映画を支える衣装はどう作られる? 女性たちの物語で紡がれる映画『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』が公開中!

Culture

フェルザン・オズペテク/映画監督・脚本家

Ferzan Özpetek/フェルザン・オズペテク
1959年、トルコ・イスタンブール生まれ。76年にローマに移り、映画を学ぶ。97年に『ハマム』で監督デビュー、カンヌ国際映画祭監督週間に選出。『カプチーノはお熱いうちに』(2014年)等のヒット作を放ち、オペラ演出やアート、小説の分野でも活躍している。

人間に備わった“女性性”という、共感を生み出す素晴らしい資質。

『あしたのパスタはアルデンテ』(2010年)などで人気のフェルザン・オズペテクの最新監督作『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』は24年、イタリア映画最大のヒットを記録した感動作だ。その着想源となったティレッリ工房は、イタリア映画の黄金期を支え、近年もソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』(06年)やリドリー・スコットの『ナポレオン』(23年)をはじめ、ディオールと26年のクルーズコレクションでコラボレーションするなど、イタリアの芸術とクラフトマンシップをいまに継承している。

「女性たちの物語を撮りたいと考えていた時、私が助監督時代に通ったティレッリのことを思い出したのです。物語の舞台を1970年代に据えたのは、ピエロ・トージら天才衣装デザイナーが現役で活躍し、ヴィスコンティ、フェリーニ、キューブリックらの映画衣装を受け持つ工房の良き時代だったからです。当時、ティレッリに通っていた私自身の青春の思い出や、その頃の工房のフィーリングも吹き込むことができました」

映画は、オスカー常連の衣装デザイナーから映画全キャストの衣装を受注し、工房を経営する姉妹やお針子たちが多忙を極める姿がスリリングに描かれる。その一方で、アルマーニ、ミッソーニ、エミリオ・プッチらの影響を受けた装いで登場する女性たちの私生活に光が当てられ、それらが見事なつづれ織りになった群像物語が浮かび上がる。

「私自身が工房で見てきたリアルを重ね合わせ、ふたりの女性脚本家と、18人の女性すべてがどこかで一歩前に出てくる構成を練り上げました。工房と家庭、常にダブルワークをこなしながら、プロフェッショナルに仕事に取り組む彼女たちを、私は昔から賞賛せずにはおれませんでした。でも、撮影前は毎朝18台の車が女優を迎えに行き、メイクとヘア、衣装などの準備も18人分必要。その狂騒を思うと震えが来るようでした(笑)」

しかし撮影を通し、名匠は大きな気付きと経験を得て、その想いが本作のタイトルへと繋がったと語る。

「女優たちもともに仕事を始めると連帯感を生み出し、そのメカニズムが回り出せば想像を超えたパワーを発揮していく。その絆は男性間のもの以上に強いと感じました。困難に負けず、輝き続けるダイヤモンドのような存在として18人の女性を描きましたが、演じてくれた18人の女優たちは間違いなくダイヤモンドでした。人間は性別に関係なく、誰しも女性性と男性性の両方を持ち合わせていると思います。そして、それぞれに備わったこの女性的な部分こそが、他者との間に自然な共感とハーモニーを生み出し、そして何ものにも負けずに輝き続けることのできる、ダイヤモンドのような素晴らしい資質だと思っているんです」

© 2024 Greenboo Production ‒ Faros Film – Vision Distribution

映画監督が女優たちとテーブルを囲み、新作の構想を語る。一転、舞台は1970 年代のローマへ。大きな受注が入り、工房経営者とお針子たちに膨大な仕事とプレッシャーが押しせ……。●『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』は新宿ピカデリーほか全国で順次公開中。

  • © 2024 Greenboo Production ‒ Faros Film – Vision Distribution

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01 / 08

  • text: Reiko Kubo

*「フィガロジャポン」2026年8月号より抜粋