シャネルと二階堂ふみの、演じる。

Fashion 2024.11.26

マルセイユの歴史的建築で発表された2024‐25年クルーズ コレクション。自由の風に誘われるように、二階堂ふみが感情の機微を繊細に表現する。

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ドレス¥1,459,700、ベルト¥674,300、イヤリング¥180,400、ネックレス¥203,500、左右同じブレスレット手首側から¥369,600、¥140,800/以上シャネル(シャネル カスタマーケア)

「シャネルの服は抑制的であり、規律的なものだと思っていたのですが、いざ袖を通してみたら、こんなにも動きを制限しないんだ! と驚きました。可動域が広く、動きやすく、心が解放されていくような服です。ガブリエル・シャネルのスピリットが生きていると感じました。女性のコルセットを外したということが能動的な動きに繋がっているのかもしれません。抑制された女性を解放し、時代に大きな影響を与えたパイオニアという存在です。私がこうして表に立つ仕事をできているのも、彼女の影響なのではないかと感じます」。身体の動作を制限することのない軽やかなドレスが、感情の昂りによって引き出された自由な動きを優しく包み込む。

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ジャケット¥2,707,100、スカート¥360,800、イヤリング¥107,800、ネックレス¥524,700/以上シャネル(シャネル カスタマーケア)

「私たちの生きている世界が危機に直面した時、芸術は後回しにされてしまうものだということを、コロナの時に身をもって実感しました。いまこうして、映画や舞台という芸術産業に携われていることに大きな喜びを感じます」。ジャケットにあしらわれたのはマルセイユの海岸に自生する11種類の花々。胸元からこぼれ落ちるような花のコサージュが、満面の笑みに呼応する。

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トップ¥1,427,800、スカート¥1,722,600、ベルト¥316,800、ネックレス(上から)¥221,100、¥289,300/以上シャネル(シャネル カスタマーケア)

「シャネルのアトリエを見学した時、作るものに自分の気持ちを託して、言葉ではないところで昇華させているクチュリエの方々のお話を聞いて、実際に手を動かしてものを生み出す職人の方々へのリスペクトの気持ちが高まりました」。壮大なパターンのデザインから刺繍を生み出すルマリエの職人たちの手によって紡がれた繊細なセットアップが、ピュアな感情を引き出す。

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コート¥1,509,200、ジャンプスーツ¥730,400、イヤリング¥180,400、ベルト¥349,800/以上シャネル(シャネル カスタマーケア)

「ガブリエル・シャネルの人生において、私が強く感じたのはインディペンデントであったことです。彼女のアパルトマンを訪れた時、彼女のセンシティブな気配や繊細な感情が、空気のように漂っていました。いまとは比較にならないほど抑制された時代に、あんなにも自由でモダンな感覚を持った女性が自分の信念を貫き通すためには多くの苦労もあったかと思います。しかしその苦労を覆すほどの心の栄養が、彼女にはたくさんあったのだろうと想像しています」。ショー会場のファサードの格子柄を幾何学的なパターンとしてメゾンのコードとともに取り入れたブラック&ホワイトのスタイルに、モダンなアティチュードが宿る。

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チュニック¥1,452,000、ネックレス(上から)¥220,000、¥377,300、¥298,100、ブレスレット¥360,800/以上シャネル(シャネル カスタマーケア)

「私はもともとシャイな性格だし、自分のテンションを上げないと場に呑まれるんです。ヘアメイクの力を借りてシャネルの服を纏った完成された姿で、そこから自意識を脱ぐという今回の作業はとても楽しかった。芝居をするとか演じることは想像以上に繊細な作業で、湿度が1 パーセント違うだけで、すべてが違うような気がするんです。今回の撮影を経て、自分に対する新たな課題も発見できました」。グラフィカルなタッチで描かれた海の生き物がプリントされた波打つラッフルのドレス。繊細なドレスとチュールの隙間を、新しい風が吹き抜けていった。

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"私たちは常に正直に、真摯に心を動かすという行為と向き合わなくてはいけません"

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二階堂ふみがシャネルのアンバサダーに就任した。アンバサダーはメゾンの精神性や歴史と深くコミットし、互いに共鳴しあう関係性を築ける者が選ばれる。二階堂ふみが次のステージを任される。

「アンバサダーへの就任は夢にも思っていないことでした。2年前、シャネルを深く理解するためにパリを訪れ、メゾンに引き継がれてきたクラフツマンシップやシネマとの関わり合いについてレクチャーを受ける機会を得ました。単にラグジュアリーなブランドというだけじゃなく、人が生きるうえで基盤となるスタイルを作り、それを次世代の育成や支援で繋げていくという、表に出ない精神に触れました。特に職人の方たちの手の動かし方、技の表現には感銘を受けました。私自身はガブリエル・シャネルがジャージー素材で女性の身体や動きを締め付けない服を作り、コルセットから解放したことが、いまの私と繋がっていると感じます。彼女が心を解放する服を作ったことが、能動的な姿勢を見せるいまの仕事を可能としているところもあると思います」

10代から日本映画界の最前線でエッジーな女性像を演じてきた。2024年にはアメリカ、ディズニープラスの配信ドラマ「SHOGUN 将軍」で、豊臣秀吉の側室・淀殿にインスパイアされた「落葉の方」を演じ、強い女の抱える光と闇をその表現で世界へと知らしめた。落葉の方は真意が見えない女性だったが、目の前にいる二階堂はよく笑い、撮影中もカメラの前でゴムまりのように弾んで跳んだ。今回のシューティングは、シャネルが是枝裕和監督とともにローンチした新たなプログラム、CHANEL AND CINEMA - TOKYO LIGHTSに触発されたもの。日本映画界における次世代のクリエイターの創作活動をサポートすべく、来る11月27、28日に前出の是枝監督のほか、西川美和監督、役所広司、安藤サクラ、ティルダ・スウィントンらを講師に迎えてマスタークラスを開催し、コンペティションより選ばれた上位3作品は、シャネルの支援のもと制作が進められ、完成作品は東京とパリで披露される予定だ。二階堂もその活動に共鳴し、今後、何らかの形でコミットしたいと考えている。その一環として、今回はスチールと動画で「無意識と意識の間」というテーマで撮影に挑んだ。2024/25年 クルーズ コレクションを纏い、喜怒哀楽をエチュードで演じた。

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「私はミヒャエル・エンデが大好きで。晩年の彼がジャーナリストの筑紫哲也さんと対談している中で、いまも忘れられない言葉があるんです。それは、生きていくかどうかの瀬戸際の状況の人間には、映画や音楽などの芸術は本来持つ力を発揮しきれない。けれど、お腹を満たして身体の栄養が行き届いた後に必要になるのが芸術で、芸術が心の栄養になると。そして、ここからは私の持論ですが、芸術は時に毒になる可能性もある。でも、それは摂取の仕方の問題です。わからないものであっても、手を触れるから初めてわかることもある。だからこそ、表現する側の責任は大きいし、私たちは常に正直に、真摯に心を動かすという行為と向き合わなくてはいけないと思うんです。そういうことに、シャネルという心の豊かさを与えるラグジュアリーな存在が、これからの世代の育成に場を開くというのは非常に意味があるし、映画に身を置く人間としてありがたいと思います」

シャネルの精神に触れる。その原点となる体験として、生前のガブリエル・シャネルが過ごしたアパルトマンに足を踏み入れたことが大きいとも言う。パリ、カンボン通り31番のシャネルの本店の上の3階に、当時のまま保存されているその部屋。

「私の印象では、キャメルカラーを生かした空間で、ガブリエルが暮らしていた時代の空気がいまも残っている気がしました。何より、そのスタジオで働く職人の方々は、いまもガブリエルの気配の空気を感じて、『今日はこういうチャレンジをしよう』『こういうクリエイティブに踏み出そう』と、毎日、意識しているように感じました。今日の撮影はその時の景色も思い出しながら、カメラの前に立ちました。いままで自分の感情をファッション撮影でストレートに出していくアプローチってあまりしたことがなかったから、すごく勉強になりました。服をはじめ、ものを量産する時代に、あえて手作業にこだわる姿勢はまさに責任が伴うこと。私自身、シャネルのもつ責任をともに感じ、考え、世界観を表現する担い手になりたいと思います」

Fumi Nikaido
1994年、沖縄県生まれ。映画『ガマの油』(2009年)でスクリーンデビュー。映画や舞台を中心に活動し、国内外の映画祭で数々の賞を受賞。エミー賞受賞ドラマ「SHOGUN 将軍」にも出演。24年11月よりシャネルのアンバサダーに就任。
問い合わせ先:
シャネル カスタマーケア
0120-525-519
https://www.chanel.com/jp/

photography: Hiroko Matsubara styling: Tomoko Iijima hair: Asashi (ota office)  makeup: Uda (mekashi project) interview & text: Yuka Kimbara video director : Akari Eda cinematographer : Nao Saito music : Teppei Kakuda online editor : Takuma Ikeda

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