華やかでドラマティックな祭りの主役は、タイ・パーイの少年たち。

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写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回はタイ・パーイの旅。

ナット君は8歳。普段はパーイから遠く離れた街で暮らしているが、ポイ・サン・ロンのために両親の故郷のパーイに。儀式の3日目は流石にお疲れの様子。叔母さんが彼が眠っている間に化粧してあげていたのが印象的だった。

町中が祝う少年たちの門出。

vol.41 @ タイ・パーイ

ポイ・サン・ロンはタイヤイ族の少年たちの初めての出家に伴う儀式、祝祭だ。この華やかでドラマティックなセレモニーを捉えるべく、北タイのパーイを訪れた。儀式は3日間にわたって開催される前日から現地に入って様子をうかがうことにしたのだが、すでに少年たちとその家族親戚は完全に祭りモードに切り替わっていた。路地に響くシャンシャンという楽隊が鳴らす音をたよりに歩を進めると、化粧をして煌びやかな衣装に身を包んだふたりの少年が若い男の肩に担がれて飛び跳ねている。こんな小さな田舎の町にしてポイ・サン・ロンにかける人々の熱量がすごい。その勢いに一瞬気後れしそうになったが、通りを練り歩く行列に紛れ、付いていった。余所者の私がそこにいることに問題はないようで、むしろ歓迎するよという具合。辿り着いたのは一軒の民家で、そこにももうひとりランニング姿で可愛らしく化粧をした少年がいて、3人で並んで家の軒先に座り、集まってきた人々に念仏を唱えた。出家前の少年たち「サン・ロン」が家を訪れるのは縁起良きこととされるそうで、少年たちは文字どおり宝物のように扱われていた。翌朝、祝祭の1日目、午前4時半に儀式の会場の寺に向かうと、寺の仮設テントの下で、少年たちは親戚総動員で衣装を着付けされ、小一時間かけて丹念に化粧されていた。この長時間の準備を、少年たちは不機嫌になることもなく、むしろ楽しんでいた。彼らが変身していく様はまるで蛹が蝶になるようでなんとも麗しかった。羽ばたけサン・ロン!

祭りのクライマックス、町内を練り歩く少年たちと人々。女性たちは華やかに着飾って供物を担いでいる、あるいは踊りまくる。
剃髪の儀式。優しい先輩僧侶が丁寧にカミソリをあてる。パーイに滞在中、小林エリカさんから、彼女が翻訳した『わたしは なれる』の著者のサンギータが来日することになったとうれしい知らせを受ける。自分の夢を描いていた彼女の外国旅行をしたいという夢が叶う、女の子だって羽ばたくのだ。

●『わたしは なれる』 サンギータ・ヨギ著 小林エリカ訳 green seed books 刊 ¥3,960

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。
山口県宇部市の山本写真機店にて5月16日から23日まで展覧会を開催。リトアニアの夏の光を感じてください。

Yayoi Arimoto
東京生まれ、写真家。アリタリア航空で乗務員として勤務する中で写真と出会う。2006年よりフリーランスの写真家として本格的に活動を開始。

  • photography & text : Yayoi Arimoto

*「フィガロジャポン」2026年7月号より抜粋