アーレム×小川夢乃、パリジェンヌなアイウエア対談。

パリで生まれ育ち、ロサンゼルスでアイウエアブランド「AHLEM（アーレム）」を立ち上げたアーレム・マナイ・プラット。フランスの眼鏡産地オヨナの職人によって手作業で生み出されるモダンで洗練されたアイウエアは、日本のファッション業界にもファンが多い。グローブスペックスの展示会でアーレムと知り合ってから、公私ともに仲良しだというスタイリスト小川夢乃が、今春オープンしたばかりのアーレム パリ店を訪問。アイウエアへの並々ならぬ情熱を持つふたりが、いまおすすめのアイウエアやパリジェンヌ流スタイリングについて語り合った。

アーレム パリ店にて。左は小川夢乃、右はアーレム・マナイ・プラット。

パリの新店は、アーレムの洗練された美学が詰まっている。

夢乃　パリ店は、3月にオープンしたばかりなんだよね。
アーレム　アーレムは世界中で600の店舗に卸しているのだけど、旗艦店があるのはニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ。私が生まれ育ったパリでは初店舗なの。
夢乃　初めて出会ったのは、日本の代理店グローブスペックスでの展示会だったね。私がロサンゼルスでアーレムの自宅に伺ったのって、もう３、４年前かな？ とても素敵な家だった！ なぜパリに戻ることにしたの？
アーレム　9年間ロサンゼルスで暮らして、私も夫もパリの方がスムーズに仕事ができるのではないかと感じていたの。ロサンゼルスでは工場を訪問するのも遠くて大変だったけど、パリはすべてが近くて便利。ロンドンもアメリカも日本も、近く感じるしね。
夢乃　店の内装デザインもさすがアーレムだよね。今回、久しぶりにパリに来たのだけど、意外と商品が雑多に陳列されている店が多いなと思ったの。こういう洗練された店構えって意外と少ないんだね。
アーレム　そうだね、パリの店ってわりとノーデザイン、ノーセレクトって感じ（笑）。

左岸にオープンしたパリ店は、アーレムのアイウエアが整然と並ぶ。

開閉式の棚など、シンプルでミニマムな内装が目を惹く。

夢乃　開閉式の棚とか、店のあらゆるところに絶妙なデザインが入っているよね。
アーレム　この店をデザインしてくれたのは、スウェーデン人の建築家。昔、私がアクネ ストゥディオズで働いていた時に店舗デザインをしてくれた人なの。
夢乃　なるほど、スウェーデンのミニマルな美学も感じるね。野口寛斉さんの陶器もマッチしている。
アーレム　日本の陶器って、本当に素敵で大好き！ ギャラリー「アエル」の展示会で野口寛斉さんの作品に出合って、ひと目惚れしたの。

店内のあちこちに、野口寛斉の作品が飾られている。

夢乃　アーレムは日本好きで、来日の度に滞在を楽しんでいる印象。いつも、すごくショッピングしているよね（笑）。
アーレム　そうなの！ でも、夢乃がパリで何を買ったのか気になる！
夢乃　まず、ずっとほしかったエルメスの時計。それから、ワークウエアブランド「ラ・ブルース・デュ・リヨン」で、いろいろ買ったかな。あとは、パジャマやヴィンテージドレス、シールトゥルドンのキャンドル。
アーレム　シールトゥルドン、いい香りよね。アーレムではオリジナルキャンドルを作ってもらっていて、パロサントとオレンジブロッサムの2種類を販売しているの。
夢乃　フランス最古の歴史があるキャンドルという物語もよいよね。

アーレムオリジナルのキャンドル¥15,400/アーレム（グローブスペックス）

---fadeinpager---

アーレムと小川夢乃、ふたりがいま気になるアイウエアとは。

夢乃　新作や日本にないオリジナルもあるね。アーレムのおすすめのアイウエアを教えてほしい！
アーレム　新作の「Magenta」や「Marcadet」は、私のお気に入り。こういうグリーンのレンズカラー（Green Light）も、いままでにない新しい感じだと思う。マニッシュだけど、マニッシュになりすぎないよね。

新作の「Magenta」や「Marcadet」がズラリと並ぶ。

限定版「Marcadet」アッシュミルク ノーベンバーライト×グリーン ライト ¥66,000/アーレム（グローブスペックス）

夢乃　このブラウンのレンズ（Brown）もいいね。
アーレム　スモーキーなレンズって、メイクアップしたみたいに顔を華やかに見せてくれるからおすすめ！

グリーンやブラウンなど、スモーキーカラーのレンズは顔を華やかに見せる。

夢乃　このサングラス「AHLEM x Jorden 」ドライパンパスカラーも初めて見たけど、とてもいい色だね。
アーレム　これはアーレム店舗やグローブスペックスのみでしか販売してないエクスクルーシブモデルで、世界限定100本しか作っていないもの。ニューヨークのスタイリストの友人Jorden Bickhamとコラボしたもので、フランス・オヨナの職人たちによってひとつひとつ手作業で作っています。

---fadeinpager---

限定コラボモデル「AHLEM x Jorden」ドライパンパスカラー ¥84,700/アーレム（グローブスペックス）

夢乃　私、このフレーム「Varenne」も気になっていた！ ピンクゴールド（Peony Gold）のツヤもいいなと思っていて。パリに来て、大きめのアイウエアをかけている人をよく見かける気がして、もっとほしくなった。ティアードドロップだとクラシックになりがちだから、こういうスクエアでちょっぴりタレ目風なのがポイント。

「Varenne」ピオニーゴールド×グリーングリッターグラディエーションレンズ¥66,000/アーレム（グローブスペックス）

「Varenne」ピオニー ゴールド¥66,000 /アーレム（グローブスペックス）

アーレム　フランス人には、オーバーサイズの新作「Pont Mirabeau」も人気だね。
夢乃　そうそう、これもティアドロップではないけど、フレームが下がっている感じだよね。下がりすぎていると、『トップガン』みたいになっちゃう（笑）。そうするとファッショナブルではなくなるから、バランスが大事。ちょっぴり下がっているように見えるくらいのまっすぐなフレームだね。

「Pont Mirabeau」ストームライト×ダーク グリーンレンズ ¥66,000/アーレム（グローブスペックス）

アーレム　ジュリエット・ビノシュは新作「New York」を愛用してくれているんだけど、パリジェンヌはこういうスタイルも好きかな。

ジュリエット・ビノシュが愛用する「New York」¥66,000 /アーレム（グローブスペックス）

夢乃　意外と日本人の女の子にも似合うと思う。潔くウエストインした白Tシャツとデニムに合わせたら、すごくかっこいい。今日私が着ているようなワンピースやヴィンテージドレスにスタイリングの外しとして合わせてもいいし、セットアップでちょっときめてみてもいいし。アーレムのアイウエアはフレームやメタルがモダンだから、どんなスタイリングに合わせてもコスプレっぽくならないんだよね。

---fadeinpager---

パリジェンヌ流、ノンシャランなアイウエアの楽しみ方。

夢乃　パリジェンヌがアイウエアをかける時、ヘアメイクとのバランスってどう考えているのか気になる！
アーレム　パリジェンヌって、基本的にヘアスタイルはそのままなの。洗い立て、乾かし立て（笑）。そして、ノーメークにリップだけというナチュラルなスタイルにアイウエアをかける。アメリカって、髪をしっかり巻いて、香水をつけて、イエローやブラウンのカラーメイクをする子が多いんだけど、パリジェンヌはまるで違う。華美になりすぎず、ノンシャランにアイウエアをかけるのがパリジェンヌ流。
夢乃　作り込みすぎないバランスがかっこいいってことだね。アーレムのアイウエアは、そういうパリジェンヌのスタイルに合うメガネになっていると思うし、どんなスタイリングと合わせようとか、あまり考えすぎないで着用できるのがいいよね。アーレムは、デザインする時に意識していることはあるの？
アーレム　誰か特定の人を思い浮かべることはなくて、もっと一般的なアイデンティティをイメージしてデザインしているの。私にとって、アイウエアはどこにでも一緒に持って行く必要があるもの。今朝はパリにいて、明日はエジプト、明後日は東京にいるかもしれない。そんな風にいつでもどこへでも持ち歩けることが大事だから、複雑すぎず、シンプルなデザインを意識しているの。でもそれでいて、アーレムのメガネだって認識してもらえるようなアイコニックでユニークな存在感もポイント。
夢乃　シンプルで強い個性を放つ、そのバランスが大事ということだね。
アーレム　でも、そのバランスを取るのってすごく難しいの。例えば、メガネだけ極端に目立ってしまうようなブランドもある。私は、アイウエアと顔のバランスを取ることを意識してデザインしたい。

どのアイウエアが似合うか、いろいろ試してみるのも楽しい時間。

夢乃　アーレムは、日本のスタイルからインスピレーションを得ることはある？
アーレム　最近、日本人のアイウエアに対する価値観が変わってきていて、おもしろいなと思っているの。女性も男性も、サングラスをより多く身に着ける傾向があると思う。それに、男性がキャットアイのフレームをかけていたのはびっくりした。
夢乃　グローブスペックスの男性スタッフがキャットアイのメガネをかけていたんだけど、アーレムとしてはレディース向けに作ったデザインだったから、男性がかけると思っていなかったんだよね。メンズのアイウエアって、小さなスクエアのクラシックなフレーム一択みたいな、このスタイルって決まっている風潮があったしね。
アーレム　1950年代以前は、ジャズの男性たちがキャットアイのアイウエアをかけていたのだけど、その後、メンズではより丸みを帯びた形や四角い形が主流になったんだよね。でも、いま、日本の男性はどんな形のアイウエアも積極的に取り入れているからおもしろい。
夢乃　日本人の男性って、レディースのものも似合っちゃう人多いんだよね。アーレムのアイウエアはユニセックスで楽しめるってことだね。
アーレム　アイウエアで冒険する人が増えてきているよね。新しいフレームやフォルムをいつも探求していて、おもしろいと思う。アイウエアをアクセサリーのひとつとして捉えているんだなと、そんな日本人の価値観にインスピレーションを受けています。

日本人のアイウエアへの探究心に感銘を受けていると話すアーレム。

アーレム　アーレムのアイウエアを買ってくれた人には、メガネケースに名前やイニシャルを刻印してプレゼントするサービスをしているの。夢乃はアーレムのメガネをかけてきてくれたから、プレゼントするね。

店内でメガネケースに刻印をしてくれるサービス。

夢乃　えー！ 嬉しい！ 日本でアーレムを買った人も対象なの？
アーレム　いつどこで購入されたものでも、アーレムのアイウエアを持ってきてもらえたらプレゼントしています。

夢乃の刻印をしてもらって。アーレムもアラビア語で夢という意味なのだそう。

夢乃　ちなみに日本人がパリでメガネを作ろうとすると、ここでレンズは入れられるものなの？
アーレム　店で視力検査をすることができるので、日本から来ても、すぐにメガネを作れるよ。
夢乃　フランス人は、メガネも保険適応だったりするんだよね？
アーレム　フランス人は処方箋を持ってきたら保険適応できて、レンズが無料、フレームも割引になるの。処方箋をもらうためには、先に病院を予約しないといけないけどね。
夢乃　いいシステムだよね！ でも病院の予約を取るのにすごく時間かかるって聞いたことある。小さい街だと2年とかかかるって。だから保険適応を諦めて、定価で買っちゃう人も多いって聞いた（笑）。
アーレム　それがフランスなの（笑）。