パリ、アートファンの気を引く三展三様の展覧会 オルセー美術館、画家シニャックが集めた絵画展がおもしろい。
Paris 2021.12.31
新印象派の画家ポール・シニャック(1863~1935年)。功績のわりには知名度が低い画家かもしれない。点描画法をジョルジュ・スーラとともに推進した彼だが、オルセー美術館で2月13日まで開催中の『Signac Collectionneur(シニャック、コレクター)』展は、そのタイトルのとおり、彼自身の作品ではなく彼がコレクションした作品についての展覧会だ。
展覧会の導入はポール・シニャックの写真と彼の作品『Femmes au puits,Opus 238』(1892年)から。
左: 友人の画家テオ・ファン・レイセルベルヘの『En mer, portrait de Paul Signac , dit aussi Paul Signac à la barre de son bateau l’Olympia』(1896年)は海を愛し、船を所有していたシニャックを描いている。 右: ジョルジュ・スーラによるシニャックの肖像画(1890年)。
初めて購入した絵画は彼が20歳の時で、セザンヌの『La Plaine de Saint-Ouen- l’Aumône』だった。これは生涯手放すことはなかったそうだ。パリ、サントロペの家に芸術家を集めて交流するなど、話好きで社交家でもあった彼。1887年に仲良くなったゴッホが療養所に隔離された時には、アルルまで訪問に出かけている。これに喜んだゴッホから贈られた2匹のニシンを描いた作品は、今回の展示品の目玉作品のひとつといえよう。展覧会のポスターにはキース・ヴァン・ドンゲンの色彩と女装した歌い手というテーマも強烈な作品『Modjesko, Soprano Singer』(1908年)が選ばれている。この作品も人々の好奇心をそそっているようだ。秋から新しい展覧会が来年頭にかけて複数始まったパリだが、その中でもこれが実におもしろい!と評判で、鑑賞者を集めている。
左: クロード・モネの『La Plaine de Saint-Ouen- l’Aumône』(1880年頃)。 右: ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ『Deux harengs』(1889年)。
左がポスターに使われているキース・ヴァン・ドンゲンの『Modjesko, Soprano Singer』(1908年)。右はシニャックが最初に入手したヴァン・ドンゲンの『Nu à la jarretière』(1907年)。シニャックが支援した野獣派の若手画家のひとりがヴァン・ドンゲンだった。photo:Mariko Omura
裕福な商家に生まれたポール・シニャックは16歳の時にモネの作品『Pommier en fleurs au bord de l'eau』(1880年)に感銘を受けて、画家になることを決めたという。モネ、カイユボットといった主に印象派たちの作品を見ての、独学である。1884年に独立芸術家協会を設け、アンデパンダン展を開催。ジョルジュ・スーラ、ピサロといった新印象派の友人たちの作品を知らしめることにも彼は奮闘した。彼らを励ますためにも、彼は作品を購入することもあったそうだ。展覧会はイントロダクションに続き、巨匠たち、スーラ、新印象派、コレクションのサプライズといったテーマで展開。彼の肖像画も3点、展示されている。たとえシニャックの作品のファンでなくても、楽しめるだろう。
左: クロード・モネの『Pommier en fleurs au bord de l'eau』(1880年)。これを彼が入手できたのは、69歳の時だった。Collection particulière © droits réservés 右: エドガー・ドガの『Deux danseuses en maillot (Arlequin et Colombine)』(1892年)。1894年のドレフュス事件に際し、ドガの反ユダヤ主義にシニャックは失望。それゆえ、サントロペの家の改装に必要な費用のために、彼はドガのパステル画を手放したそうだ。Collection particulière Photo © musée d'Orsay / Patrice Schmidt
左: 歌川広重、歌川国貞など日本の作品もコレクションしていた。 中: 葛飾北斎の『La Manga』。 右: 着物のモチーフ研究の本なども。photos:Mariko Omura
ジョルジュ・スーラの作品を集めた一室。©️Sophie Crépy, musée d'Orsay
左: Juliette Cambierの『Ma cheminée』(1917年)とLucie Cousturierの『Nature morte fruits』(1903年)。 右: 左2点はHenri-Edmond Cross、 中央は Maximilien Luce、右2点はLouis Hayet。
シニャックの別荘の食堂の壁を再現。左からHenri-Edmond Cross『Composition, dit aussi L’air du soir』(1893~94年)、Henri Matisse『Luxe, calme et voluptée』(1904~05年)、Louis Valtat『Femmes au bord de la mer』(1904年頃)。©️Sophie Crépy, musée d'Orsay
会期:開催中~2022年2月13日
Musée d’Orsay
Esplanade Valéry Giscard d’Estaing
75007 Paris
開)9:30~18:00(火、水、金~日) 9:30~21:45(木)
休)月
料)16ユーロ
www.musee-orsay.fr/fr/expositions/signac-collectionneur-423
editing: Mariko Omura