空の上で味わうワイン時間。JALファーストクラスをフィガロワインクラブで体験!

FIGARO Wine Club

旅の楽しみは、デスティネーションだけではない。離陸を待つラウンジでのひととき、機内でのウェルカムの一杯、目移りしそうなワインリスト、そんな時間から始まっている。「ワインで巡る、空の旅」と題し、旅の豊かさの頂点ともいえる、JALファーストクラスのワインを体験するという特別なイベントを、フィガロワインクラブで開催した。


テーブルクロスはJALの「鶴丸」をイメージした赤い折り鶴がモチーフ。四隅の一角に折り鶴の頭を思わせる折り返しのディテールが施されている。デザインを手がけたのはnendo。

卓上には機内で実際に使われているテーブルクロスや食器やカトラリー。2026年6月11日に開催された本イベントは、JALファーストクラスのワインに加え、フードの一部を体験できるという趣向。いつにも増して応募が殺到し、エアラインの上級クラスへの関心の高さが伺える。

現役客室乗務員の天保裕希子(右)とフィガロワインクラブでもワインに合うレシピを紹介する平野由希子(左)。いずれもソムリエ資格を保有。

この日のナビゲーターは、日本航空の客室乗務員である天保裕希子と、料理家・ソムリエとして活躍する平野由希子。平野はJALのワインアドバイザーを務める大越基裕と共著『和つまみ』を手がけた縁もあり、天保とのトークはワインから料理、旅、そして機内サービスの裏側へと広がっていった。

シャンパーニュでの乾杯からスタート。この日選ばれたのは「シャルル・エドシック ブラン・デ・ミレネール 2014」。上質なシャルドネ100%から造られるブラン・ド・ブランである。ファーストクラスでは常時3種類のシャンパーニュが用意されるが、「このキュヴェを選ぶ方はシャンパーニュ通の方という印象があります」と天保。口にした平野も「細やかな泡、熟成による奥行き、長い余韻が、最初の一杯にふさわしい華やかさですね」とコメント。
続いて提供されたのは、ココ・ファーム・ワイナリーの「甲州 F.O.S. 2023(日本・栃木)」。主に山梨県産となる甲州を果皮とともに醸したオレンジワインで、柑橘を思わせる香りと穏やかな渋み、そして日本ワインらしい繊細さがある。天保によると、海外の乗客に日本ワインを紹介すると興味を示す人が多く、機内で飲んだことをきっかけにワイナリーを訪れる人もいるという。

料理とのペアリングでさらに花開く、ワインの味わい。

チーズプレート(手前)とパンのセレクション(左)、帆立うすだきとフレーバーバター(奥)。

チーズセレクションは100%国産で、この日はアトリエ・ド・フロマージュのブルーチーズと、六甲山牧場のセミハードチーズ「神戸チーズ グラン」が用意された。「日本の翼として、海外の乗客にも日本の職人技や食のテロワールを伝えたい」(天保)。さらに6月のファーストクラスでも提供中の柿安の「帆立うすだき」に加え、パンは小麦粉とライ麦粉をおよそ半々で配合したミッシュブロートと、山形県産だだちゃ豆を練り込んだフォカッチャの2種。そして、それらに合わせるために平野がこの日のために考案したのが、「四万十すじ青のりのフレーバーバター」だ。

JALファーストクラスではフランスのAOPバターが供されるが、この日は特別に平野オリジナルのバターを提供。

平野のフレーバーバターは、国産カルピスバターをベースに、四万十のすじ青のり、アンチョビ、ニンニクを合わせたもの。すじ青のりは香り高く、海藻ならではのミネラル感がワインとの橋渡しになる。「今日のワインなら、どれにも合うと思います」と平野。実際、シャンパーニュの塩味、甲州の穏やかな渋み、白ワインの厚み、赤ワインの果実味まで、青のりとアンチョビの旨味が不思議なほど自然に受け止めていた。

白ワインは、M.シャプティエの「エルミタージュ シャンタルエット」。ローヌを代表する銘醸地エルミタージュの白品種マルサンヌから造られ、豊かな果実味とふくよかなコクを備える。上空では地上と味覚の感じ方が変わるため、こうした厚みのある白ワインは魅力が伝わりやすいと天保。平野は甲殻類やクリームソース、チーズ、バターなど、リッチな食材との相性を挙げた。この日のフレーバーバターともよく合い、ミッシュブロートにつけると白ワインの丸みがより引き立つ。
「シャトー・ラグランジュ 2020」はカベルネ・ソーヴィニヨン主体。ファーストクラスのワインリストでは2018ヴィンテージだが、この日は2020を提供。

赤ワインは、ボルドー・サン=ジュリアンの名門「シャトー・ラグランジュ」。JALファーストクラスのワインリストには2018年が掲載されているが、この日は入手状況の都合から2020年が提供された。若さはありつつも、グラスの中で温度が上がるにつれ、黒系果実の香りとしなやかなタンニンが現れる。天保は、機内では「カンテサンス」監修のビーフフィレステーキと合わせると喜ばれると紹介。平野は赤身のマグロやカツオ、バルサミコやブラックオリーブを使ったソースとの相性にも触れた。

空でワインを飲むと、味わいは変わる?

JALのファーストクラスのワインリストは、月ごと、路線ごとに変わる。アメリカ路線ではカリフォルニア、ヨーロッパ路線ではフランスを中心とした欧州の銘柄を取り入れるなど、行き先や機内食との相性を考えながら構成されるという。平野は「ワインリストを読む楽しみがある。飲む前から旅が始まっている」と話す。ラウンジで、あるいは搭乗前にワインリストを眺め、機内で何を飲むかを考える。その時間も、空の旅の楽しみの一部なのだ。

さらに機内では、地上とは味覚の感じ方が変わる。気圧や乾燥の影響で甘味や塩味が鈍くなる一方、酸味は比較的落ちにくいため、相対的に酸が際立って感じられることがある。だからこそ、上空でも輪郭を失わず、果実味や旨味、ふくよかさを備えたワインが選ばれる。この日のエルミタージュの白や甲州 F.O.S.も、そうした機内環境を見越したセレクトとして捉えると興味深い。平野の「機内ではトマトジュースがおいしく感じられる」というエピソードに、天保も頷いていた。

機内ではソムリエナイフを使用できないため、JALでは安全に抜栓できるワインオープナーを使用。機内サービスで使われるグローバルのワインオープナー「ラクリス」の使い方を紹介。

サービス面にも、機内ならではの工夫がある。上空では気圧の関係でコルクが飛びやすいため、シャンパーニュの開栓には細心の注意が必要となる。またワインは、ラベルが水に濡れないよう袋に入れて冷やし、注ぐ際にはボトルをきれいに見せることも意識しているという。最近はボトルやサーヴの様子を撮影する乗客も多い。銘柄を選ぶだけでなく、どの状態で、どのように届けるかまでが、JALファーストクラスのワイン体験なのである。

旅先でのワインの楽しみ方を語る平野。料理家ならではの視点から、土地の食とワインを自由に合わせる楽しさを伝えた。

ワインとともに、次の旅へ出かけませんか?

会の後半では、夏に楽しみたいワインや旅先でのワイン体験にも話が及んだ。天保は、暑い季節にはドイツのリースリングなど、きりっと冷やして楽しめるワインを挙げた。平野は台湾の食堂へワインを持ち込み、現地の料理と合わせるという旅の話も披露した。旅先で何を飲むかを考えることも、旅そのものを豊かにする。

JALファーストクラスのサービスや機内での味わい方に耳を傾ける参加者たち。セミナーで使用したグラスはすべてグローバルからレンタル。パーティシーンやセミナー、イベントなどの強い味方だ。

「こうやってお話をしていると、旅に行きたくなりますね」と平野。天保も「このひとときが、次の旅や新しいワインとの出会いにつながれば」と締めくくった。ファーストクラスは、誰もが気軽に乗れるものではない。けれど、機内での一杯を少し意識して選んだり、食事との相性を考えたり、旅先の料理に合わせて一本を選んだりすることなら、次の旅からでも楽しめる。空の上で何を飲むか。そんな小さな楽しみがひとつ増えるだけで、旅が待ち遠しくなるはず。

  • photography: Aya Kawachi
  • text: Hiromi Tani