『グランド・ブダペスト・ホテル』『シェイプ・オブ・ウォーター』の音楽を手がけた作曲家、アレクサンドル・デスプラの世界。

Culture

アレクサンドル・デスプラ/作曲家

Alexandre Desplat/アレクサンドル・デスプラ
作曲家
1961年生まれ、パリ出身。『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年)でのアカデミー賞作曲賞受賞をはじめ、『英国王のスピーチ』(10年)、『GODZILLAゴジラ』(14年)『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19年)など幅広く活躍。

映画音楽に、新たな命を吹き込む歓びを。

『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年、ウェス・アンダーソン監督)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年、ギレルモ・デル・トロ監督)などの映画音楽で知られる作曲家アレクサンドル・デスプラ。パリ生まれの彼がハリウッドでの歩みを辿るアルバム『Paris-Hollywood』を携え、12月に来日公演を開催する。

「10代の頃から、音楽に次いで情熱を注いでいた映画のために音楽を書くことを夢見ていました。そして映画音楽の世界に進むなかで、映画音楽だけを聴くうちに、それが物語を語る重要な要素だと実感するようになりました。ですので、コンサートでは映像がない分、オーケストラそのものが主役として輝くことができる、という映画館とはまったく異なる体験ができます。また、私自身にとっても大勢の観客の前で演奏することで、コンサートならではの高揚感とともに、自分の音楽に新たな命を吹き込める歓びがあるのです」

彼は映画音楽を書く際、常に自らに問いかけることがある。「この映画にまだ存在していないものとして、自分は何を加えられるだろうか。作品の鼓動ともいえる核心はどこにあるのか。登場人物たちの歩みに寄り添いながら感情をさらに豊かに広げていく〝見えない流れ”を、音楽でどう生み出せるのか。その映画にふさわしい〝音の世界”とは何か、どんな楽器編成が最適なのか……そうしたことを常に考えています」

20年に川端康成の詩情を音楽で表現し、演出家・音楽家でもあるソルレイが共同脚色・演出を手がけたオペラ『En Silence』を公演したほど、親日家としても知られている。「洗練された美意識と、極限まで削ぎ落とされたシンプルさが共存し、その中から美しさを生み出しているところに強く惹かれています」と話し、歌舞伎や日本映画、武満徹、坂本龍一の音楽などから影響を受けてきたことをはじめ、毎朝、一保堂の煎茶を飲むことが日課だという。スタジオには北斎や広重、歌麿の浮世絵をはじめ、象彦の漆器や琵琶、着物など、日本の品々が並んでいる。

そのデスプラが今回楽しみにしているのは、長年尊敬してきた久石譲との共演だ。久石の娘・麻衣が『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(11年、デイビッド・イェーツ監督)でデスプラの楽曲を歌った縁で交流が生まれ、遂に共演が実現した。また、ギレルモ・デル・トロ監督の『フランケンシュタイン』(25年)の組曲を世界で初めて演奏するという。

「まず、素晴らしい演奏家たちだと聞いているパシフィックフィルハーモニア東京の皆さんとお会いできること、そして世界でも最高の聴衆だと思っている日本の観客に自分の音楽を届けられることを心から楽しみにしています。皆さんに楽しんでいただけますように! 12月にお会いしましょう」

アレクサンドル・デスプラ指揮、パシフィックフィルハーモニア東京演奏、スペシャルゲストに久石譲を迎え、『“From Paris to Hollywood”/ Cinematic Scores of Alexandre Desplat』が東京では12月7日サントリーホールにて、大阪では12月9日ザ・シンフォニーホールで開催される。

https://aegx.jp/schedule/12/2026/2324/

  • text: Natsumi Itoh
  • collaboration : AD appears courtesy of HarrisonParrott Group

*「フィガロジャポン」2026年10月号より抜粋