Tiffany 磯村勇斗が触れた、 ティファニーが未来へ繋ぐ金沢縁付金箔の伝統。

Culture 2023.10.19

洗練されたデザインと精巧なクラフトマンシップにより世界で愛されるジュエラー、ティファニー。2022年よりサステイナブルな取り組みの一環として日本の伝統技術である金沢縁付金箔の職人育成プログラム支援を始動。今回この伝統技術の持続的継承を目指す取り組みをナビゲートしてくれたのは、幅広い演技力で注目される俳優の磯村勇斗だ。

 

 

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市内にある本願寺金沢別院の本堂にて。内陣にはおよそ50,000枚の金箔が使われており、圧倒的な存在感を放つ。

2022年、日本上陸50周年を迎えたティファニーは、世界中で文化遺産の保存活動を行うワールド・モニュメント財団(WMF)とともに金沢市と連携し、金沢縁付金箔製造における職人育成プログラムを発足。金箔は漆器、陶器、屏風、着物、仏壇などの工芸品はもとより、木造建造物の装飾に使われており、日本文化を語るうえで欠かせない素材だ。

現在、日本製の金箔のほとんどは金沢で生産されており、なかでも伝統技法である縁付金箔製造は2020年にユネスコの無形文化遺産に登録された技法。しかし職人の数は減少の一途を辿り、後継者育成が課題となっている。そこでティファニーとWMFは金沢市と金沢金箔伝統技術保存会と提携し、文化庁や金沢職人大学など地元の協力を受けて、縁付金箔の職人育成プログラムを3年間にわたり支援する。

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(上)打ち上がった金箔を一枚ずつ竹箸で移し替える。わずかな風や静電気でも崩れてしまうため、集中力を要する作業だ。(下)武家屋敷が残る金沢の街並み。箔打ちは、前田利家をはじめ、歴代の加賀藩主らの文化奨励策によって受け継がれてきた。

最初に磯村が訪ねたのは、縁付金箔職人であり、金沢金箔伝統技術保存会会長を務める松村謙一。工房には年季の入った箔打ち機や、縁付作業の道具、箔を挟む手漉き和紙などが並んでいる。縁付金箔職人の3代目、松村は16世紀末にさかのぼる箔打ちの技法をいまに伝える数少ない職人のひとり。金槌から機械に変わっても、箔打ちは片時も休むことなく集中力を要する作業だ。「金片を和紙に挟み、何度も叩くことで熱を帯びてきます。その熱で箔が延びるんです」との説明に磯村は熱心に耳を傾ける。

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(右上)箔打ち前の20cm四方の金片は「上澄(うわずみ)」と呼ばれ、厚さはおよそ1,000 分の1mm。厚さが不均一なため、職人の目利きにより9~12片に切り分けてから箔打ちを始める。 (右下)工房に並ぶ箔打ち機。箔打紙の束を手で固定しながら、さらに一万分の1mmの厚さまで延ばしていく。昔は2人1組になって金槌で休みなく叩いていた。  (左上)竹製の枠を使って10.9cm角に切り揃える。 (左下)周囲の余分な箔は軽く息を吹きかけて落とす。落とされた金箔は食用や化粧品などに、使用済みの打紙は油取り紙にと余すところなく利用されている。
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打ち上がった金箔を竹箸に取り、光に透かして真剣に眺めている磯村。「透けるほど薄いのに艶があって、独特の輝きがありますね」

「この紙、すごく薄いですね」。
金箔を載せた和紙の束を見た磯村の問いかけに松村が「昔から“箔づくりは紙づくり”というくらい、我々箔職人にとって箔を挟む和紙が生命線なんです」と答える。厚さ1万分の1ミリという金箔の仕上がりを左右するのは箔打紙の質によるところが大きいという。箔打紙は雁皮に特殊な土を加えた手漉き和紙を稲藁の灰汁、柿渋、鶏卵を混ぜた液体に漬けて、機械で叩き、1枚ずつはがす作業を繰り返し、半年かけて完成させる。「箔打紙を作れるようになったら一人前です。ただ原料となる和紙職人が現在ひとりしかいないので、その後継者育成も急務となっています」と松村。

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繊細な集中力を要する、縁付金箔の仕上げ工程に挑戦。

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(上)「広物帳(ひろものちょう)」と呼ばれる和紙の束からピンセット状の竹箸を使い、左手に持った革板に金箔を移し替える。(下)革板に載せた金箔を竹製の枠で規定のサイズに切り揃えていく。研修生の作業を真剣な表情で見つめる磯村。

この工房で昨年から研修を始めた桶谷未緒に、縁付金箔の最終工程を見せてもらった。「学生時代は日本画をやっていたので、箔は身近な存在でした。ものづくりに関わる仕事をしたいと思い、今回の研修生制度に応募しました」と話す桶谷は、昔ながらの竹の道具を使って器用に金箔を切り揃え、和紙に移し替えていく。

「10.9cm角に切り揃えた金箔を和紙に移していきますが、この時、一回り大きいサイズの和紙が金箔を縁取っているように見えることから縁付金箔と呼ばれています」と横で松村が説明を続ける。現在は箔打紙の代わりにカーボンを塗った工業紙を使いまとめて裁断する量産型の「断切金箔」が主流だが、松村の工房では伝統的な手法を守り続けている。

わずかな風や静電気でも崩れてしまう金箔を竹箸ですくい上げ、片方の手に持った革盤に移し、竹製の枠で切り揃える。この作業に磯村が挑戦した。持ち上げた金箔を革盤に載せるところまでは順調だったが、枠で印をつけながら切り揃え、周囲の余分な箔を息を吹きかけて落とす瞬間、本体の箔がめくれてしまった。「繊細な作業ですね。これは慣れないと難しい」と磯村。しかし最後まで諦めずに修正し、箔合紙(はくあいし)に移して見事完成させた。

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伝統工芸から次世代の表現へ、職人の技を未来へ繋げたい。

磯村が次に向かったのは東山地区の安江金箔工芸館と笠市町の本願寺金沢別院。

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金箔職人、安江孝明(1997年没)によって1974年に設立された安江金箔工芸館は、金箔の製造工程や道具、金や金箔を用いた美術工芸品を展示した貴重な博物館だ。金箔製作の工程を紹介する展示から屏風や仏壇、現代アートまで、この土地で金箔が育まれてきた歴史に触れることができる。

安江金箔工芸館
住所:石川県金沢市東山1-3-10
tel. 076-251-8950
開館時間 9:30~17:00
観覧料 一般¥310
https://www.kanazawa-museum.jp/kinpaku/

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一方、本願寺金沢別院の本堂では5万枚の金箔を使った内陣を目にし、その存在感に圧倒された。

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本願寺金沢別院は、浄土真宗本願寺派(西本願寺)の別院。壁や柱、細やかな装飾にいたるまで金箔が施され、薄暗い本堂で輝きを発している。「金色(こんじき)」という言葉には「価値あるもの」「不変であること」というふたつの意味がある。
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細かく彫られた欄間の装飾部分にも金箔が隙間なく貼られている。
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バングル¥1,056,000(YG)/ティファニー(ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク) ジャケット¥46,200、シャツ¥28,600、パンツ¥26,400/以上グラフペーパー 東京 その他/スタイリスト私物

「こんなに金箔が使われているお寺を見たのは初めてです。あんなに薄い金箔が、光を反射してこれほどまでに輝くとは……。驚きです」と、磯村はしばし本堂の前に立ち尽くしていた。

本願寺金沢別院(西別院)
住所:石川県金沢市笠市町2-47
tel. 076-221-0429
開館時間 6:00~18:00
https://www.facebook.com/kanazawanishibetsuin

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“昔ながらの技術は手の温もりを感じさせる。次世代の職人さんを応援したい”―― 磯村勇斗

取材を終えた磯村は、伝統を現在に繋ぐことの大切さをしみじみ感じたと言う。「職人さんの技とそれを使った作品やお寺を目にして、ティファニーが職人の育成を支援しているプロジェクトに共感しました。実際に若い研修生が頑張っているのを見て、僕も応援したくなりました。これからは時代に合った方法で、手の温もりを感じさせる技術を残していけたらいいですね」

仏教において金色(こんじき)は、“いのち”を変わらず価値あるものとして光り輝やかせようという仏の願いを表しているという。永遠の輝きを放つ金ゴールドとクラフトマンシップを未来へ繋ぐティファニーの取り組みに、私たちも注目したい。

ティファニー公式サイト
はこちら

【INFORMATION】銀座 蔦屋書店で特別展示が開催。

10月27日(金)から11月9日(木)までの期間、銀座 蔦屋書店(東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX6階)にティファニーの軌跡や金沢の文化、伝統工芸、職人の技にフォーカスした書籍が集まる特別展示ブースが登場。歴史を重ねてきた匠の技への理解が深まる空間にぜひ足を運んで。

Profile/磯村勇斗 Hayato Isomura
1992年9月11日生まれ。2015年「仮面ライダーゴースト」(EX)、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)で注目を集める。現在、映画『月』が公開中のほか、『正欲』が11月10日より公開される。

●問い合わせ先:

ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
tel. 0120-488-712(フリーダイヤル)

グラフペーパー 東京
tel. 03-6381-6171

photography & Video direction: Tisch(mare) Video: Yuzuru Nakatani styling: Tom Kasai hair & makeup: Tomokatsu Sato text: Junko Kubodera

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