90秒に懸ける熱。イタリア伝統の競馬レース、パリオを初体験！【lukaが旅する小さな世界。イタリア・シエナ編】

Travel 2025.11.04

モデル・写真家のlukaが2025年夏、約2ヶ月をかけてロサンゼルスやニューヨーク、ロンドン、パリといった世界の都市を巡る。訪れた街をlukaの感性で捉え、文章で綴るスペシャル連載。今回は伝統の競馬祭を体験するため、イタリアのトスカーナ州にある街・シエナへ。

90秒に懸ける熱。イタリア伝統の競馬レース、パリオを初体験！

文：luka

イタリアのトスカーナ州にある街、シエナで年に2回行われるパリオ。

ニューヨークを後にしてローマに入り、イタリアやフランスの街を巡るロードトリップを開始。まずはローマで一泊し、翌朝、最初の目的地シエナへ向かった。ここを訪れたのは、ずっと見たかった伝統の競馬祭、パリオを観戦するため。パリオは毎年7月2日と8月16日に行われる伝統行事で、約4万人を動員！シエナの町が17つの地区・コントラーダに分けられ、それぞれが独自のカラーや動物のシンボルを持ち、旧市街のカンポ広場を舞台に各コントラーダの代表馬が競い合う町内対抗レースだ。映画『007』シリーズの冒頭のシーンにも登場したことでさらに有名になった。

コントラーダの旗が掲げられ、街全体がお祭りムード。

街に着くと、街全体がレンガ色の建物と石畳に囲まれ、まるでタイムスリップしたかのよう......。カンポ広場へ向かう通りには、町中に各コントラーダの旗が掲げられていた。自分の生まれた場所が必然的にその応援チームとなっているようで、大人も子供も、それぞれコントラーダカラーのカラフルなスカーフを身につけている。

約4万人を動員するパリオ。人々が会場内でひしめき合う。

広場には人が集まり始め、旗を振る人々や太鼓や鐘の音、歓声が。街全体がひとつの祭りのようで、パリオの興奮と熱気が体に伝わってきた。2時間ほどパレードが続いた後、大砲が鳴り、いよいよレースかと思ったが、馬たちは何度も出走順を変え、30分、40分と過ぎても、なかなかスタートする気配がない。

色鮮やかなフラッグや伝統衣装がお祭りムードをより一層盛り上げる。

「どうして始まらないんですか！？」と隣にいた男性に思わず尋ねてみると、彼は肩をすくめて笑いながら、「パリオはね、レースそのものより駆け引きの方が長いんだ。裏では賭けが動いていて、スタートもその影響を受けるんだよ」と教えてくれた。なるほどと思いながら周囲を見渡すと、観客たちはブーイングをしつつも、その緊張すら楽しんでいるように見えた。そして大砲の合図で90秒の勝負が始まると、私も他の観客と同じく息を呑んで見守った。

ゴシック様式建築が美しいシエナ大聖堂。

今年の優勝はValdimontone（ヴァルディモントーネ）地区！レースが終わると、勝利した地区の人々は歓声をあげ、広場に走り出し馬や騎手を肩車で担いで喜びを爆発させ、敗れた人々は悔しさのあまり怒ってる人や泣きながら帰る人も。パリオが単なる競馬ではなく、シエナの人々の信仰心や誇り、名誉がかけられた一大イベントだと実感した一日だった。

Profile
Luka 写真家／モデル
1998年、東京都生まれ。モデルとして広告や雑誌、MVなどで幅広く活動するほか、10代の頃から本格的に写真を撮りはじめ写真家としても活動する。2025年3月に写真展「Morocco 2017 - 2025」を開催。雑誌やファッションブランドのヴィジュアル撮影も行っている。