ひと粒の華やぎがスタイルを激変させる!知られざる「ジュエリーウォッチ」の魅力を解剖。
Tシャツ&デニムのシンプルな装いを格上げする絶対的なウォッチ、つまり「一生もの」を探し、語り尽くすこの企画。ハンサムなムードを醸し出すケース径34mm以上の“大きめフェイス”の魅力に痺れた前回とは真逆に、今回はドレスアップできる“ジュエリーウォッチ”にフォーカス。フェミニンなアイテムは自分ぽくないと思っていたエディターTが驚愕した、「ギャップ」を生み出せるウォッチの奥深き世界に迫る!

【スタイリスト】MASAMI TANAKA
ハンサムと大人のフェミニンの程よいバランスを得意とするスタイリスト。フィガロジャポンで長年ウォッチ&ジュエリーの新作記事に携わっており、造詣が深い。長く愛されるベーシックなデザインが好きで、自身の愛用ウォッチは「タンク ルイ カルティエ」。
【若手編集】IZUMI
今年32歳。「若手」と呼ぶには少々無理が出てきたものの、本人はまだその肩書に縋っている。厄年を迎え、厄払いの一環として時計の購入を検討中。時計については、「定番モデルなら知っている」程度の完全なる初心者。骨格は自己診断でナチュラル。骨張って肉厚な手元に、運命の、そして一生の一本は見つかるのか(懐事情は無視)。
【編集・時計担当】TERUMI
ファッションとカルチャーを中心にメディア編集者歴24年。ウォッチ&ジュエリーを担当するも、マイウォッチ選びは彷徨い続けている状態。ドレスウォッチも気になれば、メンズライクな大きめフェイスも好き。大きな買い物だからこそ失敗したくない……もう誰か自分に似合うものを指定してくれ、と内心思っている。
ウォッチを着けるのか? ジュエリーを着けるのか?
若手エディターIZUMI(以下、I):前回の“大きめフェイス”が強さを足すウォッチなら、ジュエリーライクなウォッチは、女性らしさを足すイメージですかね。
スタイリストMASAMI(以下、M):女性らしさ、というよりは“光”であり、“動き”だと思う。Tシャツとデニムって、ざっくりいうと動きの出にくいフラットな服でしょ? そこにメタルの輝きだったり、チェーンの揺れだったりが加わると、抜群にエレガントに手元が生きてくるんだよね。
エディター・時計担当TERUMI(以下、T):確かに! フェイスのデザインも煌めきがあったり、華奢なブレスレットがあったり、チェーンタイプがあったり。ドレスアップができて、女性らしさが引き立つ魅力ももちろんありますよね。
I:ウォッチというよりジュエリーを選ぶ感覚に近いんですかね。
M:でも、たくさんみていると、それだけじゃない部分がある気がするんだよね。あと、手持ちのリングとかブレスレットとどう合わせようかな、って考える時間も含めて楽しい。もちろん重ねづけすると傷も付くことはあるけれど、それを“劣化”じゃなくて“自分の時間が刻まれた跡”って思えたら、もっと気楽に楽しめる気がする。
I:その考え方、すごく素敵ですね。
【01】優美に輝く、ティファニー「ハードウェア」
T:最近、撮影で目にしてすごく記憶に残っているのがティファニー「ハードウェア」コレクションのウォッチ。ファセット仕上げのサファイヤ クリスタルガラスのフェイスとリンクが大胆なデザイン。ただ、腕に乗せると上品で、そのギャップに驚いたの。
I:ウォッチを着けているというより、大きなチェーンの間に文字盤が隠れている感じ。
M:そこがいいんだよね。「ウォッチを見せます!」と主張は強くない。でも手元を見ると、存在感が際立つ。

T:実際に着けると印象は意外と柔らかいんだよね。ケースの丸みだったり、透明度の高い文字盤だったり。
I:“硬そう”な響きを感じて実際見ていたら、意外と甘い。このギャップ尽くしのデザインが、いいですね。
M:多面体にカットされていて、氷のような質感というか。まさにジュエリーをつけている感覚。
I:もはや“ウォッチ”というより“作品”ですね。これは「可愛いから着けています」と言い切れるウォッチ!
【02】ブルガリ「セルペンティ」で、エレガンスと技術力を体感する
I:ジュエリーライクと言っても、探っていくと幅広いタイプがあることに気が付きますね。華奢なブレスレットタイプだけはない。
M:そうなの。だから次に見てほしいのが、エレガンスの中に力強さが宿っている一本。
T:ブルガリの「セルペンティ トゥボガス スタッズ カプセル」です。言わずと知れた「セルペンティ」は、聞くだけでもパッと思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか。
I:あります。もう、“憧れ”としてインプットされている感じ。

M:やっぱり、このぐるっと巻き付くブレスレットは唯一無二であり特別だよね。手首に着けると一気に華やぐ。
T:「セルペンティ」は、ブルガリを象徴するアイコンのひとつ。蛇をモチーフにしたコレクションなんだけど、強さだけでなく、女性らしさも際立つ。着用した感想はとにかく肌に吸い付くようで技術力に驚かされます。デザインも含めて“官能的”と言っていいのかしら……。
I:付けた人しかわからないその感触、気になります。
M:私、最初は正直「自分には似合わないかも」と思っていたのに、着けてみたら格好よく馴染んで本当に驚いた(笑)。でも、クールなだけで終わらないバランスが不思議。
T:以前、別の企画でも手に取ったことがあって。その時のスタイリストさんも腕につけてみたら、「え!いつものスタイルが新しく見える!」と驚いていて、だいぶ話が盛り上がったな。ちなみになめらかに巻き付くコイル状のブレス「トゥボガス」という名前は、戦後イタリアで復興の象徴とされたガスパイプに由来する、という話もあるんだとか。
I:強目に見えてセクシーでもあり、その実、復興の象徴もあるなんて、素敵なストーリー。
T:これをつけてる人は、自立している女性というキャラクターが見えてくるね。カジュアルにマティーニとか飲んでそう(笑)。
◆知っておきたい時計ワード
【セルペンティ】 イタリア語で「蛇」の意。1940年代からブルガリが手がける象徴的コレクション。
【トゥボガス】 しなやかに動く、コイル状(バネ状)のブレスレット構造。
【03】品性あるミックス&マッチを完成させるシャネル「プルミエール」
M:ジュエリーライクと言うと、私はシャネルの「プルミエール」は欠かせないですよ。
T:だから今回取り上げたいのは、新作の「プルミエール アイコニック チェーン ゴールデンブラウン」。「プルミエール」は時計というより“シャネルらしさ”そのものを着ける感覚なんだよね。

I:やっぱりこのブレスレットが魅力的……。きゅん。
M:この時計は、可愛いだけじゃ終わらないんだよね。パリのヴァンドーム広場や名香「シャネル N°5」のボトルキャップ、シャネルを象徴するモチーフを反映し、哲学を盛り込んだデザイン。ブランドの背景まで一緒に着けている感じ。
T:新作は、黒ではなくて、チェーンにゴールデンブラウンのレザーコードを編み込んだモデル。黒ほど強くなく、柔らかい印象。実は、初めてこのウォッチを見た時には「いまの私にはゴールデンブラウンなんて、エレガントすぎるかな?」と、尻込みしたのだけど、試着させてもらったらあまりにも馴染んでびっくり!

I:まさに、カジュアルなTシャツスタイルを格上げしてくれましたよね。
M:つけた姿を見て、私たちも「いいね!」と盛り上がった(笑)。
T:普段、カジュアルなスタイルの人ほどそのギャップが良い気もする。当然、ジャケットやドレスでも装いの相乗効果を発揮するし。
I:ジュエリーだと、構えちゃう時があるけれど、ジュエリーらしさをはらんだ時計なら自然に身に着けられそうですね。
M:だから私は、リングもブレスレットも少し控えめにするかな。この時計だけで十分完成するから。
◆知っておきたい時計ワード
【プルミエール】 フランス語で「最初」を意味し、シャネルが1987年に発表した初の腕時計コレクション。
【ヴァンドーム広場】 パリにあるシャネル ファイン ジュエリー本店が構える宝飾の聖地、八角形の広場。プルミエールのケース形状の由来のひとつ。
【04】華奢なオーデマ ピゲ。23mmの「ロイヤル オーク ミニ」
I:今回は、見事に3者3様にブレスレットに特徴がありましたね。
T:だから最後にひとつだけ、番外編として紹介したい時計があるんだよね。
M:これ、面白いよね。「ロイヤル オーク」だけど、まったく違う表情。プチッとしたサイズがカワチイのに、きちんと“らしさ”が発揮されている。
T:オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク ミニ クォーツ」。23mmまで小さくしたモデルで「ロイヤル オークって大きい時計」というイメージがある人ほど驚くと思う。

I:本当だ。前回、ビッグフェイス編で紹介したのと同じ「ロイヤル オーク」だけど、雰囲気が全然違いますね。
M:でも「ロイヤル オーク」の八角形のベゼルも、そのブレスレットも魅力はそのまま。アイコン性はそのままなのに、ぐっとジュエリー寄りになった感じがする!
T:そうなんだよね。もともと“道具”として格好いい時計だったものが、ミニサイズに変わっただけでここまで表情が変わるのは面白い。
I:私はこれ、細〜いリングのようなスキンジュエリーと合わせたくなります。

M:いいね。華奢なリングを何本か重ねてもいいし、逆にウォッチだけ主役でも成立する。小さいのにしっかり存在感があるって、すごく贅沢。
T:「ジュエリーライクな時計」というテーマの締めくくりとしても、ぴったりな一本だと思う。
特別な日のドレスアップではなく「いま」を計るジュエリーライクなウォッチ
I:ジュエリーウォッチと言っても、幅広いデザインのタイプがあっていろんな表情があるんですね。
M:どれを選ぶかで、見せたい自分が変わってくるよね。だから、「重ねづけしたほうがいい」とか、「時計だけで見せたほうがいい」とか、正解を決めなくていいんだと思う。リングをたくさん着けたい日もあるし、時計だけで十分な日もある。その日の服や気分に合わせて変えられるくらいが、いちばん自然なのかもしれないね。
T:私的には、着けて見た時にまったく印象が変わる「ギャップNo.1」のウォッチだと思いました。ジュエリーライク=ドレスアップするウォッチ、フェミニンさを求めているウォッチだと完全に思っていたけど、実際はTシャツスタイルに馴染む馴染む。「将来持ちたいウォッチ」というものから、「いま」の自分をきちんと大人にしてくれるウォッチなんだなと見る目が変わった。
I:私も、最初は“時計を選ぶ”つもりで来たのに、気づいたら“どういう自分になりたいか”を考えていました(笑)。
M:ウォッチは、そういうところが面白いんだよね。時間を見るための道具でもあるけど、最後はその人の気分とか、その日のスタイルとか、そういうものまで映してくれる。
T:だからこそ、スペックや価格だけじゃなくて、「なんだか惹かれる」という感覚も大事にしたいよね。毎日身に着けて、毎日目に入るものだからいちばん長く付き合う理由って、案外そこだったりする。
I:今回はウォッチを選ぶというより、自分の現在地が浮き彫りになる話だった気がします。
M:想定外の締め(笑)。でも、本当にそうだと思う!
オーデマ ピゲ ジャパン
03-6830-0000
https://www.audemarspiguet.com/jp
シャネル
0120-525-195(フリーダイヤル)
https://www.chanel.com/jp/
ティファニー
03-6895-4519
https://www.tiffany.co.jp/
ブルガリ
03-6362-0100
https://www.bulgari.com/ja-jp/
- photography: Miki Takahira
- text: Izumi Akamatsu