3監督と原作者が語る、映画『ゾッキ』ができるまで。
竹中直人が直感で決めた、『ゾッキ』監督と音楽のこと。
インタビュー
公開前からすでにさまざまな方面で話題となっている映画『ゾッキ』。前代未聞の本作を手がけた竹中直人、山田孝之、齊藤工の3監督、そして彼らを魅了した原作の生みの親である大橋裕之が、それぞれの観点から『ゾッキ』製作の裏側を語る。本作の映画化を発案した張本人である竹中直人の原作との出合い、そして大好きな映画音楽への思いとは。
直感的に山田孝之と齊藤工が思い浮かんだ。
2018年の5月、日比谷のシアタークリエにて倉持裕さん作・演出の舞台公演の真っ只中、共演者である前野朋哉くんの楽屋の冷蔵庫の上に『ゾッキA』『ゾッキB』が置いてあったんです。「え? 何これ?! ちょっと貸して!」と前野から借りて自分の楽屋で読みました……。ページをめくるたび、どんどん世界に引き込まれてゆきました。切なくて、悲しくて、暴力的で、お茶目でたまらないモノを感じました。
絵のタッチは柔らかいですがとても深い。繊細で、それでいてクール。いろんなものが詰め込まれていて、つげ義春さんの作品を読んだ時に近いものを感じてしまった。これはなんとしても映画にしたいと思ったんです。短編集なので、オムニバス映画にしよう! 監督は3人、そして脚本は信頼している倉持裕さんにお願いしよう!と思いました。
あとふたりの監督は誰かと考えた時、直感的に(山田)孝之と(齊藤)工が浮かびました。工とは何度か共演していて、映画の話もよくしていたので、すぐに声をかけました。孝之とは15年ぐらい共演していなかったので、共通の友人の安藤政信に「政信、孝之に連絡してくれー」と頼みました。そしてみんなで集まったんです。まずはふたりが『ゾッキ』を気に入ってくれるかとても心配でしたが、すぐに「最高です!ドキドキしました」と言ってくれて、やった! よかった!と安心しました。
でも孝之は、監督は経験がないのでプロデューサーとして加わりたです、ということでした。そこをなんとか!って頼み込んで、彼が引き受けてくれて動き出したんです。その後、誰がどのエピソードを撮るかと打ち合わせをしている中で、倉持さんがオムニバスではなく1本の映画として繋げたほうがおもしろいのではないかと提案してくれて。倉持さんの見事な構成力と倉持さんならではの世界も加わって、素晴らしい脚本が出来上がりました。
---fadeinpager---
大橋作品に似合う音楽。
僕は映画音楽は大好きで、大橋さんの世界にはCharaの声だ!と思ったんです。3人で最初の打ち合わせをする前から彼女に頼んでいました。以前に監督した『東京日和』(1997年)でも大貫妙子さんしか考えられなかった。最近『東京日和』のアナログ盤も出たんです!
またスーパー・バター・ドッグの「サヨナラCOLOR」という曲が大好きで、同名の映画を撮った時は、忌野清志郎さんとハナレグミの永積タカシくんにデュエットしてほしいと思ったんです。スタジオに入る3カ月ぐらい前に、清志郎さんに聴いておいてくださいねってCDを送ってたんだけど、録音当日「いや、聴いてないんだよね〜」って(笑)。でも即興でさらっと歌えちゃう清志郎のすごさを感じました。
今回の『ゾッキ』は、CDとともにアナログ盤も出ます。Charaのサウンドトラック、ぜひ聴いてほしいです!
サントラマニアの僕としては、ガブリエル・ヤレドの『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』、エンニオ・モリコーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』と『フランティック』、エリック・セラの『グレート・ブルー』、ヴァンゲリスの『ブレードランナー』、この5枚が僕にとってのベストです。
●監督/竹中直人、山田孝之、齊藤工
●脚本/倉持裕
●出演/吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー(コウテイ)、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗
/石坂浩二(特別出演) 松田龍平 國村隼
●原作/大橋裕之『ゾッキA』『ゾッキB』カンゼン刊
●2020年、日本映画
●113分
●配給/イオンエンターテイメント
●3/26(金)より愛知県先行公開、4/2(金)より全国にて公開
©️ 2020「ゾッキ」製作委員会
https://zokki.jp
Council Flat 1 tel:03-6807-0812
photos : SHINTARO OKI (FORT), stylisme : REICA IJIMA, coiffure et maquillage : SHIZUKA WADA, interview et texte : REIKO KUBO