マッシと「Alla Salute(乾杯)!」。ピエモンテの食卓を囲む、フィガロワインクラブの一夜。

FIGARO Wine Club

2026年8月20日、フィガロワインクラブがイータリー銀座店で開催したのは、ピエモンテ出身のフードエッセイスト、マッシミリアーノ・スガイをホストに迎えたイベント。ワインと郷土の味を囲み、食べて、飲んで、おしゃべり。32名のゲストがイタリアのホームパーティのような雰囲気のなか、ピエモンテの食文化を楽しんだ。

イータリー銀座店のラ・ピアッツェッタに集まった参加者たち。マッシを囲み、ピエモンテの食とワインを楽しむ夜がスタート。

「イタリアのホームパーティに来たつもりで!」

「Buonasera(ボナセーラ、こんばんは)! 今日は私のホームパーティに来たつもりで、食べて、飲んで、おしゃべりしながら楽しんでください!」。ギンザ シックス6階、イータリー銀座店のラ・ピアッツェッタで、フィガロワインクラブのイベント「イタリアワインとおつまみで乾杯! フードエッセイスト、マッシと味わうピエモンテの夜。」がスタート。バールの開放的な雰囲気も、この夜にぴったりだ。

この日楽しんだ4種のワインと、8月に刊行されたマッシの新著『イタリア紳士、うまいと叫ぶ』(亜紀書房)。ワインはロゼのスプマンテからガヴィ、バルベーラ・ダルバ、甘口のアスティ。

ホストは、フィガロワインクラブの連載「マッシのアモーレ♡イタリアワイン」でもおなじみのフードエッセイスト、マッシミリアーノ・スガイ(通称マッシ)。イタリアきっての美食の地、ピエモンテで生まれ育った生粋のピエモンテーゼである。ピエモンテはイタリア北西部、アルプス山脈の麓に広がる州。その名も「山の麓」を意味し、ワインやトリュフ、チーズなど豊かな食文化で知られる。マッシが生まれ育ったのはカザーレ・モンフェッラート。この夜もワインや料理、家族の食卓へと話は広がり、強烈なモンフェッラート愛が随所にあふれた。

フードエッセイストのマッシミリアーノ・スガイ(右)。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学大学院文学部日本語学科で学び、2007年に来日。現在は石川県金沢市を拠点に、イタリアと日本の食文化について発信。2026年8月に新著『イタリア紳士、うまいと叫ぶ』を上梓。進行はフィガロワインクラブ「副部長(愛称)」、イタリアをこよなく愛する金井洋介(左)。

Alla salute! ロゼのスプマンテで乾杯。

乾杯は、セラフィニ・エ・ヴィドット「ボッリチーナ・ロゼ」。プロシュート・コット、パンチェッタ・コッタ、26カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノ D.O.P.、グリッシーニを添えて。

まずはロゼのスプマンテで「Alla salute!(乾杯!)」。サルーミとチーズの盛り合わせが運ばれると、各テーブルでは自己紹介が始まり、マッシも席を巡って会話の輪へ。「ピエモンテのイメージは?」「パンナコッタがピエモンテ発祥だって知ってた?」。グラスが進むにつれ、あちこちから笑い声が上がる。

「イタリアには20の国がある」ピエモンテ人の強烈な地元愛。

故郷ピエモンテについて語るマッシ。とりわけ生まれ育ったモンフェッラートへの愛は深く、郷土のワインや料理、家族の食卓へと話が及ぶ。

“ピエモンテと地元愛”をテーマにトークが始まる。「イタリアという国は建国160年ほどの若い国。20州ありますが、感覚としては20の国があるようなもの」とマッシ。同じピエモンテ州の中ですら、30kmも離れれば料理や食文化も変わるという。世界的に名高いバローロやバルバレスコはランゲ地方のワイン。一方、マッシの故郷はモンフェッラートだ。同じ州の中でも土地ごとの個性と郷土意識は強く、なかでもマッシのモンフェッラート愛は格別。実家のワインセラーは、30本あったら29本がピエモンテ産。残りの1本は「たまたま友達にもらった、どこのだかよくわからないもの」とのコメントに、会場が笑いの渦に。

チーム対抗の3択クイズ。テーブルごとに選んだ答えのカードを掲げるたびに、歓声や笑い声が上がった。

マッシ考案のピエモンテにまつわるクイズも用意され、宴は一層盛り上がる。最後の問題は、食とワインにまつわるイタリアの格言について。「1. グラスの中に真実がある 2. 仲間と酒を飲まない者は、泥棒かスパイだ 3. 水は人間を分けるが、ワインは人を結びつける。さて、このうち実際に存在する格言はどれ?」
答えはひとつとは限らないとあって、各テーブルで相談し合う声が飛び交う。正解は、なんと全部! 食べること、飲むこと、そして誰かと食卓を囲むことを大切にするイタリアらしいフレーズに、会場は大いに沸いた。

Buon appetito! 食卓の話から見えてくる、イタリアの暮らし。

フォンタナフレッダの「ガヴィ」に合わせた、ペストロッソのブルスケッタと、ツナのトンナートソースを添えたゆで卵。

白ワインのフォンタナフレッダ「ガヴィ」は、レモンや青リンゴ、白い花を思わせる香りに、ドライでフレッシュな味わい。合わせたのは、ペストロッソのブルスケッタと、ツナを使ったソース(トンナート)を添えたゆで卵。「Buon appetito!(どうぞ召し上がれ!)」。料理を口に運びながら、話題はピエモンテの家庭の食卓へ。

トンナートソースも、マッシが子どもの頃から親しんできた味。ピエモンテにいる母親とはいまでも毎週のようにテレビ電話で話し、気づくと3時間、4時間経っていることも珍しくないそう。食べること、しゃべること、家族や友人と同じ時間を過ごすこと。それらすべてが切り離せないのが、イタリアの食卓なのだろう。

ワインと料理に宿る、土地の時間。

3本目はフォンタナフレッダの「バルベーラ・ダルバ」。花や果実の豊かな香り、ふくよかでドライ、なめらかな味わいのワイン。

続いてグラスに注がれたのは、フォンタナフレッダの「バルベーラ・ダルバ」。ブルスケッタやトンナートソースのゆで卵をつまみながら、このふくよかな赤ワインを楽しむ。

マッシが語るのは、土地ごとの食文化や、季節に寄り添う暮らし。ピエモンテでは、土地や季節を大切にし、その時々にあるものを食べながら暮らすことがごく自然なことだという。そうした日々の積み重ねが、土地ごとに異なるワインや、季節ごとの料理の豊かさにつながっている。

この日のペアリングのハイライトは、フォンタナフレッダの甘口スプマンテ「アスティ」と、カザーレ・モンフェッラート生まれの郷土菓子クルミリ。

締めくくりに登場したのは、「アスティ」とクルミリ。クルミリは、カザーレ・モンフェッラートで1878年に生まれた、サクッとした食感のビスコッティの一種。町の象徴ともいえる郷土菓子で、マッシが子どもの頃から親しんできた味だ。

フォンタナフレッダの「アスティ」は、モスカート・ビアンコから造るピエモンテを代表する甘口スプマンテ。華やかな花や蜂蜜を思わせる香りと、摘みたてのブドウを思わせるみずみずしい甘さが魅力。

クルミリのバターの風味と素朴な甘みに、アスティの華やかな香りとやさしい甘さ、軽やかな泡。モンフェッラートにも深くゆかりのあるふたつを口にしたマッシから、「懐かしい。なんか泣きそう」と思わず言葉がこぼれた。香りや味わい、食感は、その土地で過ごした時間や人の記憶を呼び起こす。故郷の味に触れたマッシの表情から、その様子が見てとれた。

マッシと参加者、みんなで作ったピエモンテの夜。

ワインと料理を囲み、マッシの話に笑い、クイズでは一緒に頭を悩ませる。終始、賑やかな声の絶えないイベントに。

ワインを飲み、料理を味わい、テーブルごとに相談し合い、マッシの話に笑い、ときに大きく頷く。もともとマッシの本を手にしていた人も多く、イタリア好き、マッシ好きが集まったこの夜。モンフェッラートやピエモンテの食文化に触れ、この地への親しみをさらに深めた人も多かったようだ。

イベントの最後にはサイン会も。新著『イタリア紳士、うまいと叫ぶ』(亜紀書房)は食をこよなく愛するイタリア人の日常や価値観を、マッシならではの視点で綴る。

最後に、マッシが会場を見渡しながらひと言。
「みんなこれでピエモンテファンになってくれたよね? 東京にこんなに多くのピエモンテファンが増えて、今夜は本当にうれしい!」。笑いと拍手に包まれながら、ピエモンテの夜はお開きに。Grazie, マッシ! 

  • photography: Mari Hamada text: Hiromi Tani