韓国・ソウルで陶芸や茶道を体験。知的好奇心をくすぐるアドレス4選。

Lifestyle

流行の新陳代謝が早いソウル。新店をめぐっては一日2万歩超え!という濃縮スケジュールもいいけれど、 “伝統文化と向き合う体験”を差し込むこともおすすめしたい。時の流れは緩まり、旅の深みは倍増。フィガロエディターが実際に行って感動した、4つの体験型スポットをレポート。


【白磁陶芸】ONDO STUDIO

オンド スタジオ

静かな路地に佇む一軒家が目的地。扉を開けると、木製家具の温度感と、窓から差し込む自然光、落ち着いた音楽に出迎えられ、頭の回転数がすっと落ちる。

ここで体験するのは、ろくろを使った陶芸。1〜2名の少人数クラスで、2作品を制作できるという。

消費される時間ではなく、ゆっくりと作り上げる時間を共有したい、という思いでスタジオを始めたという。

さっそく工程を習いながら、回転する白土にそっと手を添える。が、これが思った以上に難しい。力を入れすぎると、ぐにゃり。慎重になりすぎると、形が決まらない。苦戦していたところ、オーナーが一言。「完成度は重視しなくていいですよ。作品より、作る過程を楽しむことを大切に。陶芸を学ぶ場ではなく、ご自身のペースで集中し、息抜きしていただくことが一番なんです」。

たしかに、回る土と向き合ううちに、不思議なくらい集中力が深まってくる。呼吸が落ち着くと、土もしだいに素直になってくる。

「土は、手の動きや感情を映し出す素材」と教えてもらったように、自分のコンディションを土に見透かされている感覚だ。

ONDO STUDIOでは、白磁や月壺などの韓国陶器に宿る、淡白で静かな美しさを大切にしている。華やかな装飾や過剰な釉薬で仕上げるのではなく、土そのものの物性や、自然に現れる表情を活かすことを重視しているという。

韓国の白磁は器自体が主張しすぎず、使う人の日常や季節を静かに引き立てる。それゆえ、“引き算の美学”とも言われる。

出来上がった器は、完璧じゃないが、歪んだ輪郭や手の跡が妙に愛おしい。きっとソウルを離れたあとも、日常のテーブルに並ぶたびに、この時の感覚を思い出すだろう。旅の記憶に、自分らしさを残せた気がして嬉しくなった。

ONDO STUDIO
オンド スタジオ

서울시 종로구 북촌로 5나길 114
114, Bukchon-ro 5-gil, Jongno-gu, Seoul
010-4709-5139
予約制
https://blog.naver.com/ondo_studio
@ondo_studio
*予約は上記のNAVERブログのコメントおよびInstagramのDMから

【韓国料理】 O’ngo Food Communications

オンゴ フード コミュニケーションズ

ビビンバも、チゲも、気づけば家で何度も作っている。でも、どうしても本場っぽさを再現できない。その答え合わせをしに訪れたのが、韓国料理教室の「O’ngo Food」。築およそ100年の韓屋をモダンにリノベートした空間で、誰かの家に招かれたようなアットホームな雰囲気が漂う。

クラスは最大8名までの少人数制で、所要時間は約2時間程度。

始めは、韓国の食文化の紹介から。「キムチや味噌などの発酵文化は、オンドル(床暖房)を持つ韓屋の住環境と結びついている」とか「テーブル一面におかずが出てくるのは、宮廷料理の文化の流れから」など、目からウロコな知識がたくさん!キムチを豪快に切れる韓国包丁や、黒い土鍋“トゥッペギ”など、韓国の調理道具を手に取るのも面白い。

シェフによるデモンストレーションで手順を習ったあとは、いよいよ料理スタート。ビビンバやチャプチェ、プルコギなど、韓国グルメの王道レシピが用意されているが、王道と侮るなかれ、「細かい所作や香りの立たせ方が大事!」という基礎に気付かされる。

本場で作って気づいたのは、韓国料理はすべての素材の輪郭がきちんと際立っていてこそおいしい!ということ。

料理をしているうちに、参加者同士の会話も自然と弾み始め、気づけばホームパーティのような空気に。完成後は、みんなで一緒にランチタイム。食卓を囲みながら、韓国の食習慣や、ローカル馴染みの店の話までおよび、会話が広がっていくのも楽しかった。

日本で再現しきれなかった味の正体を、少し掴めた気がした!

O’ngo Food Communications
オンゴ フード コミュニケーションズ

서울특별시 종로구 북촌로 137-11
137-11 Bukchon-ro, Jongno-gu, Seoul
02-3446-1607
予約制
https://ongofood.com
@ongofoodkorea
*予約は上記ホームページの申し込みフォームから

【調香】 Muhwawon

ムファウォン

「韓国には古くから、香を焚いたり、香り袋を持ち歩いたりしながら、自分や空間を香りで表現する文化があります。でも現代では海外発の香水が広まり、韓国独自の香りは少しずつ忘れられつつありますね」。そう語るオーナーの問題意識から生まれたのが、こちらの調香体験ができる工房。

Muhwawonという名前は、霧・花・庭園という意味。昌徳宮の秘苑(ビウォン)に霧が立ち込めていく様子が、香水を吹きかけた瞬間のように見えたという、オーナー自身のストーリーに由来している。
韓国伝統建築で見られる、韓紙と木組みで作られた窓を採用したインテリア。BGMを微かに流す個別のヘッドフォンなど、プライベート感を大切にした設計だ。

ワークショップはまず、参加者の香りの好みや調香経験を、専門調香師がヒアリングするところから始まる。1対1のガイドが必要か、それとも自分主体で進められそうかを見極めながら、その人に合わせて難易度を調整していく。

次に、目の前に並ぶ48種類の香料を、ひとつずつ試香。最初は「好き」「苦手」くらいの感覚だが、嗅いでいくうちに、自分がどんなムードに惹かれるのかが見えてくる。静かな寺院っぽさ。雨上がりの湿った土。韓紙の乾いた柔らかさ。森の奥みたいな杉の香り…。

6〜9種の香料を少量ずつブレンドしながら、1次、2次、3次テストを繰り返し、香りの流れや調和、重さのバランスを確認。「これはトップノートとして軽さを出せます」「これは全体に奥行きを作ります」といったアドバイスを受けながら、自分のイメージに合わせてフォーミュラを組んでいく。

山艾(サンヨモギ)、杉、水墨、寺院、韓紙と、香料の名前もユニーク。
ボトルに充填し、ラベルを仕上げれば完成。作った香りに名前を付ければ、特別感もひとしお。

ほんの数滴変えるだけで、印象はガラリと変化する。そんな気づきがいっぱいの、香りの構造を理解できる機会となった。帰国後ボトルを開けると、ソウルの景色が広がった。ノスタルジックなのに現代の空気にも馴染む、いつまでも大切にしたい香りだった。

Muhwawon
ムファウォン

서울특별시 종로구 栗谷路 6길 23, 3층
3rd Floor, 23, 6-gil, Yulgok-ro, Jongno-gu, Seoul
010-3078-1815
営)12:00~22:00 ※ワークショップは予約制
https://www.muhwawon.com
@muhwawon
*予約は上記ホームページの申し込みフォームから

【韓国茶礼】 SanSuHwa Tea House

山水和

近年ソウルでは、韓国伝統茶を味わえるカフェやティーサロンが増加中。その中でここを選んだ理由は、お茶を飲むだけでなく、韓国の茶道「茶礼(チャレ)」はもちろん、茶文化そのものに触れられるという噂を聞きつけたから。

扉を開けると、木と韓紙が使われたミニマルなインテリアが出迎える。緑豊かな中庭から差し込む光も心地よい。クラシックとモダンの両片を、洗練されたセンスによって編集されたような空間だ。

大きな棚には、熟練の職人から若手作家の作品までが、ギャラリーのように美しく並ぶ。

ここで体験するのは、「ティー・エクスペリエンス」という名のワークショップ。茶葉の産地や生産者、季節による味わいや香り、余韻の違いについて、まずは教えてもらうことに。時代や地方、また各家庭によって少しずつ異なる…といった話にどんどん引き込まれていく。

ここで扱う茶葉の種類は幅広く、ヨモギ茶、クコ茶、韓国薬膳茶など、韓国の自然や風土につながるお茶はぜひ試したいところ。

すべての茶葉を、オーナーが直接生産者のもとに足を運び、厳選しているそう。

続いて、茶器の違いについて聞いてみた。すると、「このお茶なら、口が広い器の方が香りが立ちやすいです」「こちらは、厚みのある茶器の方が味に丸みが出ます」と、茶葉と器の相性を教えてもらい、まさに目からウロコ!

そして、いよいよお茶を淹れる。湯を注ぐスピードや香りの感じ方など、指先まで美しいお点前を習いながら進めていく。湯の温度が少し変わるだけで、香りや味わいが驚くほど変化するのも新鮮な発見だった。
気づけば、お気に入りの茶葉や茶器をあれこれ手に取り、そのまま購入。お土産にぴったりなミニサイズの茶葉包みも見つけて、大満足の午後となった。

「飲み方の正解を堅苦しく教えるのではなく、ご自身の感覚で味わうことを大切にしたい」と語ってくれた。
ワークショップは不定期開催。旅行のタイミングと合わなければ、お茶を飲みに行くだけでも、スタッフが淹れ方を教えてくれるというからご安心を。お茶と一緒に楽しめるワークショップや展示も随時開催。

SanSuHwa Tea House
山水和

서울 용산구 한남대로 20길 21-14
21-14 Hannam-daero 20-gil, Yongsan-gu, Seoul
02-749-3138
営)12:00〜19:00 ※ワークショップ、ティーテーブルともに予約制
休)日、月
https://sansuhwa.com/
@sansuhwatea
*予約は上記ホームページの申し込みフォームから

madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
ファッション誌・旅行誌・ライフスタイル誌の編集職に携わったのち、現在はフィガロのエディターに。学生時代、フランス・オスゴールとビアリッツでサーフィンと美食、おしゃれにどっぷり浸った日々が忘れられず、「老後にもう一度!」と甘い夢を抱きながら、今日も都会の荒波に翻弄される。