10代たちの憧れだったタチアナ・パティッツの魅力。

Culture 2023.01.16

1月11日に56歳の若さで病死したドイツ生まれのスーパーモデル、タチアナ・パティッツ。その華麗な歩みを写真とともに振り返る。

エルベレジェのショーに登場したタチアナ・パティッツ。photography: Getty Images

タチアナ・パティッツは、スーパーモデルの全盛期、1990年代のティーンエイジャーたちの心に刻まれた有名モデルで、いまもスーパーモデルの中で特別な存在であり続けている。アメリカ版「ヴォーグ」編集長のアナ・ウィンターは、「彼女は同世代の女性たちよりもずっと目立たず、ミステリアスで、大人っぽくて、近寄りがたく、その存在自体が魅力だった」と語っている。当時の控えめな文化が、ある種、彼女の魅力を後押ししたのかもしれない。

---fadeinpager---

2019年に亡くなったドイツのファッション写真家ピーター・リンドバーグは、1980年代に彼女を撮影し、いち早く彼女の魅力を捉えた。1990年1月、ナオミ・キャンベル、シンディ・クロフォード、リンダ・エヴァンジェリスタ、クリスティ・ターリントンらとともに90年代を写し出すという英国版「ヴォーグ」誌の依頼で、撮影が行われた。

ニューヨークの街角で5人の若きスーパーモデルたちが撮影されたモノクロ写真だ。

*That* Brogue January 1990 cover captured by Peter Lindbergh and starring Naomi Campbell, Linda Evangelista, Tatjana Patitz, Christy Turlington, and Cindy Crawford. pic.twitter.com/ltUb7uh0hF
— @PAM_BOY (@pam_boy) January 11, 2023

ヴォーグ1990年1月の表紙はピーター・リンドバーグが撮影し、ナオミ・キャンベル、リンダ・エヴァンジェリスタ、タチアナ・パティッツ、クリスティ・ターリントン、シンディ・クロフォードが登場した。

2013年、ピーター・リンドバーグは自身のキャリアにおけるお気に入りショットを振り返りながら、「ヴォーグ」に次のように語っている。「私は、80年代ルックにあったような重たい髪や完璧なメイクアップなどをすべて取り除いた、新しいルックを望んでいました。そして彼女たちがスーパーモデルになったのです。このヴォーグの表紙と同じ年に、ジョージ・マイケルが自身のミュージックビデオにこの5人のモデルたちを選び、彼女たちはヴェルサーチェのランウェイを歩きました。表紙、ジョージ・マイケルのビデオ、ヴェルサーチェのショー、その一連の流れが彼らをスターにしたのです」

---fadeinpager---

チャンスを逃さないためにパリやニューヨークに暮らすモデルが多い一方、タチアナ・パティッツは喧騒やスキャンダルから離れ、アメリカのカリフォルニアに暮らしていた。それでも、ファッションウィークのランウェイにおける彼女の存在感は損なわれなかった。シャネル、イヴ・サンローラン、ヴェルサーチェ、ヴァレンティノ、ラルフローレン、カルバン・クラインなど、多くの高級ブランドのランウェイを歩いた......。

1993年には、モデルのファビエンヌ・テルヴィング、ナオミ・キャンベル、ヘザー・ホワイト、エマ・シェーベルイらとともに、動物愛護団体PETAが立ち上げた毛皮反対キャンペーンに参加した。この撮影は、PETAとの長いコラボレーションの始まりであり、彼女がファッション業界と距離を置く第一歩となった。

「（ファッションやモデル業は）自分自分が何者であるかということではなく、自分が何をしたかということだといつも思っていました。それは私を定義するものではなかった。ここで生活して、この場所に戻ってきたことは、ある意味ほっとするようなものでした」とタチアナ・パティッツは2009年、英「ガーディアン」紙に語った。そして、カリフォルニアの自宅に戻り、19歳になる息子のジョナと一緒に田園地帯を歩き回ることが、彼女の癒やしになっている、と話していた。

---fadeinpager---