父性を映す、ボッテガ・ヴェネタの写真プロジェクトとは。
Fashion 2024.06.25
ボッテガ・ヴェネタは、クリエイティブ・ディレクターのマチュー・ブレイジーのオファーにより、エイサップ・ロッキーをフィーチャーしたキャリー・メイ・ウィームスによる新たなフォトグラフィーシリーズ「Portraits of Fatherhood(ポートレイツ オブ ファザーフッド)」を発表。
このフォトグラフィーシリーズは、父の日に合わせて発表された6枚のビジュアルで構成。エイサップ・ロッキーがふたりの幼い息子、リザとライオット・ローズと自宅でくつろぐ姿をとらえている。
「写っているのは、進化したありのままの私です。キャリアのあらゆる側面に向き合いながら、父であること、親であること、仲間や家族であることを体現し、それを受け入れている私そのものがここにいます」と彼は語る。
家庭的な雰囲気をストレートにとらえ、フラッシュを焚かずありのままを映したこれらの作品は、ウィームスの代表作「Kitchen Table Series」や、アフリカ系アメリカ人の家族が直面する否定的なステレオタイプやメッセージに対する痛烈な反論を示した彼女初の個展『Family Pictures and Stories』(1981-1982)を想起させる。長年にわたり、作品を通して真実の探究を表現し続けてきたウィームスにとって、エイサップ・ロッキーとのプロジェクトは「軽視してはならない重要な意思表示」を意味するものだった。
「ロッキーが子どもを持つアフリカ系アメリカ人男性として抱えている懸念は、私の心を深く揺さぶりました。歴史的にも、黒人の家族が真正面から表現される機会はほとんどありませんでした。何世紀にもわたり歪められてきたのです。この企画は、彼自身の経験だけでなく、それがより多くの人々の目にどう映るのかということを、ただ肯定的なだけではない真実味を持って表現するまたとない機会となりました。黒人男性に対するあらゆる非道な行為、特にその男性らしさゆえの残虐な行為を前にして、ロッキーが子どもたちに愛情を持って接する姿を見ることができます。彼を通してその真の姿を語ることができ、心が奮い立つような経験となりました」とウィームスはコメントを寄せている。
学生時代にウィームスの写真と出合い、以来、彼女の作品を心に留めてきたというマチュー・ブレイジー。彼は今回のフォトグラフィーシリーズについて「彼女のレンズと視点をロッキーとのプロジェクトに取り込み、父性について、またそれが今日どのような意味を持つのかを探求してもらえたのは光栄なことです。この作品は、父親として、アーティストとしての存在を超えたひとりの男性としてのロッキーのリアルな姿を映し出しています。写真を目にした時、最初に心を打たれたのはこの親密な空気感でした」と語っている。
ラッパーに対し世間が抱くイメージ、ステージ上での彼自身のイメージとは異なる姿がとらえられたこのプロジェクトは、彼の個人的な進化を示すだけでなく、より広いコミュニティにおける重要なステートメントでもある。「私が属するカルチャーの中で、父であることや親であることの大切さを唱える人はあまりいないと思います。この家庭的でないイメージには、強い強制力があります。......でもここにいるのは、ひとりの女性に一途な、家庭的な男性である自分です。パートナーとして、親として存在することが、今の私の人生を完成させているのです」
ロッキーにとってこのプロジェクトは、自身のリアルな日常を舞台とし、ブランドのプロダクトのその先に焦点をあてた、これまでにない取り組みとなった。「私にとって、このような取り組みは初めてです。父親としての自分の居場所、子どもたちとのふれあいを偽りなく表現した、共同的で集団的なアート作品です」
text: Natsuko Kadokura