ガストロノミー界の新星、ドゥブル・アンパクト。第1章のおまかせは「オデュッセイア」。
パリ9区に3月にオープンしたガストロノミーレストランのDouble impact(ドゥブル・アンパクト)。シェフのエティエンヌ・デュプイとマネージャーのミカエル・ロビノーはホテル学校でともに学んだ仲で、その二人が再会して生まれたのがこのレストランである。あまりレストランらしからぬ店名は、緊張とバランス、動きと静けさ、正確さと自由……といったコントラストや相補関係が仕事のベースにあることからだ。

ここにはアラカルトメニューはなくテーマのあるおまかせメニューのみで、3~4ヶ月ごとに新しいチャプターを開いてゆく。最初のおまかせメニューを彼らは「プロローグ」と題した。自分たちの紹介ということで出身地のブルターニュにインスパイアされたメニューだ。そして、7月15日にいよいよ第1章のメニューが登場。これは、日本では9月に公開されるクリストファー・ノーラン監督の映画『The Odyssey(オデュッセイア)』がフランスで封切られた日でもある。このおまかせメニューは、自分たちの旅たちを主人公オデュッセウスの壮大なる旅に重ね合わせて、L’Odyssée(ローディセ)と命名したという。もっとも、これは1年前に決めたことで映画の影響ではない。二人はギリシャ、イタリア、トルコ、コルシカなど地中海沿岸地方を散歩し、これらの地からのインスピレーションから生まれたメニューである。



目的地はあるものの海図通りに進まず、波が導く寄り道が続く旅。「未知への招待状」と彼らが語るおまかせメニューは、95ユーロのLa traversée(航海)と75ユーロのL’escale(寄港)の2種。料理内容についてはメニューに記載がないどころか、料理がテーブルに運ばれた時もヒントがあるだけ。お皿を下げる時にひとつずつ説明される。素材の組み合わせ、調理法、層をなす味わいや食感……体験した口の中の嬉しい驚きがここで解明されるのだ。8サービスによる「航海」メニューの始まりは、3点同時に食卓に並ぶ。グリークサラダを詰めたブリオッシュ、発酵トマトや桃のエクストラクションをソースにしたトマト料理、それにセロリのヴィンガーが酸味を添えるフェンネルのエクストラクションがグラスに注がれて。これは航海に出る前の地上での最後の祝宴をイメージしている。4サービスめに登場するのは夜の海のように真っ黒な一皿。イカスミのソースと思ってしまうが、これはピーナッツがベースのソースで炭火焼したタコのあしの甘い旨味と上手くマッチしている。官能的な食感を添えるのは、丸くカットされた肉厚のピーマンだ。途中モロッコ風調理法の料理が含まれていたり、カダイフあり。締めくくりとなる8サービスめは、ギリシャの伝統的なお菓子であるオレンジケーキの「ポルトカロピタ」。オデュッセイアが故国の島に戻った気分を味わって航海が終わる。






ドゥブル・アンパクトでは器もユニークだ。3~4ヶ月ごとに変わるメニューなので、どんな料理にも対応できるようにと、ひっくり返して使っても美しい器がパリの陶芸家によって造られた。これもダブル・インパクト!? 味覚の感動を呼び起こすシェフの創造性。次にはどんなおまかせメニューを生み出すのか。いまから楽しみである。
住所:
57, rue Claude Rodier 75009 Paris
営:
19:00〜21:30(L.O.)
休:
日、月