sequeira Nascimento (madame.lefigaro.fr)