士気の低下、疲労。これって季節性うつ病? 慢性うつ病?
Beauty 2019.12.11
気温が急降下する頃、顔からは笑顔が消え、感情的な余裕が一気になくなる。これは寒い季節に関連した影響なのか、それとも本当のうつなのだろうか? ふたりの専門家に話を聞いた。
単なる季節的な影響? それとも本当のうつ? photo : Getty Images
初雪が降る前であっても、何だか気分は冴えない。多くの人がアドヴェントカレンダーやクリスマスツリー、ギフトを買いに出かけているのに、自分の主な関心事といえば、朝ベッドから起きて無事にその日を迎えることができるかどうかだ。何も欲しいものはなく、ただ気分が暗くなってしまう。インターネットでその症状を検索すると、季節性うつ病やウィンターブルー、または慢性うつ病と出てくる。
それらは病理学的には似ているものの異なる症状であり、身体への影響も違うので、同じ治癒方法で対処してはいけない。具体的な対処方法を紹介しよう。
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一時的な問題
「フランス国内では5〜10%の人が季節性うつ病で、その大半が女性」
– エリック・チャールズ医師、精神科医
季節性うつ病は、大きなくくりではうつ病の一種である。しかしながら、その名前が意味するように、その症状は1年の中の特定の時期に起こる。リモージュにあるスペシアリーズ・エスキロール総合病院の精神科医、エリック・チャールズ医師は「むしろ、特徴的なうつ病エピソードと考えられています」と述べる。
実際、秋と冬には自然光が減り、生理学的に心身の活力が低下する。「自然光はメラトニンの分泌を助けます。メラトニンは、夕暮れ時に身体が作り出すホルモンで睡眠を促進してくれます」と時間生物学者のクレア・ルコント氏は述べる。この機能がうまくいかない場合、眠りにつくのは難しく、徐々に疲労を蓄積してしまう。その結果、エネルギーと士気に影響する。ほとんどの場合、季節性うつ病の最初の症状は秋に現れ、春の訪れともに自然に消える。
地理上、緯度が高くなればなるほど日照時間は短くなり、症状が起こりやすい。チャールズ医師によると、この有病率はスカンジナビア諸国で約25〜35%、フランスで5〜10%で、その大半が女性である。そして「研究ではアフリカの季節性うつ病は記録されていません」とルコント氏は強調する。いっぽう、慢性うつ病は、体内時計の変化の影響を必ずしも受けない。「通常、慢性うつ病は、脳の一部に影響を与える外的要因、たとえばトラウマや死別などに起因します」とルコント氏は言う。
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ふたつの病気の違いは睡眠と食欲を見ればわかる
睡眠は、慢性うつ病か季節性うつ病かを知るためのよい指標である。「いずれのうつ病も自律神経が乱れてしまいますが、うつ病は不眠症になる傾向があるいっぽう、季節性うつ病になりやすい人は過眠症になり、ベッドで過ごす時間が長くなります」とチャールズ医師は言う。
食事にもそれぞれの傾向が見られる。「メラトニンを生成しようとすると、炭水化物や甘いもの全般を欲するようになります」とチャールズ医師は述べる。したがって、体重増加が見られがちである。 しかし慢性うつ病の患者は何に関しても欲求が減少する傾向が見られ、「もう食べることさえも楽しくない」といった状況になるという。
それぞれに合ったケア
悲しみ、ネガティブ思考、全般的に活動がスローになる……こういった病気の兆候は似ていても、深刻さはそれぞれ異なる。「ウィンターブルーというのは普段よりも気分が落ち込む程度ですが、季節性うつ病は、気分や行動に本格的な悪影響を与えるのです」とルコント氏は言う。さらに、うつ病の場合、抱える悲しみのせいで自殺のリスクを引き起こすこともあるため、無視すべきではない。うつ病が疑わしい場合、まずは診断を行うために専門医(内科医または睡眠の専門医)に相談し、診断を受けることが重要だ。
季節性うつ病が明らかになった場合、高照度光療法を15日〜3週間受ける治療が推奨されている。「その療法では、メラトニンの合成を調節する自然光(10,000ルクス)に非常に近い特殊な電球を用いています」とルコント氏は言う。 「これは、抗うつ薬よりもはるかに有効性が高く、効き目が早いことで知られています」とチャールズ医師は言い加える。ただしその効果は、そのほかのうつ病タイプの人には十分に効果的ではない。「精神科医のサポートを受けたほうがよいでしょう」とチャールズ医師は助言する。非常時には非常手段が求められるのである。
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texte : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi