髙橋海人の頭の中へ。
半年前、フィガロジャポンで「おもしろいことをたくさん考えている」と予告してくれた言葉のとおり、自身の創造の世界を具現化した初の個展を開催している髙橋海人。オリジナルのキャラクター「セロル」を主役にした展覧会への想いとともに、髙橋との対話を通じて“頭の中”をちょっぴり覗いてみたい。

2024年閏の日。セロルは、突如この世に現れた。「家の近くにこんなの落ちてたんだけど」と、卵のイラストが髙橋海人のSNSに登場。10日後、ふわふわした身体の生き物「セロル」は生まれた。そうしてこの世に誕生したセロルの個展が、現在東京を皮切りに開催中だ。髙橋海人ワールド全開のちょっぴり不思議な対話は、セロルの誕生背景を聞くことから始まった。
「帰り道で卵を拾ったけどどうしたらいいかな?ってみんなに相談していたら、そのうちに生まれて。セロリが好きだから名前はセロルにして。アイスを食べたら急に水色になったり、僕の仕事現場やライブにもついてきたり、留守番中に部屋が荒らされていたり、わりと手がかかる存在です」
わからないことがまだまだあるので一気に聞いてみよう。
ーセロルは髙橋さんのお友だち?
「いや、よくわからないです。一緒にいるけど、何なのかはわからない。ペットというわけでもないし」
ー家族でもない?
「家族なのかもわからないです」
ーセロルの気持ちは読める?
「どうしたいのかな?って察するぐらいで、行動もずっと読めないです」
ーセロルに相談することもある?
「どちらかというと『世話が焼けるぜ』という存在。でも自分が頑張った日は温かく迎え入れてくれたり、同じ気持ちでいてくれるのは感じます」
ー出会った日からセロルは成長した?
「大きさは変わっていないと思う。心は成長してるかも。人間の気持ちを酌んでくれるようになったりとか」
ーそうすると手がかからなくなる?
「どうなんですかね。そうなったら結構さびしいですけど……」
この不思議な世界に没入できる『不思議なセロル展』は、企画、演出、造形、グッズなど制作のすべてに髙橋が主体的に関わった初個展。アトリエにこもって制作したジオラマや造形の展示、来場者が見て触れてワクワクできる仕掛けがいっぱいだ。
「セロルは2年間、僕のインスタグラムを見てくれている方たちとじっくりコトコト一緒に育ててきたので、親目線で、授業参観のような感覚で来てくれたらうれしいです。『やっと会えた』って喜んでもらえると思います」
セロルを通じて見えてくる髙橋海人の頭の中。

さて、ここからは“創作の舞台裏”の話。セロルが生まれたきっかけは?
「自分の想像の中だけにいて相談したりする相手“イマジナリーフレンド”ってあるじゃないですか。それが可視化されて、現実にいたら楽しいし救われることもあるかな、と思って。相談したり辛い時やうれしい時に一緒に泣いてくれたり。セロルは僕だけのものじゃなくて、みんなの中に『ひとり1セロル』って思っているんです」
セロルが瞳に涙を溜めているのも、感情を受け止めてくれる存在だからなのだろうか。
「人間の人生って赤ちゃんとして泣くことから始まるじゃないですか。悲しい時だけじゃなくて、うれしい時も笑いすぎて泣く時もあって、泣くことは人間に大切なことだと思うんです。でも大人になると、簡単に泣けなくなってしまう。セロルはずっと泣いてくれていて、人間のいろんな感情を背負ってくれるのかもしれないです」
美術造形会社のSAMPO Inc.、キービジュアルのアートディレクターでありアニメーターのmoi.らクリエイターと組んで迎えたパルコでの個展。髙橋は展示作品の制作のため、時間をつくっては山梨県のアトリエに足を運び、周囲が舌を巻くほどの集中力で創作していたという。

「みんなで文化祭のように作っていく作業が本当に楽しくて。特に、粘土で立体物を作るのは今回初めてで、夢中になりました。今後、木を彫ったり、モニュメントとかも作ってみたい。近所の公園とかで作りたいぐらいです」
目をキラキラさせて話す髙橋は根っからのクリエイターだ。グッズも自ら考案して細部にまでこだわった。インタビュー中、目の前に置かれた試作品を手に取り“髙橋がグッズを優しい眼差しと手つきで愛でる”ひとときが何度も訪れた。絶対作りたかったというのが、もふもふ感が気持ちいいキーホルダー。
「バッグとか鍵とか生活でずっと一緒にいる大切なものにつけてセロルとの日常を体感してもらいたいな、って」
永瀬廉さんにプレゼントするなら?
「廉、普段バッグを持たないんですよ。だから何がいいんだろう……シールだったら貼ってくれそうかな」
自分が生んだアート作品は、愛してやまなくなる。
絵を描くだけでなく、洋服のデザインにも携わる髙橋。自身のアート作品は家に飾ったりしているのだろうか。
「はい、“飾る系男子”です。いままで作ったキャラクターも部屋に飾っています。自分が生んだものを愛してやまなくなっちゃう性質なので」
髙橋はぽつりぽつり、ゆっくりと言葉を紡ぐのだが、どんな質問に対しても言語化したい思考が頭の中にある、という印象。頭の中でずっといろんなことを考えているんですね、と問うと、「そうかもしれないです。子どもの頃から人間関係とかいろいろ考えたり。変わり者っぽく見られていたから、どうしたらみんなと仲良くなれるんだろう、嫌われるのって怖いことだな、社会になじまなきゃ、とか考えすぎる時期もありました。いまは『俺もう唯一無二でしょ』って思えてます」
そう思えてきたのはいつ頃から?
「うーん。意外と最近なのかも。お芝居や歌、ダンス……あとは歌詞を自分で作ったり、自由に表現できることや、セロルのような存在に自分が救われたり。表現の場があるから、負の感情も楽しさに昇華できるし、自分の人生にとってものを作ったり表現したり、それを誰かに届けることは本当に大事なことで、ものを作らずにはいられない人生なんだと思います」
セロルや表現について語る言葉の端々から、豊かな創造性の一端を垣間見せてもらえたよう。でもその全貌は、深いベールに包まれたままだ。
「ファンの方からも頭の中を見てみたいと言ってもらえるんですけど、それもうれしくて。これからも自分がピュアに表現を楽しんでいけたらいいな、と思います」
*「フィガロジャポン」2026年11月号より抜粋。
本誌で、Web未掲載カットもチェックして。
『不思議なセロル展 created by 髙橋海人』
会場:PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)
会期:開催中~9月28日
入場料:¥2,200
巡回展:
心斎橋10月17日~11月8日、
名古屋11月20日~12月6日、
福岡12月26日~2027年1月11日、
仙台1月16日~31日、
札幌2月6日~21日。
「セロルの不思議な世界に没入してもらえるよう、映像も立体もあり、香りや光にもこだわって、見て触れて楽しめる、いろんな体感ができる空間にしました。ワクワクしながら、セロルを身近に感じてもらえると思います」(髙橋)
Kaito Takahashi
1999年4月3日生まれ、神奈川県出身。2018年、King & Princeのメンバーとしてデビュー。幼少期から培ったダンススキルに定評がある。楽曲の作詞・作曲を担当することもあるほか、俳優、アーティストとしての活動も目覚ましく、映画『君の顔では泣けない』『おーい、応為』(ともに2025年)などに出演。『不思議なセロル展』は初個展。
エトロ ジャパン
03-3406-2655
https://www.etro.com
- photography: Takanori Okuwaki(UM)
- styling: Chihiro Tan(YKP)
- hair & makeup: Yuuki Deguchi
- text: Naho Sasaki