ピカソ美術館で画商レオンス・ローゼンベルグ宅をアーティ訪問。

Paris 2024.04.09

マレのピカソ美術館で3月12日から再び3フロアでピカソの作品が展示されるようになったが、1階では企画展が開催されている。5月19日までは『レオンス・ローゼンベルグのアパート内。デ・キリコ、エルンスト、レジェ、ピカビア......』展だ。

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マダム・ローゼンベルグの寝室には、フランシス・ピカビアによるセンシュアルな連作『Transparences』。中央は『Pavonia』(1929年)。photo: Mariko Omura

レオンス・ローゼンベルグ(1879~1947年)は抽象芸術とキュービスムを擁護した画商である。その分野を扱い、ピカソの画商とも呼ばれていたドイツ人の画商ダニエル=ヘンリー・カーンワイラーが第一次世界大戦でパリを去らざるを得なくなり、その後を継ぐようにレオンスが登場したのだ。カーンワイラーを失ったピカソについては、まず『アルルカン』を最初に購入。そのお礼だろう。ピカソは作品の前でポーズするローゼンベルグのポートレートを1915年に描いた。それは展覧会のイントロダクションとなる小さなスペースで展示されている。

画商にとどまらずメセナでもあろうとするレオンスが扱う作品は、弟で同じく画商のポール(1881~1959年)が扱う作品に比べてより前衛すぎでとっつきにくさがあったと言われる。1928年、レオンスはパリ16区のロンシャン通り75番地のアパルトマンの寝室、子ども部屋、食堂、居間などのために自分が擁護する12名の画家と彫刻家にひとり1室の割り当てで作品を依頼した。実際に彼と家族が生活する場なので、彼はそうした作品と同時に新旧の家具も揃えて装飾芸術の新しいコンセプトをここで展開したのである。審美的マニフェストという意味合いもあったという。この展覧会では残された写真やアーカイブをもとに、失われた彼のアパルトマンを再現する形式で作品を展示。個人宅の雰囲気を会場に演出するのは、作品と同時に拡大されて壁を飾る当時のアパルトマンのモノクロ写真だ。

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左: 360㎡のアパルトマンの見取り図とアーティスト名。 右: ホールを任されたのはジョルジョ・デ・キリコ。photos: Mariko Omura

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食堂にはローゼンベルグが1918年から支えているGeorges Valmier(ジョルジュ・ヴァルミエ)に作品が依頼された。photo: Mariko Omura

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会場内、雑誌に掲載されたローゼンベルグ宅の写真が拡大して壁に。ごく短期間存在した幻のアパルトマンに来場者は誘われる。photos: Mariko Omura

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レオンス・ローゼンベルグの部屋には、Amédée Ozenfant(アメデエ・オザンファン)、Manuel Rendón Seminario(マニュエル・レンドン・セミナリオ)の作品。

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画家たちに依頼した作品も出来上がり、レオンスは1929年6月15日に11室からなる広さ360㎡のアパルトマンのお披露目パーティを行った。メセナとしての夢の実現である。展覧会の来場者もそのパーティに招かれたように、デ・キリコがこの部屋のために製作した連作『グラディエーター』がタペストリーのように壁を飾る広々としたレセプションルームから始まる展示に迎えられるのだ。タイトルにも謳われているフランシス・ピカビアが製作したのはマダム・ローゼンベルグの寝室のための連作『Transparence』、マックス・エルンストの作品は娘マドレーヌの部屋の『貝殻の花』『雪の花』......。フェルナン・レジェの連作『四季』はエントランス用に描かれたものだが、レオンスのバイオグラフィーを壁に記した展覧会の最後の部屋に展示されている。その脇の壁に記されたレオンスのバイオグラフィーによると、1929年の大恐慌のあおりを受けて、レオンスは1932年に所蔵品の一部を手放し、さらにアパルトマンを出ることになり......彼が自宅のためにオーダーし、1928〜29年に制作された作品は散逸し、いまも行方が分からない作品もあるそうだ。

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娘マドレーヌの部屋のマックス・エルンストの『貝の花』と『雪の花』。photo: Mariko Omura

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フェルナン・レジェ『四季』。photo: Mariko Omura

『Dans l'appartement  de Léonce Rosenberg. De Chirico,Ernst, Léger, Picasso....』展
会期:開催中~2024年5月19日
Musée Picasso 5, rue de Thorigny 75003 Paris
開)10:30〜18:00(火〜金) 9:00〜18:00(土、日、学童休暇中)
休)月
料金:14ユーロ
www.museepicassoparis.fr

editing: Mariko Omura

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