ヴィクトリア・ベッカムから20年、スポーツ選手の恋人や妻たちが再び脚光を浴びる理由。

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スポーツ選手の妻や恋人たちは、あらゆるスポーツ大会でパートナーを応援し、彼女たちが手本とする存在は、あの有名なヴィクトリア・ベッカムだ…。F1グランプリからNFL、全米オープンまで、“WAGs(ワイブズ・アンド・ガールフレンズ)”が再びスタンドに戻り、彼女たちの人気が復活している。

サッカーワールドカップ後、息子のロメオとクルスを連れてイギリスに戻ったヴィクトリア&デビッド・ベッカム。
(2006年7月2日、エセックス)photography: Rousseau Stefan/PA Photos/ABACA

2006年、ドイツで開催されたサッカーワールドカップで、彼女たちはスタジアムの観客席の最前列にいた。サポーターの中でもひときわ目立つ存在だった彼女たちは、イングランド代表の選手である恋人や夫たちを応援していた。しかし、イングランドはこの大会で優勝することはできず、準々決勝でポルトガルに敗れて大会を去ることになった。チームの敗退が見え始めると、イギリスのメディアは観客席へと目を向け、サッカー選手たちの関心を奪っていたもうひとつの存在である彼らの恋人や妻たちに注目するようになった。その中には、ヴィクトリア・ベッカム、シェリル・コール、コリーン・ルーニーらがいた。

ほどなくして、これらの女性たちは「WAGs(ワグズ)」という呼び名で呼ばれるようになった。これは「ワイブズ・アンド・ガールフレンズ」の略で「妻たちと恋人たち」を意味する。「私は2006年のサッカーワールドカップの時、スポーツジャーナリストとして働いていました。当時、イングランド代表は毎日のように私たちの新聞の一面を飾っていました。特に多かったのは、WAGsたちがショッピングをしたり、パーティを楽しんだりしている写真でした。彼女たちはとても楽しんでいたのです」と、スポーツジャーナリストであり、WAGsを題材にした小説を数多く執筆している『メール・オン・サンデー』紙のアリソン・カーヴィンは振り返る。


サッカーワールドカップ期間中、フランケン・シュタディオンの観客席で試合を見守るシェリル・コールとヴィクトリア
・ベッカム。(2006年6月15日、ニュルンベルク)photography: Humphreys Owen/PA Photos/ABACA

これらの女性たちの中で、サッカー選手たちをスタンドから声援していたうちのひとりは、すでに非常に有名だった。1999年にイングランド代表キャプテンのデビッド・ベッカムと結婚したヴィクトリア・ベッカムである。当時、元スパイス・ガールズの彼女は、メディアや一般大衆によって定義された「WAG」の条件をすでにすべて満たしていた。同様に、ガールズ・アラウドのメンバーでありイギリスで大スターだった歌手シェリル・コールも、彼女のすぐそばで頻繁に見られた存在だ。シェリルは選手アシュリー・コールの恋人であり、2006年7月15日、この大会の決勝の1週間後に結婚し、2010年9月に離婚することになる。こうしたカップル関係を超えて、WAGsを結びつけていたのはスタイルやライフスタイルそのものでもあった。ジャーナリストのアリソン・カーヴィンは次のように分析する。「彼女たちは、よく似たスタイル感覚で、非常に華やかな装いをしていました」と、アリソン・カーヴィンは分析する。「彼女たちは、この世界の華やかで、少し誇張されたイメージを体現していました。何もかもが極端だったのです。大きなハンドバッグに、顔を覆うような巨大なサングラス、ボリュームのあるヘアスタイル、そしてハイヒール。」さらに彼女はこう語る。「彼女たちは印象的でした。出身はそれぞれ違っていても、見た目はとてもよく似ていたのです。次第に彼女たちは、イングランド代表のあまり良くない成績を忘れさせる“気晴らし”の存在となり、ひとつの現象として確立していったのです。」

2026年ワールドカップが6月11日に開幕し、多くの選手の妻や恋人たちが、メキシコ、アメリカ、カナダのスタジアムの観客席に姿を見せた。2000年代初頭に一世を風靡したこの現象は、いま再び黄金時代を迎えようとしているのだろうか。ジョルジーナ・ロドリゲスとクリスティアーノ・ロナウド、テイラー・スウィフトとトラヴィス・ケルシー、アレクサンドラ・サン=ムルーとシャルル・ルクレール、そしてかつてのカップルであるシャキーラとジェラール・ピケ。スポーツ選手と交際することは、再び成功への鍵となっているのだろうか。

セレブリティからバッシングの対象へ

2025年8月26日、テイラー・スウィフトは、アメリカンフットボールのスター選手でありカンザスシティ・チーフス所属のトラヴィス・ケルシーとの婚約を発表した。2023年に交際を公にしたこのロマンスは世界中のメディアを魅了し、いまやテイラー・スウィフトが歌う恋愛や失恋の楽曲と同じくらい有名な存在となっている。テイラーは、将来の夫となるトラヴィス・ケルシーの試合をほとんど欠かさず観戦している。観客席から熱い視線を集める一方で、彼女はアメリカンフットボールのファンから激しい批判も受けており、「NFLを台無しにしている」と非難されることもある。嫉妬だろうか。仕返しだろうか。それとも単なる意地の悪さだろうか。ファンたちは、人気歌手が試合のたびに姿を見せることで、競技そのもの以上に注目を集めてしまうことに腹を立てているのだろうか。こうした構図は、2000年代初頭にWAGsたちが受けていた扱いを思い起こさせる。というのも、彼女たちはメディア(そして一般大衆)を魅了する一方で、軽蔑され、揶揄される存在でもあったからだ。服装や派手な暮らしぶりは、たびたび批判の対象となった。その結果、BBCが『イギリス中から批判される存在になった女性たち』と表現したように、彼女たちは大きな注目を集める一方で、格好の批判の的にもなっていた。

WAGs 2.0

テイラー・スウィフトとトラヴィス・ケルシーの婚約発表の数週間前には、ジョルジーナ・ロドリゲスが左手の薬指にはめた巨大なダイヤモンドの指輪を披露し、クリスティアーノ・ロナウドとの婚約を明らかにしていた。ふたりは2016年、マドリードで開催されたジャスティン・ビーバーのコンサートで交際を公にした。当時は一般にはほとんど知られていなかったジョルジーナだが、その後すぐにサッカー界で最も有名なWAGのひとりとなった。彼女はポルトガル代表のスター選手であるロナウドの試合が行われるたびに、国を問わず応援に駆けつける。また、インフルエンサー、リアリティ番組のスターとしての活動と、5人の子どもたちの母親、そして継母としての生活を両立させている。Netflixシリーズ「フォーミュラ1:栄光のグランプリ」によって一大ブームとなったF1界にも、独自のWAGsが存在する。アレクサンドラ・サン=ムルーは2023年5月から、今年2月に夫となったシャルル・ルクレールを応援するため、すべてのF1グランプリに姿を見せている。彼女は毎回サーキットで大きな注目を集め、その洗練されたファッションでも話題となっている。

WAGsであることは、もはやメディアが作り上げた受け身の肩書きではない。いまや多くの女性たちが、自らその立場をひとつのアイデンティティとして発信しており、SNSがその流れを大きく後押ししている。パパラッチから逃れながらショッピングやナイトクラブに出かける姿が話題になっていた時代は終わった。現在は、スポーツ選手の妻や恋人たちがSNSを通じて積極的に自らの生活や考えを発信し、自分自身のイメージをコントロールしている。アレクサンドラ・サン・ムルーも最近、「選手のパートナー」として見られることについて言及している。「夫がいなければ、私はごく普通の女性です。普通の趣味があって、普通の関心事や情熱を持ち、ただ良い人間であろうとするだけです」と、彼女はインスタグラムで語っていた。さらに、「私も彼の妻である以上、そう呼ばれる存在のひとりですし、それは決して悪いことではないと思っています。誰もが歌手や医師、俳優、アスリートになる運命にあるわけではありませんし、だからといってその人の価値が下がるわけでもありません。むしろ、人としてどんな人間であるか、他人にどう接するか、そして自分の時間を何に使うか、そうしたことこそが、その人の価値を決めるのだと思います。考えさせられることですよね」と続けた。

WAGsのファンコミュニティも誕生しており、とりわけF1界ではその人気が際立っている。ピエール・ガスリーの恋人であるキカ・ゴメス、ランド・ノリスと交際中のマルガリーダ・コルセイロ、そして2021年1月からマックス・フェルスタッペンのパートナーであるケリー・ピケらは、サーキットを訪れるたびにファンの注目を集め、その一挙手一投足を追われる存在となっている。

@alexandrasaiintmleux

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変わった立場

WAGブームの黄金期から20年が経ち、彼女たちを取り巻く状況は大きく変化した。いまや彼女たちは単なる「○○の妻」「○○の恋人」ではなく、パートナーの仕事とは独立して自らビジネスを立ち上げ、インフルエンサーとしての地位を確立するケースも少なくない。インターネットやSNSのおかげで、10年、20年前には難しかったかもしれない方法で、自分自身の成功を築ける人がますます増えています」と、アリソン・カーヴィンは説明する。彼女によると、スポーツ選手の妻や恋人たちは、その立場をキャリアのスタート地点や飛躍のきっかけとして活用しているという。「『WAGs』という言葉の意味も変わりました。彼女たちは有名アスリートと関係を持ちながらも、その影に埋もれることなく、自らの存在感を発揮しているのです」と付け加えた。

この見方は、2016年に仏テレビ局M6で放送されたドキュメンタリー番組「Femmes de footballeurs, la vraie vie des WAGs(サッカー選手の妻たち、WAGsの本当の人生)」を手がけたエマニュエル・ル・ベール監督も認めている。「彼女たちはWAGsという立場を利用して、さらに活躍の場を広げることができます。しかし、それ自体は決して新しい現象ではありません。SNSが急速に普及するなかで、WAGという肩書きを通じて知名度を高めることは、有名になるためのひとつの戦略にすぎないのです」と監督は説明する。彼によれば、WAGという立場は、すでに成功を収めている女性たちにとっても、新たなステージへ進むきっかけになる。かつてのヴィクトリア・ベッカム、そして現在のテイラー・スウィフトがその好例だ。

さらに、SNSの発展によって、スポーツ選手の妻や恋人たちは、パートナーとは異なる形でスポーツ界の一員として存在感を高めるようになった。これは2000年代初頭には必ずしも見られなかった現象だ.。2024年、テニス選手トミー・ポールの恋人でコンテンツクリエイターのペイジ・ロレンツェは、米経済誌「フォーブス」の取材に対し、「全米オープン期間中、私はおそらくトミーと同じくらい多くのブランド契約を抱えています」と語っている。こうした“インフルエンサーWAGs”は、スポーツに関心のない層にもアプローチできる存在となっており、その点がブランドやスポンサーからますます注目を集めている理由のひとつだ。「フォーブス」によると、「ペイジは、自身のフォロワー(インスタグラムで100万人、編集部注)の約80%が女性であり、テニスファンはわずか10~15%程度だと考えている」という。一方で、SNSにおけるWAG人気の高まりは、女性アスリートにとって複雑な側面もある。スポンサー獲得競争が激しくなるなか、女性選手たちは以前にも増して契約を得るのが難しくなっているという。オーストラリアのテニス選手ダリア・サビルは、米オンラインメディア「VOX」の記事の中で次のように語っている。「ブランド契約を獲得しているのは、私たち女子テニス選手ではありません。実際には、汗を流してプレーする私たち選手ではなく、よりブランドが求めるイメージに合うテニス界のWAGsなのです。」

性差別と憧れのはざまで

WAGという存在は多くの人々の関心を集めている一方で、この言葉自体が性差別的な側面を持つとの指摘もある。ジャーナリストのキラ・クロクランは2010年に英紙『ガーディアン』へ寄稿した記事のなかで、すでにその問題点を指摘していた。「サッカー選手の妻や恋人を指す頭字語である『WAG』は、女性蔑視的な呼び名です。彼女たちを夫や恋人を支える脇役として位置づけるものであり、まるで付属品や添え物のように扱っているのです」と彼女は記している。アリソン・カーヴィンも、この見方に同意する。「この言葉が否定的な響きを持つのは明らかです。というのも、さまざまな女性たちをひとまとめにして、『働かなくても生活できる』『夫に養われているだけの女性たち』というカテゴリーに押し込めてしまうからです。それはとても不公平なことです」と語った。

確かにWAGという言葉には性差別的な側面があるものの、エマニュエル・ル・ベール監督は、こうした女性たちがある種のフェミニズムを体現しているとも考えている。彼が評価するのは、とりわけ「有名な夫の影にいながらも、自分自身の存在を確立しようとする強さ」だ。「彼女たちは多くのハンディキャップを抱えながらも懸命に努力しています。そして、夫のキャリアや人生を支える欠かせない存在でもあるのです」と、監督は語る。さらに、「私が出会ったのは、芯の強い女性たちでした。当時よく言われていたような、『中身のない女性』などでは決してありませんでした」と振り返った。

アリソン・カーヴィンによれば、当時WAGsが注目を集めた背景には、多くの人がその立場を“自分にも手が届くかもしれない成功の形”として捉えていたことがあるという。「お金や名声を一気に手に入れられる可能性を感じさせる存在でした。その魅力は非常に大きかったのです。WAGsをけなしたいわけではありませんが、世間の目には彼女たちがそうした存在として映るようになったのです。選手たちよりも、むしろ彼女たちの生活のほうが身近で親しみやすく感じられました。そこから彼女たちへの関心が高まり、多くの面でアスリート本人たち以上に有名な存在になっていったのです」と、ジャーナリストは語る。そして、この現象が2025年になって再び人々を魅了しているのは、世間が改めてそれをひとつの現象として認識するようになったからだ。さまざまなトレンドや社会現象を可視化するSNSの発展により、ネットユーザーたちは、自分たちを魅了するスポーツ選手の妻や恋人たちを改めてひとつのカテゴリーとして認識し、その存在に再び注目するようになった。

しかし、アリソン・カーヴィンによれば、「WAGs」という言葉はすでに時代遅れだという。「2000年代初頭には、この言葉が広まったのも理解できます。なぜなら、当時はそれが新しい現象だったからです。」かつては「お金持ちになりたければサッカー選手と結婚しなさい」といった言葉をよく耳にしたものだが、そうした価値観はいまや大きく変化している。確かに、WAGsであることが新たなチャンスにつながったり、すでに築いているキャリアをさらに発展させたりすることはある。しかし、現代の「WAGs 2.0」たちは、アスリートである夫や恋人の陰に隠れながら、ただスタンドから応援するだけの存在でいることを望んではいない。

From madameFIGARO.fr

※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

  • text: Leonie Dutrievoz (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi