暑い時こそ!イタリアの知恵と歴史が詰まった「夏バテしない」ワインと料理のペアリング5選。

FIGARO Wine Club

日々の生活を彩るワインを自分らしく楽しむフィガロワインクラブ。イタリア人ライター/エッセイストのマッシが、イタリア人とワインや食事の切っても切り離せない関係性について教えてくれる連載「マッシのアモーレ♡イタリアワイン」。今回は暑い中でも食の楽しみを忘れないイタリア人の「夏のペアリング5選」を大公開! 夏バテを吹き飛ばす、新しいメニューが見つかるかも?


日本の夏は湿気が多くて厳しいが、イタリアの夏もなかなかのものだ。僕の故郷であるピエモンテ州では日本ほどの湿気はないものの、気温が35℃前後まで上がることもしばしば。しかし、イタリア人はどんなに暑くても「食欲がないから素麺で済ませよう」とはならない。むしろ、うだるような暑さの時こそ、知恵と歴史が詰まった最高のプリモ・ピアット(最初のひと皿)を用意し、それに完璧に寄り添うワインを開けて、過酷な季節を大いに楽しんでいる。

今回は、イタリアの夏の食卓を彩る5つの定番料理と、それらを引き立てる赤・白・ロゼワインのマリアージュの秘密を読者のみなさんに紹介しよう。日本とはひと味違うイタリアの夏の食文化に浸りながら、至福の組み合わせを体験してみてほしい。

夏の風物詩「米のサラダ」 × フルーティな辛口白ワイン

イタリアの夏に欠かせない大定番が「インサラータ・ディ・リーゾ(米のサラダ)」だ。日本人にとって「冷やしたお米にオリーブオイルや具材を混ぜてサラダにする」という感覚は、少し奇妙に映るかもしれない。しかし、これこそがイタリアの夏の最強の時短・冷製メニューなのだ。

トマト、黒オリーブ、トウモロコシなどの野菜を和えるだけのシンプルなバージョンには、ペコリーノのようなしっかりとした酸味と、トロピカルな香りの要素をもつ辛口の白ワインがよく合う。

サルデーニャのヴェルメンティーノはどこか塩気を感じる、海の風味も漂う白ワイン。

特に、野菜ベースに加えツナもプラスするなら、サルデーニャの辛口ワインである「ヴェルメンティーノ」がベストだ。そのフローラルな香りとアーモンドのような余韻が、ツナの旨味を極上に引き立ててくれる。

バジルの魔法「ジェノベーゼ」 × 魅惑のヴェルメンティーノ

夏が来ると、イタリアの家庭からはトントンと大理石の乳鉢を叩く音が聞こえてくる。新鮮なバジルをたっぷり使った「パスタ・アル・ペスト(ジェノベーゼ)」の登場だ。

ジェノヴェーゼのニョッキにリグーリア州のヴェルメンティーノを合わせて。

バジルがもつハーブ特有の清涼感と、ほのかなバルサミコのような香りは、一見ワインを合わせるのが難しそうに思える。しかし、ここに地中海の潮風を感じさせる白ワインの「ヴェルメンティーノ・リーグレ」を合わせると、魔法のようなマリアージュが生まれる。ワインのもつ豊かな柑橘系の果実味とちょうど良い塩味が、バジルの青々とした風味を包み込み、口の中を一瞬にしてイタリアの美しい海岸線へと変えてしまう。

潮風を運ぶ「海の幸のスパゲッティ」 × 万能ロゼ & 軽快な白

「スパゲッティ・アッロ・スコーリオ(海の幸のスパゲッティ)」は、ムール貝やアサリ、エビなどの出汁がこれでもかと絡みつく、抗えない魅力を持ったパスタだ。ひと口食べれば、そこはもうヴァカンスの海となる。

出汁に馴染みのある日本人にはたまらない!

この濃厚な海の恵みには、イタリア北東部の「ピノ・グリージョ」がよく合うだろう。ジャスミンや柑橘類の香りが、魚介の生臭さを綺麗に消し去り、上品な味わいに仕立ててくれる。
また、あえて軽めに、メルロなどをベースにしたロゼワインを合わせるのもイタリア流だ。すっきりとした爽快なひと口が、まるで青い海に飛び込んだかのようなリフレッシュ感を与えてくれる。

北イタリアの知恵「サフランのリゾット」 × 極上のスパークリング

夏にサフラン?しかもリゾット?と思う人もいるかもしれない。なぜなら、スパイスとして食べるサフランの収穫時期は10〜11月の秋がメインだからだ。夏はサフランの球根は休眠期になるが、実は北イタリアでは、サフランリゾットの鮮やかな黄色と独特のほろ苦いエキゾチックな香りが、夏の食欲を刺激するメニューとして愛されている。

サフランリゾットの上にタコを添えて。

この濃厚かつスパイシーで、ほんのりビターなサフランの風味を綺麗にまとめ上げるのが、「スプマンテ(スパークリングワイン)」の細やかな泡だ。泡と酸味がリゾットのコクを心地よく洗い流し、次のひと口を新鮮に楽しませてくれる。夏の夜、キリッと冷やした泡と黄金色のパスタのコントラストは、大人の夜を最高にロマンチックに演出する。

シチリアの情熱「パスタ・アッラ・ノルマ」 × 太陽の赤ワイン

最後を飾るのが、シチリアを代表する「パスタ・アッラ・ノルマ」だ。夏に旬を迎えるジューシーなナスを贅沢に揚げ、トマトソース、そして塩気のあるリコッタをこれでもかと削りかける、まさに夏の旨味の塊である。

ネロ・ダーヴォラはワインの造り方によってさまざまな表情を見せる品種。ダークチェリーやブラックベリーなど、少し濃い赤い果実の香り。

「暑いから赤ワインはパス」というのは非常にもったいない。このリッチな揚げナスとトマトの酸味には、シチリアの最高峰の赤ワイン「ネロ・ダーヴォラ」が完璧にマッチする。しっかりとした果実味とアルコール感が、ナスの油分をまろやかに包み込み、シチリアの大地と太陽のエネルギーをそのまま体内に届けてくれる。

イタリア人が夏のワイン選びで最も大切にしているのは「軽やかさ」と「フレッシュさ」、そして「豊かなアロマ」だ。重すぎるワインは体に負担をかけ、せっかくの夏の経験を台無しにしてしまう。暑い季節だからこそ、冷やした白や少し温度を下げた軽やかな赤ワインを、それぞれの料理の個性にぶつける。日本とは異なるお米の食べ方や、夏にあえて楽しむ揚げ物と赤ワインの組み合わせなど、イタリアの食文化には、日本の夏を何倍も楽しくするヒントが隠されているのだ。

今年の夏は、イタリア流のプリモとワインで、陽気に乾杯してみてはいかがだろうか。

マッシ

フードエッセイスト

Massimiliano Sgai
1983年、イタリア・ピエモンテ生まれ。トリノ大学大学院文学部日本語学科修士課程修了。2007年に日本へ渡り、現在は石川県金沢市に暮らす。著書に『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(2022年、KADOKAWA 刊)