Paris City Guide - Hotel

パリ滞在はやっぱりプチホテル。6区に生まれた手頃な価格の「オテル・リュリュ」へ。

2026.09.08

ストライプの庇がチャーミングな建物、一階はコーヒーショップ。

モンパルナス大通り155番地のアドレスを辿ってゆくと、グリーンと白のストライプのキャンバスの日よけが窓を覆い、ガラス張りのコーヒーショップが一階を占める建物がある。9月の第1週にオープンしたHôtel Lulu(オテル・リュリュ)だ。この28室の小さなブティック・ホテルを作り上げたのは、13区でHôtel Henriette(オテル・アンリエット)を成功させたVanessa Scoffier(ヴァネッサ・スコフィエ)。最寄りの地下鉄駅はVavinあるいはNotre Dame des Champs、RER(高速地下鉄)B線ならPort Royal、そして伝説的ブラッスリーのLa Closerie des Lilasもリュクサンブール公園の近くというパリ滞在には便利な立地だ。

暮らすようにホテルライフを楽しめるオテル・リュリュ。photography: 左 Romain Ricard、右 Mariko Omura

目にも心地よいベッドルームとバスルーム

雑誌などでスタイリストとして活躍していたヴァネッサのハイ・センスがこのホテルでも生かされている。Hôtel Henrietteがブロカント物を活用し、50〜70年代のノスタルジックな味わいが魅力のホテルに対し、こちらのホテルではそれにモダニティがプラスされ、イノックスやコンクリートなどの素材も交えていて、どちらかというとミニマル・ブリュタルというスタイル。デザイナーのランプや素材の良さが感じられるファブリック、昔の学校で使われていたというフックなどのディテールに至るまで、内装は目にとても心地よい。寝室やバスルームの鏡やランプはどれもヴィンテージなのでそれぞれ表情が異なり、それも大きな魅力だ。パリ歩きもいいけど、部屋で少しゴロゴロするのも悪くない、という気に……。バスルームも機能的なだけでなく、ピンク、ライトブルー、カーキなど部屋によってタイルの色は異なるけれどチャーミングな空間だ。このホテルに泊まると、インテリアのお手本にしたくなる要素がたくさん見つかりそう!

ベッドカバーやカーテンなど、落ち着いた色のファブリックのクオリティの良さも目に快適。各部屋に設けられた小さなテーブルは古い足場の廃材を利用している。photography: RomainRicard
部屋によっては、壁の照明具がシャルロット・ペリアン、ル・コルビュジエだったり、椅子はジョー・コロンボもあれば農家やアフリカからのも……。photography: RomainRichard.

作り付けの棚やテーブル……ミニマルな中に魅力が漂う。photography RomainRicard

シェル型のランプや古い鏡がチャーミング。花を愛するヴァネッサはホテル内に生花を絶やさない。

右:清潔でチャーミングなバスルーム。タイルの色は部屋によって異なる。 左:アメニティはTypologyを使用。

1920年代のモンパルナスに生きたリュリュ

外から建物を見上げるとHNのイニシャルが鉄さくに残る窓がある。以前はHotel de Nice(オテル・ドゥ・ニース)というホテルだったからだ。それをヴァネッサは一年がかりで改装をした。リュクサンブール公園に近いことから公園の愛称であるリュコとホテルを命名したかったのだけど、同名のバーが界隈に昔から存在するので断念することに。かつてモンパルナスには1920~30年代に流行った高級レスビアン・クラブLe Monocle(ル・モノクル)があり、そのオーナーの愛称がリュリュ。愛らしいこの響きをリュクサンブール公園の新しい愛称に!ということからの命名となった。廊下がパンサーモチーフのカーペットで覆われているのは、モンパルナスにはアール・デコのブラッスリーが残ることにインスパイアされてだ。その時代も含め、このあたりに集まったマン・レイ、ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、ジャン・コクトー、モディリアーニなど芸術家たちの存在を意識して、ヴァネッサが壁をかざるアートピースをセレクションしたという。

左:アール・デコ風にバンサー柄のカーペットを廊下に。 右:ニース出身のヴァネッサは故郷のファミリーのポートレートを集めた、というイメージで最上階の天井周りを装飾。photography: RomainRicard

ヴァネッサによる装飾はミニマルながらモンパルナスの1920〜30年代のアーティスティックな歴史を感じさせる。ジャン・コクトー、アンリ・マティス、アレクサンダー・カルダーなどのデッサンやリトグラフィーはGalerie Maeghtで彼女が見つけたものや、彼女のコレクションからだ。photography: RomainRicard

ガラス屋根に覆われたコーヒーショップはコンクリート、ラッカーといったモダーンなスペース。時代を感じさせる古い扉があるかと思えば、かつてVogue誌に掲載さ れた写真家Manu campionによるニューヨークのStandar Hotelの写真が壁を飾って……と、ヴァネッサのハイセンスが感じられる。宿泊客はこの奥にあるフロントで、パンサーモチーフのペンダント式ホルダーに収められたルームキーを受け取るのだ

なおコーヒーショップは宿泊客以外にも朝食時間から開かれていて、木・金・土の夜にはピアノバーとなる。ホテルにはいずれスポーツ室もできるそうだ。客室のタイプはダブル、ツイン、ドゥリュクス、トリプル。時期にもよるけれど室料は200ユーロ~と左岸6区では貴重な価格では? なお、最近はシャワーオンリーのホテルが多いけれど、オテル・リュリュにはひとつだけバスルーム付きの部屋も。

左:リサイクルレザーのルームキーホールダー。裏に部屋番号が。 右:朝食はコーヒーショップでもルームサービスでも。photography: 左 Mariko Omura、右 RomainRicard

Hôtel Lulu
155, boulevard de Montparnasse
75006 Paris
https://www.hotelluluparis.com/
@hotelluluparis

大村 真理子

madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター

東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。2006年から「フィガロジャポン」パリ支局長を務めた後、フリーエディター活動を再開。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。

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