スタイリスト城素穂さん宅へ。ダリアやコスモスを絵画のようにドラマチックに【花々の飾り方。vol.4】

Lifestyle

花を飾るのは、誕生日やホームパーティの日だけではない。「特別な予定はないけれど、花を飾ろう」。そんな小さな選択が、いつもの景色を少しだけ違って見せてくれる。パリでの暮らしを経て感性を育んだフローリスト・岡本美穂さんが、アールドゥヴィーヴルのある人の家を訪ね、その住まいだからこそ映える花の飾り方を提案する。

第4回は、スタイリスト・城素穂さんのご自宅へ。引っ越したばかりだという家は、自身が幼少期を過ごしたご両親のヴィンテージマンションを受け継いだものだ。室内に並ぶのは、長年集めてきた古道具たち。若いころ、一年ほどベルギーのアントワープのカフェで働いていた経験のある城さん。定期的に開催される蚤の市など、ヨーロッパならではの古いものを取り入れる姿勢が、今も彼女の美意識に影響を与えている。

古い味わいのある板を重ねた自作のキッチンカウンター。水回りも使いやすいようにリノベーションをしたそう。

「以前の家は窓が多く、光が回る明るい空間でした。ですがこの家は光が一方向から射すので、陰影がはっきりとしています。住み始めてから、その様子がすごく印象的で、今まで持っていた家具の見え方も変わったように思います」(城さん)

光と影の空間に、絵画のような秋の花を

城さんの住まいを訪れた岡本さんもまた、光と影が生み出す劇的な雰囲気に目を留めた。

土器を彷彿とさせる小前洋子さんの花器。絵になる造形をしている

「果物が飾られたテーブルや画家のアトリエのような味わいのある家具は、どこかシネマティック。そこで今回は、古いヨーロッパの油絵に描かれた花々をイメージしました。季節の実ものや枝もの、秋に盛りを迎えるダリアなどを選び、空間とともに一枚の絵のように見える花の飾り方を意識しています」(岡本さん)

ダリアと鈴バラを大胆に。器から溢れる姿がフォトジェニック

今回の主役のひとつとなったのが、秋に美しい姿を見せるダリア。岡本さんは一種類に揃えるのではなく、花びらの尖ったものや丸みを帯びたものなど、異なる表情のダリアを組み合わせた。そこへ鈴バラや紅すももなどの実ものや枝ものを加え、器から溢れ出すように伸びやかなラインを描いていく。

「絵画に描かれている花は、花器から今にもこぼれ落ちそうなほど生命力を感じさせます。器の中だけで形を整えようとせず、横へ伸びる枝や自然に傾いた茎を生かす。そうすることで、花だけでなく周囲の空間まで含めて、一枚の絵を眺めているかのような景色をつくることができます」(岡本さん)

溢れるような形をつくるポイントは、花を生ける前の「選び方」にある。

「まっすぐな茎ばかりを集めて、後から流れをつくろうとすると難しいんです。最初から横へ伸びていたり、動きのある枝やしなやかな茎のものを選ぶこと。ダリアも同じ品種だけではなく、形の異なるものを組み合わせると、より豊かな表情が生まれます」(岡本さん)

花を無理に動かすのではなく、それぞれがもともと持っている線を生かしながら、器の外へと広げていく。花々の個性を重ねることで、空間に絵画のような動きが生まれる。

素朴なコスモスに、ケイトウを垂らしてドラマをつくる

秋を代表する花、コスモスも今回の花材のひとつ。野に咲く素朴な印象の強い花だからこそ、岡本さんは一か所にまとめるのではなく、高低差でリズムを作りながら生けた。

「コスモスは、風に揺れている姿がとてもきれいな花。茎もしなやかなので、まっすぐ立たせようとせず、柔らかな動きを生かしました」(岡本さん)

そこへ組み合わせたのが、個性的なフォルムを持つしだれケイトウだ。器の縁から溢れるように垂らすことで、コスモスだけでは素朴になりがちな景色に、大胆な動きを加えている。さらに、果実を思わせる鮮やかな色は、秋らしい艶やかな表情を添えている。

「風に揺れるようなコスモスの軽やかな線と、器から大胆に垂れ下がるケイトウ。異なるフォルムや色を重ねることで、野に咲く花の自然な美しさを残しながら、室内の景色にドラマが生まれます」

「今回メインで使ったダリアは、決して日持ちのする花ではありません。でも、咲いている瞬間がとても印象的。少しずつ花びらが傷んだり、実がしぼんだり、最後には落ちていったり。過程まで含めて美しい花だと思います」(岡本さん)

満開の瞬間だけを完成と考えず、少しずつ朽ちていく姿まで楽しむ。花が見せる時間の移ろいまで含めてひとつの景色として味わう姿は、古い建物や家具に刻まれた時間の痕跡を受け止めながら暮らす、城さんの住まいによく似合っていた。

Profile
岡本美穂/Miho Okamoto

フローリスト。独立後、パリで1年間生活。神宮前2丁目にアトリエを構えて来年で10年。花や植物が持つ独特の美しさ、個性を引き出す表現を得意とし、フラワーギフトの制作から展示会の装花、ディスプレイ、雑誌や広告撮影のスタイリングなどを手がける。
Instagram @mihoflowers

 

城素穂/Motoho Joh

大学卒業後、スタイリストchizuのアシスタントを経て独立。4年ほど、食まわりのスタイリストとして活動後、1年間、ベルギー・アントワープのレストランへ遊学。帰国後、再びスタイリストとして活動。出産を経て、現在は仕事に復帰。

  • photography: Eri Kawamura
  • Edit & Text: Megumi Saito