【あの人が10回観た映画】令和ロマン、髙比良くるまがリピートした5作品を語る。

Culture

2026年5月、初監督・脚本を務めた短編映画『BREAK SHOT』を発表した、髙比良くるま。「僕はクリエイターではない」と話しながらも創作の手を緩めることはない彼に、何度も繰り返し観るほど自身に影響を与えた映像作品とは?と質問をぶつけてみた。好きな映画を語ることは、時に頭の中を覗きみせることでもある。―――そんな中、独自の視点で選んだ5作品とは?


『人生スイッチ』(2014年)

【STORY】スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが製作を務めた、6編からなるブラックコメディ・オムニバス。人生で決して押してはならない“スイッチ”を押した人々が、怒りや復讐、欲望の果てに思いも寄らぬ運命へと突き進む姿を、ユーモアとスリルたっぷりに描く。第87回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作。photography: Collection Christophel/aflo

『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)

【STORY】アダム・サンドラー主演、『グッド・タイム』のジョシュ&ベニー・サフディ兄弟監督によるクライムドラマ。ギャンブル中毒で借金を抱える宝石商が、一獲千金を狙って希少なブラックオパールを手にするが、次々と危険な賭けを重ね、破滅へと突き進む姿を息もつかせぬスリルと圧倒的な疾走感で描き切る。

「『BREAK SHOT』を作る時に参考にした作品のひとつが、『人生スイッチ』です。短編集の映画で、プロデューサーに「これ面白いよ」と勧められて観たら、コメディとしてくだらなすぎて面白かった(笑)。いちばん好きな映画と言ってもいいくらい。僕、「高速犯罪映画」って勝手に呼んでいるんですけど、犯罪がものすごいスピードで連鎖していく映画が好きなんです。

『勝手にしやがれ』もそのタイプの映画として、爆笑しながら家で観てたんですけど、昔の映画は人を刺したり撃ったり、犯罪が起こるスピードが早い。「もう次の犯罪に行くの!?」って(笑)。じっくり積み上げるというより、とにかくどんどん進んでいって「なんでそうなっちゃうんだよ!」と。そのテンポが好きで。

『人生スイッチ』も冒頭から「こうして、こうして、こうして……」って、モールス信号みたいにトントントンってテンポよく進んでいって、しかも短編集だから、あの感じを絶対に『BREAK SHOT』にも入れようと思って。編集の時もそのテンポをめちゃくちゃ意識しました。

高速犯罪で言えば、ちょっと違う角度ですが『アンカット・ダイヤモンド』も好き。ジョシュ・サフディ監督の『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』がすごく良くて、同じ監督作品を追って観たのですが、宝石商が嘘を重ねながら、その場その場を何とか切り抜けようとする話で、やっぱりテンポがめちゃくちゃよかった。面白くて何度も見てます」

『人生スイッチ』
●監督/ダミアン・ジフロン
●出演/リカルド・ダリン、リタ・コルテセほか
●122分、アルゼンチン・スペイン合作

『アンカット・ダイヤモンド』
●監督:ジョシュ&ベニー・サフディ
●出演:アダム・サンドラー、ラキース・スタンフィールド
●130分、アメリカ
Netflix映画『アンカット・ダイヤモンド』独占配信中

『ビートルジュース』(1988年)

【STORY】自動車事故で命を落とし幽霊となった若い夫婦アダムとバーバラは、新たに家へ越してきた一家を追い出そうと奮闘するがうまくいかず、人間怖がらせ屋のビートルジュースを呼び出したことで大騒動に。ティム・バートン監督が独創的な映像美とブラックユーモアで描き、大ヒットを記録したホラーコメディの傑作。photography: Photononstop/aflo

『ビートルジュース ビートルジュース』(2024年)

【STORY】前作から35年後の世界を舞台に描く、『ビートルジュース』の続編。かつて幽霊たちと奇妙な交流を繰り広げたリディアは母となり、ハロウィンの夜に死後の世界へ囚われた娘を救うため、再びビートルジュースの力を借りることに。ティム・バートン監督ならではのブラックユーモアが満載のホラーコメディ。photography: Everett Collection/aflo

「シンプルに好きな作品で言ったら、『ビートルジュース』。大好きな作品で、続編の『ビートルジュース ビートルジュース』も観たら、こっちも良かった。あの空気感が明るくていいじゃないですか。その明るさがフリになって暗い展開が待っているわけでもない。ティム・バートンが描きたい世界を、何も曲げずに貫いている感じがいいんですよね。僕はいろんな要素のものが好きなんですけど、多分ティム・バートンもそうだと思うんです。自分のやりたい世界を土台にして、その上に全部を積み上げていて、自分を薄めていない感じがある。それが面白いですね。『ビートルジュース ビートルジュース』は、『ビートルジュース』から35年も経っているのに、その質を落としていないところも素晴らしい。深刻すぎず、あの”ちょうどよさ”が好みなんです」

『ビートルジュース』
●監督/ティム・バートン
●出演/アレック・ボールドウィン、ウィノナ・ライダーほか
●92分、アメリカ

『ビートルジュース ビートルジュース』
●監督/ティム・バートン
●出演/マイケル・キートン、ウィノナ・ライダーほか
●105分、アメリカ

『ビッグ・リボウスキ』(1998年)

【STORY】ジョエル&イーサン・コーエン兄弟が監督・脚本を手がけたコメディ。同姓同名の富豪と間違えられた中年男デュードは、誘拐事件の身代金受け渡し役を引き受けたことから、次々と騒動に巻き込まれていく。独特のユーモアとクセ者ぞろいの登場人物が織りなすカルト的人気作。photography: Everett Collection/aflo

「僕はこの作品はコメディ映画じゃなくて、“お笑い”映画だと思っているんです。コメディは、ジョークとして設計された笑い。例えば、くるまっていう名前だから「アクセル全開ですね」とか、「今日はブレーキかかっちゃいましたね」とか、そういうのがコメディ。英語には「お笑い」に当たる言葉や概念がないから、日本なら「お笑い映画」と言いたくなるような作品でも、「不条理アクション」とか「不条理サスペンス」と呼ばれたりする。『マッドマックス』なんて、僕にしてみればめちゃくちゃお笑い映画ですよ(笑)。ジョークを言っていのともまた違って、全部がふざけすぎていて、そこがいい。

お笑いだと、ツッコミが入らないと成立しないようなボケがある。『ビッグ・リボウスキ』も、そういう漫才みたいなボケを映画でやっている作品として観ています。しかも誰もツッコまないまま物語だけが進んでいく。そのズレが、この映画ならではのおかしさだと思います」

『ビッグ・リボウスキ』
●監督/ジョエル・コーエン
●出演/ジェフ・ブリッジス、ジョン・グッドマン、ジュリアン・ムーア
●117分、アメリカ

Kuruma Takahira
1994年生まれ。2018年に松井ケムリと「令和ロマン」を結成。『M-1グランプリ 2023』『M-1グランプリ 2024』、第45回ABCお笑いグランプリ王者。映像制作会社「KURUMADE」を立ち上げ、初監督映画『BREAK SHOT』を発表し、シンガポールの映画祭で3冠を達成。個人ではポッドキャスト番組『サンゼロゼロサン』のMC、『漫才過剰考察』の執筆など、活動は多岐にわたる。