手巻き寿司をパリに広めた「ハンド」、4軒目はよりラグジュアリーに進化。
いまから4年前、左岸のセーヴル通りにパリ初の手巻き寿司のレストランHANDO(ハンド)が開店した。パリっ子をすぐさま魅了し、口コミで店の情報が広がり、この新しい和食をぜひ試してみたいというパリっ子たちが作る行列の長さは大したものだった。その後、パリ市内には手巻き寿司のレストランが他にも生まれ、また既存の和食店ではメニューに手巻き寿司をのせるようになり……。その間、素材の鮮度の良さ、海苔のクオリティの高さという手巻き寿司の基本を大切にするハンドは他の追従を許さず。ヴァンドーム広場近くに特大カウンターを設置した2号店、マレ地区にテイスティングブースを設けた3号店を開き、そして5月にはシャンゼリゼ大通りからすぐの場所に4軒目となるフラッグシップをオープンした。150平米とスペースもアップ!

最初の3軒も和のテイストを見事に溶け込ませたモダンでミニマルなデザインが快適な空間だが、この4軒目ではハンド・プロジェクトに関わる4名の一人であるアドリアン・アルブーが心を傾ける美意識の体現化を見ることができる。室内建築を任されたのはフリードマン・ヴェルサーチェという、業界で引っ張りだこの人気女性デュオだ。手を意味するハンド、それにアドリアンが敬愛する建築家安藤忠雄の名前を掛け合わせて生まれた店名がHANDO。彼が構想した内装は安藤忠雄のコンクリート建築のアプローチにヒントを得たというのも、もっともだろう。
グループが会話と食事を楽しめるボックスシートが設けられた空間で印象的なのは、彫刻家ジャンギヨーム・マティオーによる木製の書棚風の幾何学模様の棚だ。そこに並ぶ木の彫刻はサムライをイメージしたものだという。長方形をなすカウンターの上の天井には、河原シンスケによる手描きのフレスコ画。銀箔をまとい、そこに遊ぶのは彼のアイコニックな存在であるウサギたちだ。うさぎたちはカウンターで開くメニューにも、その姿を現している。アドリアンはこのようにアートキュレーションも担当した。カウンターに並ぶスツールの背もたれの背面にあしらわれたモチーフ様々なヴィンテージの着物布もまた、彼が日本で掘り出したというようにいままで以上に八面六臂の大活躍。ハンドローラーたちが中で忙しく立ち働くカウンターに、Laboがハンドのためにクリエイトしたパヒュームキャンドルが焚かれている。寿司店には珍しい光景だが、西洋ヒノキの淡いウッディな香りは、食事の邪魔をすることなくこの空間にぴったりとマッチ。



メニュー内容も、一号店からのエグゼクティブシェフであるチハル・タカダによりグレードアップ。前菜には他の店にはない料理も新たに登場している。和牛のたたき、トロのタルタル、トロ・カツ、ヒラメの天ぷらのサラダ……握りには神戸牛A5が加わって、と食欲をますます刺激するメニューである。最近は日本での料理傾向に精通しているパリっ子も少なくない。そんな彼らを満足させるかのようにメニューには“握り備長炭”コーナーもあれば、前菜には備長炭枝豆も。
ハンドロールのメニューはこれまで通り、アラカルト(1本8ユーロ〜)そして3〜6本のセットメニュー(19〜55ユーロ)。イレギュラーなフォルムで深みのある色彩の器は陶芸家Suzie Lapierre d’Argy studioによるもので、またグラスはバルセロナを拠点とするフランス女性Justine Ménardのオリジナル、というように器にもこだわりが込められている。
シャンゼリゼ大通りという観光客で賑わう場所柄、もうじきランチとディナーの間の休業時間がなくなりオールデイ・ダイニングとなる予定だという。シャンゼリゼ店ではひとり客もいれば、女性二人、父と息子などとタイプ様々な客がカウンターを囲んでいる。パリにすっかり定着した日本生まれの手巻き寿司。創設者たちは今後ハンドをどう進化させてゆくのだろうか。次の章を楽しみに待とう。

住所:
63, rue Pierre Charron 75008 Paris
営:
12:00~15:30、19:30~22:30(月~木)、12:00~17:00、19:30~22:30(金、日)、12:00~17:00、19:30~24:00(土)
休:
無休