想像力を掻き立てられる、ロサンゼルスやニュージーランド発の注目アルバム。
音楽ジャンルや手法、フォーマットに縛られることのない、自由で伸びやかなアルバム3作品をピックアップして紹介。
ボーダレスな感性で、未知なる音楽を構築。
『オブ・アース&ワイヤーズ』
デュア・サレー

砂漠を吹き抜ける一陣の風のような寂寥感と、異世界に迷い込んだかのような幽玄的なエキゾティシズム。北アフリカのスーダンにルーツを持つロサンゼルス在住のアーティストによる2作目は、一筋縄ではいかない不思議な作品だ。ロック、R&B、エレクトロ、ヒップホップなどさまざまな音楽ジャンルがごっそりとひとつの箱に詰め込まれたような感覚があり、その中で歌声が鳴っているような印象を受ける。ボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンが要所でゲスト参加しているのも、本作が生み出す浮遊感の秘密。
各メディアが絶賛する、文学的な歌の世界。
『トレイン・オン・ジ・アイランド』
オルダス・ハーディング

曲調によって七変化する歌声と、シアトリカルな表現力。加えて、誰もが評価するソングライティング能力。ニュージーランドから現れた天才的なシンガーソングライターの5作目は、これまで以上に豊潤なアルバムと言っていいだろう。ペダルスチールやオルガンなどの音色を効果的に配したシンプルでフォーキーなバンドサウンドだからこそ、不気味なくらいに生々しいボーカルがダイレクトに伝わってくる。生と死の暗喩をはらんだ独特の歌詞も含めて、熱狂的なファンを虜にするのも納得の存在感だ。
静謐と熱気が交差する、スピリチュアルジャズ。
『ホエア・ライト・セトルズ』
ジャスミン・マイラ

音と音が繊細に重なり合い、ひとつの風景を浮かび上がらせる。まるで映画のサウンドトラックかと思うような映像的なアンサンブルを聞かせるのは、英国のジャズシーンで注目を集めるサックス奏者。いわゆるジャズのフォーマットに縛られることなく、フルートやクラリネットなどの木管楽器、ビブラフォン、ハー
プ、ストリングスなどが織り成す音像の上で、伸びやかな演奏を披露。淡々としているようだが、時折エモーショナルでドラマティックな表情を見せ、ふくよかなサックスの音色に魅了される。
- text: Hitoshi Kurimoto
*「フィガロジャポン」2026年7月号より抜粋