セレブたちのウェディングは「秘密主義」が魅力的に? SNSで騒がれてしまう現代の「結婚観」。
永遠の愛を誓い合う結婚は、若者たちの憧れであり、安心感を与える存在でもある。一方、セレブたちは結婚式をあえて神秘のベールに包みつつも、SNSが沸き立つ程度には、その舞台裏を絶妙な加減で公開している。

いま、もっとも注目を集める存在、それは「結婚」だ。ハリウッドはもちろん、スポーツ界や音楽界でも、婚約は成功の象徴となっている。業界の専門家の中には、これを「新たな感情的ラグジュアリー(エモーショナル・ラグジュアリー)」と表現する人もいる。長年にわたり、自立した生き方や束縛のない恋愛、移り変わる恋愛模様がもてはやされてきた一方で、いまセレブ界では結婚が再び特別な価値を持つものとして見直されている。
デュア・リパとカラム・ターナー、ゼンデイヤとトム・ホランド、シャルル・ルクレールとアレクサンドラ・サン・ムルー、クリスティアーノ・ロナウドとジョージナ・ロドリゲス、テイラー・スウィフトとトラヴィス・ケルシー。いまをときめく若きスターカップルや婚約中のセレブたちは、より穏やかで自然体なイメージを打ち出している。安定したパートナーシップもまた、彼らのストーリーを語るうえで欠かせない要素となり、「2026年の結婚は、ごく個人的な選択」という新たな価値観を映し出している。そして、まさにそのことこそが、結婚を新しい世代にとっていっそう魅力的なものにしている。
その証拠に、マッチングアプリ「Happn」の調査によると、18~25歳では3人に1人以上が結婚を「人生最大の夢」と考えており、この割合は36歳以上の独身者より10ポイント高いという。さらに、最近の複数の調査でも同様の傾向が明らかになっている。結婚はもはや社会から求められる義務でも、単なる華やかなイベントでもない。 不安定な社会・経済情勢のなかで、感情のつながりや体験の共有を重視しながら、ふたりで人生を築いていくというライフプランを映し出すものであり、心の拠りどころとなる価値として捉えられるようになっている。
あえて見せないコミュニケーション
インスタグラムやTikTok、Snapchatといったビジュアル中心のSNSが全盛となったいま、結婚式はイベント性やストーリーテリングを重視した演出を取り入れるようになった。披露宴会場の選定からテーブルコーディネート、ブライズメイドのドレス、さらには振り付けまで考え抜かれたファーストダンスに至るまで、あらゆるディテールが「シェアされること」「いいね!を集めること」「話題になること」を前提に作り込まれている。
セレブの結婚式で、その象徴的な例として挙げられるのが、2021年に行われたパリス・ヒルトンのウェディングだ。3日間にわたる豪華な祝宴に加え、複数回のお色直しを披露し、その舞台裏はリアリティ番組「パリス・イン・ラブ」として配信されるなど、結婚式そのものが一大エンターテインメントとなった。どの瞬間も、美しい一枚を生み出すために綿密に演出されているかのようだった。
しかし、いまの新世代のセレブリティたちは、むしろ控えめな情報発信を選ぶようになっている。結婚式はひそかに準備され、招待客はごく限られた人だけ。写真も少しずつ、小出しに、しかも挙式から数日経ってから公開されることが多い。あらゆる出来事が常にさらされる何もかもが可視化される時代だからこそ、本当のエレガンスとは、あえていくつかの秘密を残しておくことなのかもしれない。いや、それどころか、結婚そのものを公にしないことさえある。
6月16日、結婚をめぐる憶測が何カ月も続いた末、トム・ホランドはついに、自身とゼンデイヤが人目を避けたごくプライベートな形で、実際に結婚していたことを明かした。そんなふたりらしい結婚式を選んだのは、モナコ出身のF1ドライバー、シャルル・ルクレールとアート系インフルエンサーのアレクサンドラ・サン・ムルーも同じだった。モナコ公国を背景に、クラシックフェラーリ、モダンなプリンセス風のウェディングドレス、そしていつもふたりに寄り添う愛犬。ふたりは、カメラの目から離れた場所で静かに愛を誓い、その後、厳選した数枚の写真だけを公開するというスタイルを選んだ。ここにひとつのパラドックスがある。セレブの結婚式は、かつてないほどプライベートなものになっている一方で、かつてないほど人々の憧れを集めてもいるのだ。それはおそらく、画像や動画、リアルタイムの情報、そして“映える”写真であふれる現代において、こうした大切に守られた結婚式が、「プライバシーを守ること」という新たなラグジュアリーを物語っているからなのだろう。
飾らないプロポーズ
近年のセレブたちのプロポーズで印象的なのは、まるでインスタグラムに投稿するためのおとぎ話のような演出とは無縁だということだ。壮大なロケーションも、SNS映えを狙ったドラマチックな演出もない。パパラッチの姿も、貸し切りのビーチもなく、そこにあるのは、人目を避けた場所で交わされる、時間が止まったかのような親密なひとときだけだ。
その好例が、クリスティアーノ・ロナウドとジョルジーナ・ロドリゲスだ。2025年8月11日、9年間の交際を経て、ロナウドは5人の子どものうち2人の母親であるジョルジーナにプロポーズした。その舞台裏について、ポルトガルのサッカー界のレジェンドであるロナウドは、イギリス人ジャーナリストのピアーズ・モーガンが司会を務めるポッドキャスト番組「Uncensored」で振り返っている。「シンプルなプロポーズだったよ。僕はそれほどロマンチックな人間じゃないんだ。もちろんロマンチックな一面はあるけれど、毎週のように花束を持って帰るタイプではない。僕なりのやり方でロマンチックなんだ」と、ロナウドは語った。
さらにロナウドは、思いがけず娘たちがプロポーズの大切な場面に加わることになったエピソードも明かしている。「夜中の1時ごろだった。娘たちはもう寝ていたんだ。友人がジョルジーナ(ジオ)に渡す婚約指輪を持ってきてくれて、僕がその指輪を彼女に差し出そうとしたその瞬間、ふたりの娘が部屋に入ってきて、『パパ、ママにその指輪を渡して、結婚してくださいって言うんでしょ』と言ったんだ。僕がうれしかったのは、ジオが指輪のことなんて気にしなかったことだ。彼女は『本気なの?』と聞いてきたので、僕は『もちろん。本気で君と人生を歩みたいし、結婚したいんだ』と答えた。」同じように飾らないプロポーズを選んだのが、世界で最も有名で、多くの人に愛されるカップルの一組であるトム・ホランドとゼンデイヤだ。ふたりのプロポーズは、2024年末のホリデーシーズンに、アメリカにあるゼンデイヤの実家で、家族に囲まれたプライベートな空間で行われたと伝えられている。
一方、シャルル・ルクレールは、愛犬レオに大役を託した。昨年11月、ロングヘアード・ダックスフンドのレオは、首輪に付けた迷子札に「パパが結婚してくださいって言ってるよ」というメッセージを添えて、アレクサンドラ・サン・ムルーのもとへ歩み寄ったのだ。その微笑ましい一枚はインスタグラムに投稿されると瞬く間に話題となり、インターネット上の人々の心をわしづかみにした(そして婚約指輪への関心をすっかりかき消してしまった!)。投稿からわずか40分で140万件以上の「いいね!」を集めている。
憧れをかき立てるブライダルスタイル
2020年代の結婚式における最大の変化は、おそらくここにある。愛そのものはプライベートなものになった一方で、美しさやスタイルは依然として人々の目にさらされる存在であり続けているのだ。花嫁たちは結婚式の様子を以前ほど公開しなくなり、ときには会場へのスマホの持ち込みを禁止することさえある。しかし、その中で唯一の例外となっているのがウェディングドレスだ。そのため、シチリアで行われたデュア・リパの結婚式は比較的プライベートなものだったにもかかわらず、彼女がまとったシャネルのウェディングドレスは、一大イベントさながらに披露された。手作業で刺繍された48万粒のパール、2万5000枚のフェザー、そしてシャネルと協業するアトリエの職人たちによる1100時間に及ぶ制作。このドレスは、マチュー・ブレイジーが手がけた初のオートクチュールのウェディングドレスでもある。著名な写真家のデヴィッド・シムズが撮影した、まるでファッションキャンペーンのような写真は、あらゆる角度から分析され、大きな話題となった。また、民事婚で身に着けた、帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズによる印象的なつば広帽と、スキャパレリのスカートスーツを合わせたスタイルについても、すでに専門家の間では、多くの未来の花嫁が従来のベールをやめ、この帽子に着想を得たデザインへと切り替えるのではないかとささやかれている。
テイラー・スウィフトとトラヴィス・ケルシー、まるでロイヤルウェディング
まるでテイラー・スウィフト自身の楽曲「Love Story」の世界から飛び出してきたかのような物語だ。3年間にわたる大きな注目を集めた交際と、結婚式の日取りをめぐる数か月もの憶測を経て、ポップスターとアメリカンフットボール選手はついに7月3日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた壮大なセレモニーで「誓いの言葉」を交わした。その場には、セレーナ・ゴメス、ジジ・ハディッド、ブラッドリー・クーパー、ヒュー・グラント、イーサン・ホーク、エド・シーラン、ゾーイ・クラヴィッツ、ダコタ・ジョンソンらが出席した。この出来事は、アメリカのメディアによって瞬く間に「世紀の結婚式」あるいは「ロイヤルウェディング」と称された。式は極秘性を重視して執り行われたものの、歌手のエージェントは、詳細の一部を明らかにしている。「衣装はクリスチャン・ディオールのオートクチュールによって制作されました。デザインを手がけたのはジョナサン・アンダーソンで、新郎新婦と緊密に協力しながら作り上げたものです。これは、このデザイナーが国際的なセレブリティのために手がける初のオートクチュールのウェディングドレスとなります。ふたりのシューズはクリスチャン・ルブタンによる特注品で、新婦はカルティエのジュエリーを身に着けていました」と説明した。しかし、同世代で最も影響力を持つスター(インスタグラムのフォロワー数は2億7300万人)は、単にアメリカ的なスケールの大きさとフランス流のラグジュアリーを融合させた結婚式を挙げただけではない。彼女は、結婚というものをポップカルチャーの中心へと再び押し戻す役割も果たしたのだ。
From madameFIGARO.fr
※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
- text: Clémence Pouget (madame.lefigaro.fr)
- translation: Hanae Yamaguchi