【あの人が10回観た映画】俳優、西島秀俊がリピートした作品3選。

Culture

映画界屈指のシネフィル(映画狂)として知られる西島秀俊に、「何度も繰り返し観るほどにハマった映画は?」をインタビュー。好きな映画を語ることは、時として趣味嗜好や頭の中が浮き彫りなることもある。そんな、心のうちが垣間見える3作品を語る。


『ミニー&モスコウィッツ』(1971年)

【STORY】アメリカンインディーズ映画の巨匠、ジョン・カサヴェテスが、妻のジーナ・ローランズを主演に迎え作製したラブコメディ。レストランの配車係として働く青年・モスコウィッツが聡明な美女ミニーと出会ってから、4日間で結婚するまでをユーモアを交えて描く。カサヴェテスの“結婚三部作”と呼ばれる作品のひとつで、男女の関係を通して、結婚の意味に切り込む。photography: Collection Christophel/aflo

「ジョン・カサヴェテスは、僕がとても影響を受けた監督でこの作品も僕にとって欠かせないものです。どの作品も素晴らしいですが、中でも『ミニー&モスコウィッツ』は恋をするストーリーなので、幸せを感じることができる一作です。観終わった時の多幸感が溢れてくるような感じが忘れられず10回以上は観返していると思います。初めて観たのは2000年だったでしょうか。ビターズ・エンドさんの『カサヴェテス2000』という特集上映があり、劇場で観終わってから、感動して渋谷を自転車で走り回った記憶があります。

作中に、髭を切るシーンがあるのですが、これが本当に素敵なのでぜひ観てほしいです。ラストシーンは、実際のカサヴェテスとジーナ・ローランズの結婚式でのエピソードがベースだそうで(※監督のジョン・カサヴェテス自身が妻ジーナに抱いた強烈な一目惚れの体験や、ふたりの実際の結婚式での実体験がベースになっている)ここもとても印象に残っています。あまり語るとネタバレになってしまうので……、カサヴェテスの作品は、僕は勇気をもらいたいときに観返しています」

『ミニー&モスコウィッツ』
●監督/ジョン・カサヴェテス
●出演/ジーナ・ローランズ、シーモア・カッセルほか
●115分、アメリカ

『ディア・ハンター』(1978年)

【STORY】マイケル・チミノがメガホンをとり、第51回アカデミー賞で作品賞、監督賞、助演男優賞など5部門に輝いた名作戦争映画。60年代末、マイケル、ニック、スティーブンらはペンシルバニアの製鋼所で働く仲間。やがて彼らは徴兵され、ベトナムへ。戦場で再会するが、捕虜となり、残酷な拷問ゲームを強要される……。ベトナム戦争がもたらした狂気をリアルに描き出す。photography: aflo

「マイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』が日本で劇場公開されたのは1979年で、僕が8歳くらいのとき。最初に観たのはもしかしたらVHSでだったかもしれないです。それ以来、何度も観返していますが毎回「どうやってこの映画を撮ったのだろう?」と思わされます。マイケル・チミノ監督は、『ディア・ハンター』の後に『天国の門』という作品を作り、映画会社一社を傾かせてしまう一因になったという説もありますが(※莫大な制作費に対して興行的に振るわず、ユナイテッド・アーティスツ社が経営危機に陥った)、どちらの映画も、とにかく「すごい」のひと言というか、何度観ても驚きがある作品です」

『ディア・ハンター』
●監督/マイケル・チミノ
●出演/ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケンほか
●183分、アメリカ

『ゴッドファーザー PART II』(1974年)

【STORY】「ゴッドファーザー」シリーズの前作でコルレオーネ・ファミリーの首領となったマイケルの苦悩の日々と偉大な父・ビトーの若き日を交錯させながら描くストーリー。第47回アカデミー賞で作品賞など6部門を受賞。若き日のビトーを演じたロバート・デ・ニーロが助演男優賞に輝いた。photography: Album/aflo

「まず、『ゴッドファーザー』を観て、ヴィトー・コルレオーネを演じたマーロン・ブランドの存在感が素晴らしく、魅了されました。その若い頃を、一体誰がどう演じるのだろうと思いながら『ゴッドファーザー PART IIを観たのですが、本当に驚きました。何度観てもロバート・デ・ニーロの演技には驚かされます。素晴らしい作品や演技を観ると、俳優として何かを吸収しようといったことを考えたりもせず、ひとりの観客としてその作品に没頭し、感動します。

世の中には、『観たことで人生が変わるような映画』というものがあると思っています。そういう映画を観ることが、自分にとってはいちばん好きなことであり、そんな映画体験を今後もしたいと思っています」

『ゴッドファーザー PART II』
●監督/フランシス・フォード・コッポラ
●出演/アル・パチーノ、アルバート・デュバル、ロバート・デ・ニーロほか
●202分、アメリカ

Hidetoshi Nishijima
1971年生まれ。大学在学中より俳優活動を始め、1992年に本格デビュー。『ニンゲン合格』(99)、『Dolls(ドールズ)』(02)、『CUT』(11)ほか、多数の作品で主演を務める。2021年の『ドライブ・マイ・カー』でアジア人初の全米映画批評家協会賞主演男優賞に輝く。近作には『スオミの話をしよう』(24)、『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』(25)、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『Her Private Hell(原題)』など。『時には懺悔を』(2026年8月28日より全国公開)、『存在のすべてを』(2027年2月5日公開予定)が控える。