特別なパリ滞在、シナーブルのスイートでブルジョワ気分の宿泊を。

Paris 2024.04.26

ホテルが立ち並ぶパッサージュ、パリ9区のシテ・ベルジェール。そのうちのひとつ、Les Suites Cinabre(レ・シュイット・シナーブル)はパリに数あるホテルの中でもユニークな存在である。シナーブルというのは、もともとは2011年に生まれたネクタイなど男性のソワレのためのアクセサリーブランドで、2年前に10区からシテ・ベルジェールにブティックが移って来た。その上階にスイート2部屋のホテルが、昨年密やかにオープンしたのだ。2つの客室にはオーナーのアレクサンドル・シャプリエの愛するブラックタイの世界のアールドゥヴィーヴルが反映されている。 

宿泊客はまずはブティック内に設けられたレセプションデスクへ。チェックインが終わったら、レセプションデスクの裏手の秘密の階段を上がって客室フロアに上がる。もちろん荷物はスタッフが運んでくれるので心配無用。チェックイン後は建物の別の出入り口を利用するので、行動が制限されることなく自由だ。

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ブティックの上の2フロアが、スイート2室のホテルCinabre(シナーブル)。

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ホテルのレセプションは一階のブティックの中。photos: Mariko Omura

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世界最高のベッドで眠れる夜が待ち遠しい。

内装はブティックも含め、アレクサンドルと建築事務所Necchi Architecture Studioのコラボレーションによる。アレクサンドルによる客室のイメージは、「ビロードの部屋着でスパイシー・マルガリータを飲む」空間。バーコーナーがあり、音楽を聴くにふさわしい設備が用意されている。

特筆すべきは2スイートの寝室に彼が選んだベッド。スウェーデンのコピングという小さな村に1852年に創業されたファミリー企業のHâstens(ヘステンス)製である。ブランドのロゴに馬があしらわれているようにマットレスには馬の毛が用いられ、通気性に富み素晴らしい睡眠を約束してくれるのだ。ビヨンセやブラッド・ピットといったセレブリティが愛用する超高級品で、世界中でも使用しているホテルは僅かとか。アレクサンドルの眠りへのこだわりは寝具にも同様に。読書用枕と高さの異なる2種の枕も、掛け布団もヘスランドのベッドにふさわしい上質な品が選ばれた。このベッドで眠る機会が得られることだけでも、宿泊価値があるホテルだ。

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ヘステンス社のベッドを備えたNo.1の寝室。広さ100平米のスイートルームの宿泊料は時期によるが、特別な時期を除くと950ユーロ前後。

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ヘステンス社のベッドを備えたスイートNo.2の寝室。広さ80平米のスイートルームの宿泊料は時期によるが、特別な時期を除くと850ユーロ前後。

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スイートNo.1のふたり用の広いバスタブを備えたバスルーム。アメニティはナチュラルスキンケアのパイオニアと呼ばれるスザンヌ カウフマン、そしてサシャジュアン。ボディローションは南仏サン・レミ・ド・プロヴァンス発のCéline Escandだ。

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スイートNo.1。左: ガラス屋根の下で朝食やティータイム! 右: ダイニングキッチン。

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スイートNo.1。広いサロンはカクテルと音楽を楽しむ寛ぎの空間。

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バスタイムもふたりで過ごす。

建物の2階を占める スイートルームNo.1は100平米、3階のスイートルームNo.2は80平米の広さだ。どちらもファミリーアルバムからの写真や絵画などが飾られ、ブルジョワ家庭が所有する家に宿泊する、という感じの内装にまとめられている。枠からはみ出したタイプのブルジョワがイメージなので、かしこまった堅苦しさはない。

No.1はリビングルームの続きが、キッチン付きダイニングルーム、その脇にはガラス屋根の温室タイプのミニサロン、バスルーム、寝室という構成。No.2は驚くべきバスルームが設けられている。バスタブが空間の中央を占め、ベンチスタイルの腰掛がそれを囲んでいるのだ。船室のような雰囲気が漂う中でのおしゃべりは楽しそう。バスタイムもふたり一緒に過ごせるようにというのは、No.1の白とグリーンのタイルが魅力のバスルームにも言える。こちらのバスタブはふたり用のビッグサイズである。

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スイートNo.2。サロンと寝室の中間に位置する船室風のバスルーム。バスタブを囲むようにグリーンのベンチソファが置かれ、入浴者とおしゃべりが楽しめるユニークさ。傍にタイル張りのシャワールームがある。

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スイートNo.2。左: セルジュ・ゲンスブールがグラスを傾けていそうな80年代調のサロン。アレクサンドルが師と仰ぐクチュリエで、かつてジャン・パトゥのデザインを担当していた故ミッシェル・ゴマによるファッションデッサンが壁を飾っている。右: 天井と壁を19世紀のモチーフのファブリックが覆うサロン。

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スイートNo.2。食事ができるコーナーを備えたキッチン。

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おもてなしの精神あふれるふたつのスイート。

ソファのクッションにはシナーブルがネクタイに用いるのと同じ布を使用し、またNo.2のサロンにはピエールフレイ社のアーカイブで選んだ19世紀のデッサンを、ホテルのために新たな色で織った布で壁と天井を丸ごと覆って......アレクサンドルの布への愛とアールドヴィーヴルの情熱が活かされた内装だ。シナーブルのスイートで時間を過ごす男性には、確かに一階のブティックで販売されているドレッシングガウンが似合いそう。なお3泊以上の滞在者には、ウェルカムグッズとして英国製の布がシックな部屋履きがプレゼントされるそうだ。テキスタイルの老舗ピエールフレイの布が表紙のロゴ入りノートなども。

すぐにではないが、シナーブルのアトリエがあるロワール・エ・シェール県にシャンブル・ドットスタイルのホテルを開きたいと考えているアレクサンドル。もっともその前にシテ・ベルジェールのブティックの隣に入手したスペースで期間限定でバーを開こう、というのが彼の目の前の具体的なプロジェクトだと言う。

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左: 創業者アレクサンドル・シャプリエ。シナーブルの室内着と蝶ネクタイで! 右: オリジナルのフレグランスキャンドル。ひと夜の物語を3つの香りで。グリーンの容器はPromesse du soir(宵の約束)、アンバー色はNuit de velours(ビロードの夜)、ブルーはPoint du jour(明け方)。

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ブティック内。左: ブラックタイの装いのアクセサリーブランドの第一人者がシナーブル。アメリカ人客が多いそうだ。右: ブティックのエントランスは18世紀が漂うテント風の作り。photos: Ludvic Balay

Les Suites Cinabre
14, Cité Bergère 75009 Paris
https://www.suitescinabre.com/fr

editing: Mariko Omura

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