ハリー王子夫妻だけじゃない。「名前」だけでは通用しなかった、ハリウッドの非情な現実。

ハリー王子夫妻だけがハリウッドで苦い経験をしたわけではない。世界で最も影響力のある人物たちに対してさえ容赦のない、非情な業界だ。
彼らは、自分たちの「名前」だけでハリウッドを制覇できると思っていた。ところが最終的には、夢を打ち砕き、自尊心にも傷をつける高い壁に突き当たることになった。6年前、ハリー王子とメーガン夫人は、英国王室からの離脱を、どこか得意げな様子で演出していた。向かった先は、彼らにとって新たな「約束の地」となるはずだったカリフォルニア。何でも可能になる場所であり、もはや誰も、つまりウィンザー家の誰も、彼らの行く手を阻むことはできないはずだった。彼らはロンドンのどんよりとした空気を後にし、誇りと自信に満ちてアメリカ征服へと乗り出し、ハリウッドで自らの「アメリカンドリーム」を実現しようとしていた。メーガン夫人は、2018年にハリー王子との結婚を数カ月後に控え、ドラマ「SUITS/スーツ」に別れを告げたときから、何も変わっていないかのように、ハリウッドで両手を広げて歓迎されることさえ期待していた。
Netflixとは、ドキュメンタリーやシリーズ作品、映画を制作するための1億ドルの契約を結び、Spotifyとはポッドキャスト番組の制作のために2000万ドルの契約を締結した。彼らが到着した当初、空は確かに青く、雲ひとつないように見えた。2022年に公開された自伝的ドキュメンタリー番組「ハリー&メーガン」では、「メグジット」の舞台裏を明かし、わずか1週間で8100万時間以上の視聴を記録した。これは、報道機関や王室制度を標的にした彼らの衝撃的な発言にも負けないほど、大きな反響を呼んだ成功だった。
「メディアにはびこるご都合主義や腐敗を明らかにすることは私の務めです」と、チャールズ国王の息子であるハリー王子はかつて非難した。その後、メーガン夫人も、タブロイド紙からの激しいバッシングから自分たちを守ろうとしなかったウィンザー家を批判。「残念ながら、彼らは何の立場も示してくれないことで、私たちを追い詰めているのです」と語った。こうして王室への批判をひと通りぶつけ、騒動も過ぎ去ると、ハリー王子夫妻はほどなくして、ハリウッドが関心を寄せているのは、結局のところ彼らと王室とのつながりだけなのだと気づくことになった。Spotifyで配信していた夫妻のポッドキャスト番組は、わずか12エピソードで早々に終了。そのほかのNetflix作品「ハート・オブ・インビクタス – 負傷戦士と不屈の魂 -」「世界を導くリーダーたち: 信念は社会を変えた!」「POLO/ポロ」も、いずれも不発に終わった。メーガン夫人が手がけた料理シリーズ「ウィズ・ラブ、メーガン」のシーズン2も同様だった。こうした相次ぐ仕事上の失敗が、夫妻が英国に戻る決断に影響を与えた可能性もある。ただし、現時点ではその理由について公式な説明はなされていない。
彼らより前にも、自分の知名度があれば当然のようにハリウッドへの扉が開かれると、安易に考えた著名人は少なくない。だが結局、ハリウッドは彼らを他の「よそ者」と同じようにはねのけた。
F・スコット・フィッツジェラルド
1937年、世界的な名声をもたらした小説『楽園のこちら側』の刊行から17年後、アメリカの作家F・スコット・フィッツジェラルドは、借金を返済するためにハリウッドで働き始めた。アメリカの映画会社MGMから、脚本執筆の報酬として週1000ドルを受け取っていた。しかし、彼の脚本は文学的すぎると判断され、絶えず書き直しを余儀なくされた。1938年の長編映画『三人の仲間』で脚本家として正式にクレジットされたのは、わずか1作品だけだった。そして2年後、44歳で心臓発作のため亡くなった。その数十年後、自身の作品が映画化されて成功を収める姿を、彼が目にすることはなかった。2013年には、レオナルド・ディカプリオ主演、バズ・ラーマン監督の『華麗なるギャツビー』が公開され、2009年にはブラッド・ピットとケイト・ブランシェットが出演したデヴィッド・フィンチャー監督の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』が3部門でアカデミー賞を受賞している。
セーラ・ファーガソン

1996年にアンドルー王子と離婚した後、セーラ・ファーガソンは、仕事の面で自分を新たに確立しようと試みた。ロンドンとアメリカを何度も行き来しながら、メディアや映画業界で人脈を広げようと奔走。2009年には、グレアム・キングとともに映画『ヴィクトリア女王 世紀の愛』の製作に携わった。作品は好評を博したものの、ハリウッドへの扉を開くまでには至らなかった。「ページ・シックス」の報道によると、セーラ・ファーガソンは最近になって再びハリウッドでの成功を目指し、2021年に発表した小説『Her Heart for a Compass(原題)』の映像化権を売り込むため、さまざまな働きかけを行っていたという。ところが、その矢先、元夫がエプスタイン事件への関与をめぐって逮捕された。結局、こちらも成功には至らなかった。セーラ・ファーガソンとこの金融業者との過去のつながりが、ハリウッド側の関係者を尻込みさせたとみられている。最近、彼女がエプスタインに宛てたメールの中で、彼の「寛大さ」に感謝していたことなどが明らかになったためだ。
ヒラリー・クリントンとチェルシー・クリントン
2017年にホワイトハウスを去り、翌2018年に自らの制作会社「ハイヤー・グラウンド」を設立したバラク・オバマとミシェル・オバマと同じように、ヒラリー・クリントンは2020年、娘のチェルシーとともに独立系制作会社「ヒドゥンライト・ブロダクション」を共同設立した。その目的は、女性たちの勇気や粘り強さをたたえる映画やシリーズ、ドキュメンタリーを制作することだった。2022年9月にApple TVで配信されたドキュメンタリーシリーズ「Gutsy」など、注目度の高い作品にも取り組んだものの、クリントン親子はハリウッドで、この業界に欠かせない存在としての地位を確立するには至らなかった。現在もなお、彼女たちの存在感は限定的なものにとどまっている。
ロビー・ウィリアムズ

英国を代表する音楽界のスター、ロビー・ウィリアムズは、これまでアメリカで本格的に成功を収めることはなかった。2024年末、歌手としての雪辱を果たそうと、ハリウッド進出に挑んだのが『BETTER MAN/ベター・マン』だった。自身の音楽界での成功と、数えきれないほどの破天荒な言動を描いた、野心的な音楽伝記映画だ。推定1億1000万ドルという破格の製作費を投じ、さらに、CG映像によって自身を猿の姿で描くという独創的なコンセプトを取り入れた、洗練された映像表現にもかかわらず、『BETTER MAN/ベター・マン』は大惨敗を喫した。パラマウントが配給を手がけたものの、1291館で公開された初週末の興行収入は、わずか110万ドルにとどまった。
マライア・キャリー

「歌姫の中の歌姫」であり、ホイットニー・ヒューストン、セリーヌ・ディオンと並ぶ「歌声の三大巨頭」のひとりであるマライア・キャリーもまた、ハリウッドで大きな挫折を経験している。2001年、マライアは映画『グリッター きらめきの向こうに』で主演を務めた。きらびやかな世界を舞台に、彼女自身の分身ともいえる架空の若手歌手ビリー・フランクを演じた作品だ。しかし、批評家から酷評され、観客からもそっぽを向かれたこの映画は、推定2200万ドルの製作費に対し、世界興行収入はわずか530万ドルにとどまった。この手痛い失敗にもかかわらず、マライアは8年後、映画『プレシャス』でハリウッドに再び挑戦。今度はその演技が高く評価されたものの、マライアが映画界で本格的なキャリアを築くことはなかった。
From madameFIGARO.fr
※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
- text: Solene Delinger (madame.lefigaro.fr)
- translation: Hanae Yamaguchi