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DIOR

見過ごされてきた素材に光を。ディオール バンブー パビリオンとwe+のものづくり。

Culture

ディオールによる特別ワークショップの第4回が、7月27日の夜、代官山のディオール バンブー パビリオンにて開催された。抽選で選ばれたフィガロジャポン読者などを迎えたこの夜のゲストは、デザインスタジオwe+の林登志也と安藤北斗。ふたりは「見過ごされてきた素材を使ったモノづくり」をテーマに、これまでに手がけてきたプロジェクトを画像やサンプルを交えながら紹介。ディオール バンブー パビリオンのメンズフロアの什器も手がけた彼らが、その制作ストーリーについてじっくりと語った。

we+の林登志也(左)と安藤北斗。2013年にスタジオを設立し、実験的なアプローチを通じて新たな価値観と視点をかたちにしている。

リサーチをベースに、ものづくりに取り組む彼ら。「美的感覚を大切にしながら、社会的な意義や社会との接続を考え制作しています」(安藤)と、まずはwe+の活動について紹介。2013年に安藤北斗と林登志也が設立したこのスタジオは、彼らが気になるテーマをめぐる歴史や環境を調査し、フィールドワークや素材実験を重ねる「アーティスティックリサーチ」という独自の手法で活動を続けてきた。「デザインなのかアートなのかと問われることもありますが、皆さんの既成概念を少し揺さぶるようなものを作っています」(安藤)。

最初に紹介されたのは、ディオール バンブー パビリオンにも導入されている「ソーカラード」プロジェクト。参加者の手元にカラフルなタイルのサンプルが渡され、それを見ながら話を進めていく。「クロレラやイカダモ、聞いたことはありますか? 顕微鏡でないと見えないほどの微細藻類で、その生き物の色そのものを抽出して作ったタイルです。赤・黄・青、どれも生き物が持つ色そのもの。たとえば、この青はスピルリナという種なんですが、ガリガリ君のソーダ味に使われているのと同じ色素です。なかなかおもしろいですよね」(林)と話し、会場に笑いが広がった。

色鮮やかなブルーは、スピルリナ由来。
「ソーカラード」を採用したデイベッドが、ディオール バンブー パビリオン内に配されている。

微細藻類には、ストレス環境で色が変わる性質を持つものも。「もともと緑だった藻が、光や酸素のストレスで真ん中から赤くなり、最終的に真っ赤になる。お手元のサンプルの真ん中が赤いものがあると思いますが、あれも元々は全部緑だった子なんです」(林)。さらにタイルに使う樹脂についても実験を重ねた。「樹脂というとケミカルな印象があるかもしれませんが、油絵の保存に使われる樹脂も木から作られていて、昔から使われてきた天然由来のものがある。いろいろ実験を重ねて、そこにたどり着きました」(安藤)。参加者たちは、それぞれサンプルを手に取り、光にかざしながら色や質感を確かめていた。

会場で、さまざまなカラーのタイルのサンプルを展示。

続いて紹介されたのは、インナーガーデンのベンチやメンズフロアのファニチャーに使われた廃棄発泡スチロールのプロジェクトだ。「発泡スチロールは体積の約98%が空気で、日本ではリサイクル効率が高いと言われています」(林)。通常は熱で溶かして固め、一度海外に輸送し、リサイクルプラスチックの原料となり加工されてから日本に商品として戻ってくる。「それはそれで正しいリサイクルかもしれないけれど、ずいぶん旅をし遠回りしながら最終的に日本に戻ってくるなと思ったんですよね」(林)。そこで、発泡スチロールを溶かす工場に椅子の金型を持ち込み、溶けたものをその場で型に詰め込んで家具を作るという方法にたどり着いた。「東京で出た廃棄物が東京でそのまま家具になる。私たちはこれを『土着の素材』と呼んでいます。東京にあるデザインスタジオとしての私たちの土着の素材って何だろう。それは廃棄物なんじゃないかという考えから生まれたものです」(林)。

ディオール バンブー パビリオンのインナーガーデンで出合えるベンチは、この発泡スチロールの再生素材でつくられている。

3つ目のプロジェクトでは、スライドに半透明のオブジェが映し出され、林が参加者に「これは何だと思いますか」と問いかけた。

photography:Masayuki Hayashi

「ガラス?」という声が上がると、「実は海苔なんです」と林。日本は排他的経済水域の広さが世界第6位で、豊富な海洋資源を誇りながら、海由来の素材は意外と少ない。それもまた、見過ごされてきたものだという。海苔は、色が黒ではなく緑や黄色や紫になってしまうとクオリティが低いとされ、等級が下がるか、買い手がつかずに焼却処分せざるを得ないことがあると知った彼ら。「せっかく作ったのに燃やすしかないというのは、非常にもったいない」(林)。さらにリサーチを続けると、板海苔の起源は、江戸時代に紙すき職人の動きを見て「海苔でもできるんじゃないか」と考えた人によるものという説に出合った。「和紙と海苔ってルーツが一緒なんじゃないかと思ったら、いま和紙で作られている提灯・照明・障子などを、海苔でも作れるのではないかと思ったのが、このプロジェクトの発端です。海苔って表情がとても豊かなんです」(林)。完成した照明作品は、ガラスにも、薄く切った石にも見える。

photography:Takumi Ota

さらに、富山の鋳造会社、平和合金とのコラボレーションから生まれた花瓶のコレクションは、鋳物文化の舞台裏に着目したもの。「工場に行ってみると本当におもしろくて。職人さんたちが当たり前すぎて気づいていないものが、私たちの目にはとても新鮮に映った」(安藤)。大仏や像の砂型のフレームを組む際に使われる溶接痕のついた鉄の棒。そのテクスチャーを3Dスキャンして金属に置き換え、花瓶を制作した。「自分たちですら気づいていない、見落とされてきた美しさや価値や視点というのが、身の回りにはまだたくさんある。私たちはそういうものに目を向けるデザイナーでありたいと思っています」(安藤)。

photography:Nik van der Giesen

そのほかにも、島津製作所とのコラボレーションによる“目に見えないものを可視化するプロジェクト”では、「あいだに在るもの」というテーマで、水とオイルの液体の境目を見せるインスタレーションを。ミラノでは、8×8メートルの空間に1200個のメッシュを吊り下げ、空気の流れを体感させるインスタレーションも発表した。「普段見えないものを可視化したらどうなるか。そういう想像から作っています」(安藤)。

トーク終了後、参加者たちはメンズフロアへと案内され、実際に作品に触れながら、ふたりの話に耳を傾けていた。「ブランドとしてアートや文化に非常に近しく、インプットは革新的なものを取り入れながら、そのアウトプットをスペースや人材を通じて惜しみなく一般に共有している」とは、イベント参加者の感想。

発泡スチロールのリサイクル素材で製作したテーブルに触れながら、参加者と交流。林の前におかれている花器が、平和合金とのコラボレーションから生まれたコレクション「アンシーン オブジェクト」。

次回は、テキスタイル作家の光井花をゲストに迎え、ディオール バンブー パビリオンでワークショップの開催が予定されている。

ディオール バンブー パビリオン
東京都渋谷区猿楽町8-1
営)11:00〜19:00
03-6455-2286

  • photography: Aya Kawachi
  • text: Tomoko Kawakami