発酵、グルタチオン、幹細胞。成分から選ぶスキンケアの正解は?
“成分推し”の韓国コスメ、中国では“成分党”なる言葉も生まれ、スキンケアは“成分美容”が話題。成分名だけではなく、その働きや効能を正しく知って肌に合う化粧品を探す近道にしたい。
>>シカ、PDRN、レチノール、ビタミンCなどを解説。【前編】はこちら

PHA/LHA|Polyhydroxy Acid/Lipohydroxy Acid
角質か毛穴か。ピーリング成分は目的で選択。
若い世代を中心に、日常的なピーリングケアが当たり前に。次世代酸と言われるのがこの二大成分。「AHAやBHAより刺激レスでマイルドに効く成分として注目されています。ただ、AHAやBHA自体問題のある成分ではまったくなく、配合量の配分で穏やかに効かせることもでき、“処方の妙”次第で肌に優れた作用を持つ成分なのです」(岡部美代治/ビューティサイエンティスト)。ちなみに、AHA(グリコール酸、乳酸、マンデル酸など)は主に肌表面の角質ケアに、BHA(サリチル酸など)は脂溶性で毛穴内部の皮脂や角栓にアプローチ。PHAはAHAに近い働きで、LHAはサリチル酸の誘導体でBHAの仲間。つまりは、AHA=表面の角質ケア、BHA=毛穴ケア、PHAとLHAはそれぞれのマイルド版。目的と肌状態に応じて賢く選んで。
グルタチオン|Glutathione
くすみや美白に。“白玉点滴”の主成分を肌へ。
“白玉点滴”や“白玉注射”など、美容医療の施術でも人気が高いグルタチオン。グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からなるペプチドの一種だ。美白、二日酔いの解消、デトックス……さまざまな目的でグルタチオン点滴を受けたことがある人も多いのでは? 「グルタチオンは皮膚や肝臓など人間の体内に存在する抗酸化物質。点滴で取り入れれば、シミ予防、肝機能改善などの効果が期待できます。化粧品への安定配合は比較的難しい成分と言われますが、うまく配合するとメラニンの合成抑制や炎症抑制など、さまざまな悩みに効果を発揮してくれます。透明感ケアやくすみ対策として取り入れるといいでしょう」(岡部)
アゼライン酸|Azelaic Acid
ニキビ治療における世界的スタンダード。
ニキビを予防する成分として、日本の化粧品にも配合が広がっているアゼライン酸。「アメリカを筆頭に欧米諸国では、医薬品として臨床で広く使用されているニキビや酒さの治療成分です。日本では医薬品として承認されておらず、主に化粧品成分として用いられています。安定配合が難しく、小麦や大麦など穀物由来の古くからある天然成分ですが、その作用メカニズムは非常に多岐にわたり、すべてが解明されているわけではありません」(岡部)。ニキビだけでなく、毛穴の詰まりや色素沈着、肌の赤みの改善にも有効。効果実感も高いが、ピリピリとした刺激を感じることもあるので、肌と相談しながら取り入れて。
幹細胞/エクソソーム|Stem Cell/Exosomes
“ヒト幹細胞”は本気のアンチエイジング派に。
幹細胞&エクソソーム系コスメは、実態を正しく理解することが肝心! 「ヒト幹細胞培養上清液(脂肪や臍帯由来など)」と「植物幹細胞由来成分」に大別され、ふたつはまったくの別物。「ヒト幹細胞培養上清液には、EGFなどの成長因子、サイトカイン、ペプチドなどのほか、近年注目のエクソソームも含まれます。エクソソームは細胞間の情報伝達を担うマイクロRNAを内包する物質。肌の再生や活性化に寄与し、今後ますます注目の成分。ヒト由来である以上、品質や製造管理がとりわけ重要で、信頼できるブランドを見極める必要があります」(岡部)。植物幹細胞コスメは、幹細胞を培養して得られるエキスを指すことが一般的。抗酸化や保湿作用はあるが、ヒト幹細胞培養上清液とは本質的に異なる。
ペプチド|Peptide
多種あるペプチドは、配合目的を見極めて。
「これに効く」と一概には言えないのがペプチド。ペプチドは、結合するアミノ酸の種類や配列によって異なる機能を持つ成分。コラーゲン生成を促すシグナルペプチド、表情ジワに働きかける神経伝達抑制型ペプチド、修復を助けるキャリアペプチド……など。「美肌にいいペプチドは40数種類ともそれ以上とも言われており、各社が目的に応じて使い分けています。ペプチドは、体内で細胞がコミュニケーションをとる際に信号の役割を果たします。かつて“塗るボトックス”として流行したアルジルリンもペプチドですが、筋肉の収縮を促す信号をブロックすることで、表情ジワを軽減するとされました。ペプチドは種類が多いので、配合の目的を見てから選ぶようにしてください」(岡部)
ヒアルロン酸|Hyaluronic Acid
古くて、新しい。保湿に欠かせない成分。
ビタミンCと並んで最も知名度の高い美容成分、ヒアルロン酸。「水分を抱え込む高い保水力を持ち、肌の潤いを保つ成分です。分子量の異なるヒアルロン酸を組み合わせたり、美白や皮脂抑制などの機能を加えたヒアルロン酸誘導体が開発されるなど、単なる保湿にとどまらない多角的なアプローチでいまも進化しています」(岡部)。ヒアルロン酸は目や関節、心臓、血管など全身の組織に広く分布するが、その約50%が皮膚に存在し、20代前半をピークに40代後半からは生成能力が低下。もともと体内に存在するヒアルロン酸をフィラーとして注入する美容医療も、安全性の高さから広く普及している。
コラーゲン|Collagen
塗るだけでは増えない! 仕組みを知って。
「コラーゲン配合化粧品は、塗布してももちろん真皮のコラーゲンに変わるわけではありませんが、肌表面の水分保持には寄与します。コラーゲンの経口摂取は、血液中にペプチドとなって吸収されることがわかっており、骨や関節の健康維持、創傷治癒、肌の弾力向上などが期待できます」(岡部)。1980年代から肌のエイジングとコラーゲンについて研究を行ってきた資生堂は、“量”だけでなく“質”の重要性に着眼するとともに、繊維を太く強く保つ“育成”という新たな概念も近年提唱。いわゆる“コラーゲンコスメ”の役割は、真皮内のコラーゲン産生を促進すること。良質なコラーゲンを増やして、量を維持する処方設計を行っている。
セラミド|Ceramide
肌のバリア機能を握る、セラミドの真価。
「セラミドの構造が崩れていたら、どんな高価な成分を塗っても届かない」と言われるほど、角層にとって大切な成分。角層で細胞同士の隙間を満たし、水分保持力の高いラメラ構造をつくる細胞間脂質の約50%を占める主要成分だ。「セラミドは“塗る”と“飲む”、どちらの方法でも、肌の保湿やバリア機能向上に期待ができる成分です。特に、化粧品成分としては紛れもなく重要な成分のひとつで、クリームや乳液の基剤としても肌をしっとり潤し、高いバリア修復効果を発揮してくれます。勇心酒造が開発した、外から与えるだけでなく、肌そのものがセラミドを生み出す力をサポートするライスパワーNo.11の薬用成分にも注目しています」(岡部)
発酵エキス|Ferment Extract
伝統の職人技、夢が広がる日本の叡智。
日本が誇る発酵技術は、現代女性の美をサポートするサステイナブルで頼もしい存在。酵母や麹、乳酸菌などの微生物の働きによって、植物などの原料が分解・変換される過程で生まれるのが発酵成分だ。「発酵の妙によって、アミノ酸やビタミン、ペプチドなど、数百種類にも及ぶ有用成分が生成されます。単一成分では得られない、多面的な効果を発揮するのが魅力です。SK-IIのピテラ™がその先駆け的存在でしょう。『酒蔵で働く杜氏の手が非常に美しいことに着目して研究が始まった』というストーリー性とともに、広く人気を得た成分です」(岡部)。発酵技術で成分のポテンシャルを引き出す――無限大の可能性がある領域だ。
岡部美代治|Miyoji Okabe
ビューティサイエンティスト。コーセーの研究所、アルビオンで商品開発などを経て、2008年に独立。科学的観点からスキンケアについてわかりやすく解説。処方や成分の事情通。
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- editing: Naho Sasaki