ブルターニュから、刺繍で描く言葉とポートレート。

コロナ禍をきっかけに、暮らしを見つめ直し、自分の手でものを作り出すことに目覚めた女性たち。永続性とクオリティを大切に、優しさとポエジーをたたえた手仕事の安らぎが、パリジェンヌの心をとらえている。

Aude Herrard
オード・エラール

故郷のパリを離れ、家族とブルターニュに移住。静かな暮らしから作品が生まれる。

ポートレートと言葉で描く女性へのオマージュ。

白い長方形の布の片隅に小さく縫い取られた女性の後ろ姿や、描きかけのようなポートレート。「まず自分を愛して」「あなたは特別」の言葉。オード・エラールの作品には、見る者の心に小さな灯りをともすような温かさがある。昔から縫い物が好きで、学校が休みの日には祖母と一緒に刺繍をするのが常だった。ミディネットというぬいぐるみブランドを立ち上げたこともある。「都会を離れ、ミシンの音もなく静かでゆっくり、シンプルなもの」を作りたくて、2018年、パリから田舎暮らしに転じた。彼女の刺繍はランニングステッチとバックステッチの2種類だけ。「黒はきついイメージ」だから、糸はマリンブルーにしている、というのも彼女らしい。

オードの作品には、余白にも表情がある。刺繍にごく薄いプリント布を組み合わせることも。「L'Assise en Culotte No20」65ユーロ

シンプルな2種類のステッチ。縫い目の長さが表現方法のひとつ。

作品の仕上げに使う重石も年代物。

マッチ箱に入った刺繍の言葉。ちっぽけな箱が気持ちのこもったオブジェに。左は「Bonnenuit」、右は「One」。各28ユーロ

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＊「フィガロジャポン」2025年5月号より抜粋

●1ユーロ＝約156円（2025年3月現在）
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