梅雨の憂鬱を吹き飛ばす、ジャンルレスなアーティスト3選。
Culture 2025.05.31
なんとなく気分が落ち込みがちな梅雨シーズンもそろそろ近づいてきた頃。そんなときこそ、心に響く音楽をそっと寄り添わせたい。
エモーショナルな歌声が胸に響くブロンドシェル、有機的に進化するUKデュオ・ジーズ・ニュー・ピューリタンズ、夢見心地な甘さが広がるヘイゼル・イングリッシュ。ジャンルを超えた魅力を持つ3組の最新作を紹介。
聴く者の心を震わせる、情感豊かな楽曲群。
『イフ・ユー・アスクト・フォー・ア・ピクチャー』
ブロンドシェル

まっすぐに歌のメッセージが向かってくる。思わずそんな印象を持ってしまうのが、サブリナ・タイテルバウムのソロプロジェクト。ヒリヒリするような歌声で、私小説的な世界をエモーショナルに歌い上げる。フォークやカントリーといったアコースティックなサウンドを取り入れながら、あくまでもオルタナティブロック然とした硬派な印象は揺るぎない。年間150本以上ものライブをこなすというだけあって、ハードでノイジーな音像の中でもくっきりと浮かび上がるようなボーカルのパワーに圧倒される。
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有機的に進化し続ける、UKの兄弟デュオ。
『クルックド・ウイング』
ジーズ・ニュー・ピューリタンズ

ポストロック、インダストリアル、アートロック。さまざまな表現が当てはまるようで、いずれにも当てはまらないロック。ジャック・バーネットとジョージ・バーネットのふたりによるユニットは、先鋭かつ深遠で美しい音像を生み出し続けている。今作においても、キャロライン・ポラチェックをフィーチャーしたアンビエントなサウンドをはじめ、厳かでまるで教会音楽を聴いているかのような清冽な印象に魅了される。エレクトロニカからポストクラシカルまで呑み込むような、ジャンルのクロスオーバーを楽しみたい。
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夢心地な空間を生む、甘酸っぱい歌声。
『リアル・ライフ』
ヘイゼル・イングリッシュ

聴いているだけでこんなにも心が躍るポップスはないかもしれない。それくらい、彼女の軽快でキュートな歌声の心地よさは何物にも代えがたい。シドニー出身ながらも現在はロサンゼルスで活動する彼女の音楽は、インディポップならではのハンドメイド感があるが、そこがまた独特の浮遊感を醸し出している理由だろう。敢えてチープな質感のアレンジを施し、水の中で揺らめいているような歌声を披露する。まさにドリームポップのお手本といった感覚があり、煌めきに満ちたナンバーがたっぷりと詰まっている。
*「フィガロジャポン」2025年7月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto