メゾンも続々参加! ミラノサローネ2026をリポート。

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文・猪飼尚司

国際家具見本市として1961年にスタートした「ミラノサローネ」。そこから半世紀を経て、いまや多分野、多文化が交錯する世界最大級のデザインイベント「ミラノデザインウィーク」へと成長した。第1弾リポートでは、名だたるメゾンが展開した大型の企画展示にフォーカスする。

©Maxime Verret

01. Hermès/エルメス

©Maxime Verret

石膏でできた大きな直方体にブナの板材を組み込んだ抽象彫刻のようなオブジェが立ち並ぶ空間で新作を発表した〈エルメス〉。見知らぬ土地を彷徨い、偶然に出合う発見に感嘆する様子を再現すべく、作品は展示台に掘り込まれた凹みや天面に置かれており、ひと目で全体を俯瞰することができない。すっきりとした空間に突如現れる幾何学的な模様が入ったプレード(大判のブランケット)や繊細なマルケトリが施されたレザー小物、一つひとつハンマーで表情豊かに仕上げた槌目金工のオブジェと出合うたびに、はっとする感覚が新鮮に感じられた。

©Maxime Verret
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02. Louis Vuitton/ルイ・ヴィトン

旅をテーマに世界屈指のデザイナーとタッグを組むルイ・ヴィトンの「オブジェ・ノマド コレクション」。今年フォーカスしたのは、20世紀初頭に室内装飾、家具、装丁、イラストレーションなど、幅広い分野で活躍したアーティスト、ピエール・ルグラン(1888〜1929年)だ。ルグランがルイ・ヴィトンのために1921年に制作したドレッサーを現代に復刻したほか、装丁に施したアール・デコ的な幾何学文様をテーブルクロスやラグ、スクリーンへと展開していた。

03. Bottega Veneta/ボッテガ・ヴェネタ

〈ボッテガ・ヴェネタ〉は、ミラノの旗艦店で韓国のアーティスト、イ・カンホとのコラボレーションによるインスタレーション「Lightful」を開催。身近な素材を再解釈しながら、工芸的な手法と現代的なデザインの感覚を掛け合わたクリエーションを行うイ・カンホは、本展のために、自身の作品に頻繁に使用する電気コードと、ボッテガ・ヴェネタのシグニチャーでもある革紐「レザー・フェットゥーチェ」のふたつの素材を編み込んだ光のオブジェを制作。編み目から漏れ出す光、異素材が放つ光沢と艶など、作品が醸し出す繊細な輝きのニュアンスに心惹かれた。

04. Loro Piana/ロロ・ピアーナ

原点に立ち返り、高品質なものづくりと向き合う姿勢を新たな目線から紹介した〈ロロ・ピアーナ〉。会場となったロロ・ピアーナ本社社屋コルティーレ・デッラ・セタには、24枚のプレード(ブランケット)が絵画作品のように飾られている。これらはすべてプレードとして製品のかたちを成しているが、「考察 第1章:プレード」と名付けられたタイトルから想像できるように、フォーカスしているのは、それらが完成に至る制作のプロセス。糸や繊維などの原材料、施された巧みな技法をひとつずつ丁寧に解説しながら、ロロ・ピアーナのものづくりに対する真摯な姿勢を改めて示していた。

05. Prada Frames/プラダ フレーム

デザインスタジオのフォルマファンタズマと協働しながら、プラダが2022年にスタートした〈プラダ フレーム〉は、トークを中心としたシンポジウムプログラムだ。5年目を迎える今年は、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』が描かれていることでも知られるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会で「In Sight」をテーマに掲げ、“イメージ”と現代社会、文化の関係性を紐解いていった。AIなどで簡単につくられるイメージの可能性と脅威。さらには人がつくるものと、機械が生成するものの曖昧さなど、デザインが表層の文化では社会の動きと密接に結びついていることを再認識する奥深い内容のセッションが3日間にわたり繰り広げられた。

06. Gucci/グッチ

1921年の創業から105年目を迎える〈グッチ〉は、メゾンの歴史を独創的なフォーマットで紹介する展示「Gucci Memoria」を行なった。サン・チンプリチャーノ教会の美しい庭園を備えるロマネスク式の回廊に入ると、壁に掲げられた巨大な12枚のタペストリー。創業者グッチョ・グッチがポーターとして働いていたロンドンのサヴォイ・ホテル、フィレンツェにつくった最初の工房など、その一つひとつにグッチが辿った歴史のワンシーンが独自のタッチで描かれていた。

07. FENDI CASA/フェンディ カーサ

色彩を軸に、モジュール性、遊び心、そしてメイド・イン・イタリアのつくりの良さにこだわった新作コレクションを発表した〈フェンディ カーサ〉。異素材を用いながらも、それらを同系色のグラデーションでまとめることで、大胆さと静謐さを兼ね備えるアイテムへと昇華。象嵌を用いた折り畳み式パーティション「マキュラ」やモジュール型の収納ユニット「チェーン」など、装飾性と機能性の調和が取れたアイテムの存在も際立っていた。

08. ISSEY MIYAKE/イッセイ ミヤケ

©Melania Dalle Grave e Michela Pedranti, DSL Studio

〈イッセイ ミヤケ〉を代表するプリーツ製品の製造過程で排出される副産物の紙。丸太のように圧縮された紙の形態に魅せられた三宅デザイン事務所の近藤悟史はこの紙の次なる可能性を求め、さまざまなトライアルを繰り返してきた。その過程を紹介する「The Paper Log: Shell and Core」では、「ペーパーログ」と呼ぶ紙の塊をカットし家具のプロトタイプを制作。さらに協業相手のスペインの建築事務所、アンサンブル・スタジオが紙を剥いで硬化させた空間とも呼応する自由な造形のインスタレーションへと展開していった。

©Melania Dalle Grave e Michela Pedranti, DSL Studio
©Melania Dalle Grave e Michela Pedranti, DSL Studio
©Melania Dalle Grave e Michela Pedranti, DSL Studio

  • text: Hisashi Ikai