【ネタバレあり】恋愛観とモラルが浮き彫りに! 映画『ドラマなふたり』、衝撃のラストを語り尽くす。
話題作『ドラマなふたり』は、ゼンデイヤとロバート・パティンソン、いま最も旬なふたりが共演し、男女が出会いから関係崩壊の危機を迎えるまでを描いた悲喜劇である。観終わったあとに誰かと語りたくなるストーリーだからこそ、バツイチ恋愛コラムニストのさかいもゆると、30代メンズエディター、40代エディターの男女混合でレビュー座談会を開催(劇中と同世代がいないのは、ご愛嬌!)。座談会前編に続き、後編では、意見が分かれたラストを語り尽くす。
※この後、作品の結末に触れるネタバレを含みます※

座談会メンバー
さかいもゆる:アラフィフ、バツイチライター。セレブゴシップと恋愛コラムが専門分野。離婚経験があるため愛を失う物語に涙腺崩壊する傾向があり、『ドラマなふたり』ラストでは号泣。
N村:30代、メンズファッションエディター。6年間の結婚生活に終止符を打ったばかりで毎晩飲み歩いているバツイチシングル。
R子:40代、女性エディター。10年単位で恋愛無風。そもそも男嫌いで恋愛にはもはや興味なし。本作ラストにはドン引き派。
観る者によって解釈が180度変わるラストシーン。どの立場で観た?
R子:さかいさんが試写を見終わって「泣いた」ってLINEくれたじゃないですか。あれが本当にわからなくて。どこで泣いたんですか?
さかい:エマ(ゼンデイヤ)はチャーリー(ロバート・パティンソン)の信頼を壊してしまって、そのあとチャーリーもすべてを台無しにして、お互いがボロボロ。普通だったらもう絶対にやり直せない状況。なのに、エマは最終的にあの店に来てっていう、あのシーンを観て、「愛って許し合うことだよな」と改めて思ったの。そう思える相手じゃないと、結婚までたどり着かないんだなと。そう思ったら、なんかいろんな思いがこみ上げちゃって……。
N村:確かに「許す」というのがないと家族にはなれないかも。
さかい:私は、最終的には許せなくなって離婚した経験があるから、あんなことになってもまたやり直そうと思える気持ちが素晴らしいなって。それで、うわ〜〜と泣いてしまった。
N村:僕はわりと「嘘やろ」と思いながら観ていました(笑)。「そんなわけないやろ」と。あれもまたチャーリーの妄想で、最後ふっと目の前を見たら誰も居ない、っていうパターンなのかなと思ったり。
僕自身が、最近別れたばかりなのもあるかもしれないですけど。まだ許せないし、許されてはいけないという縛りが自分の中にあるのでしょうね。あそこまでのことをしておきながら許されるなんて、都合が良すぎやしませんか?、と。
R子:私もですね……、あのふたりは別れた方が幸せだと思いました。
さかい:え〜! なんで?
一度すれ違ったふたりは、やり直さない方が懸命なのか?

R子:振り返ると、実はあのふたりは合ってないことばかりなんですよ。モラルとか、何かが起こった時にどう感じて、どう行動するかとか。例えば、路上でコカインをやっていた知人を見つけた時も意見が噛み合ってなかった。
実際あるじゃないですか、うまくいっている時はズレを自然とスルーしたり、「こういう時もあるよね」と蓋をするけど、後で芋ずる式に「そういえばあの時も……」「あの時感じた違和感は間違いじゃなかったんだ!」と気がつくやつ。その状態なのにボロボロだから状況をシュガーコーティングして、現実逃避してしまったのかなと。あの状況に酔っているけど、現実だったらあのふたり、絶対にまたズレ出してダメになりますもん。
N村:また始めてはいけないふたり……。
R子:そう。「チャーリー! 目を覚ませ! またモヤモヤするだけだから、逃げろ!」と、もどかしかった。
N村:僕は、エマにそれを思いましたね。「いやいやいや、その男ダメだ、逃げろ!」って。
R子:もしくは、ふたりとも社会的に四面楚歌だから、お互いで支え合うしかないという極限状態のドラマティックムーブなのだろうか?
さかい:そっか〜〜〜。おとぎ話に憧れているから、あの終わり方は最高なのよ、私としては。
「時間を巻き戻して戻りたい瞬間」を想うとき

N村:エマはあそこで「初めまして」と言っていたから、出来事をリセットして、最初からやり直したいんでしょうね。
さかい:関係がダメになったときに「全部やり直させて!」「ダメになる直前のあの瞬間に時間を巻き戻せたらいいのに」ってことは誰にでも経験あるんじゃないかな。
N村:最近ギスギスしてんな、前は同じ場面でも笑ってくれてたのにな、とかね。
R子:最初の方の、チャーリーが悩んでいるときにエマがズボンをパッと引き下げて笑って終わるシーン、良かったですよね。お互いが心開いている関係じゃないと出来ない、バカバカしくて笑える解決法。
N村:そして関係が悪くなって来たときに男側は「前に成功したから」って同じことを彼女にしてみるけど、仲直りどころか空気を凍り付かせるというね。切ない……。男ってああいうところ、あると思います。一度薔薇を贈って喜ばれたら、永遠に薔薇を贈り続ける、百合にしてみることなど思い付かない、愚かしさ。
さかい:ふたりがギクシャクしているときにチャーリーがセックスしようとするも、ED気味になっちゃう感じもリアルだったよね。R子が言うように、チャーリーはたぶん、自分に言い聞かせていたよね。自分が結婚を決めたのだから、辞めるわけにはいけない、っていう。
N村:男は意外とそういう社会規範とか体裁を取り繕うみたいなものが強い気がしますね。「もう式にお客さんも呼んじゃっているし」、みたいな。一回ベッドに入って盛り上がったけど勃たないシーンもわからんでもないなと。あ、僕はそういう経験ないですけど!
さかい:(笑)。男性は愛情とセックスは切り離せるってよくいうけど、実は気持ちと下半身は連動しているよね。結構デリケート。
N村:逆に全く関係ないときに欲情したりするときもありますけどね。それこそ、チャーリーもしかり。「今じゃねえだろ」って。でも男として、なんか理解は出来る。
「何をどこまで許せるか」のボーダーライン

さかい:エマの過去だけどさ、中学生くらいの年代って生きづらさを感じて「みんないなくなればいいのに」って思う瞬間、わりとあることだとは思うんだよね。いわゆる厨二病の一種。それがアメリカという社会だったことで、自暴自棄になってあの発想になってしまうのも、危ういけどきっとアメリカ人にとってはリアルなんだろうなと。
N村:日本人的にはなかなかピンこないけど、センシティブな問題ですよね。
さかい:あの場ではエマが非難のターゲットになってしまったけれど、ほかのメンバーの話もなかなかエグくて、誰が怒りと軽蔑のトリガーになってもおかしくなかった。酒の席の笑い話と見せかけて、その人の人間性が問われるシーンだったよね。
R子:あの4人の「罪」で言えば、友人たちがやったことも全部あり得ないし。
さかい:私はチャーリーがやったことがいちばん許せないかも。
R子:おふたりはチャーリーのように、パートナーの受け入れられない過去を知った経験はありますか?
さかい:ある! 付き合い始めた相手のSNSの過去ログを遡って見たことがあったんだよね。そうしたら女、性関係や人間性に不信感を抱くような内容が結構書かれていて……。だいぶ昔のことだったけど、それを見たことで、相手を信じ切れなくなった自分がいた。「目の前の彼は優しいけど、実は二面性があるのかな?」と。過去は見ない方が幸せで居られると思う一方で、彼の人間性を早めに知れて良かった気もするし。難しいよね。
エマとチャーリー、「おとぎ話」のその後

N村:しかしあのふたりは、大事な友人も失って、両親とも職場とも気まずくなって、あれからどうやって生きて行くんだろうか。
さかい:共依存っぽくなるしかなさそうだよね。チャーリーはああやって、問題が起きても取り繕って生きて行きそうだし。
N村:結婚記念日は毎年来るわけで、その度に地獄のウエディングを思い出すことに……。そうなるともう、ホラー。あのふたりは別れて、いままでのコミュニティに「すみませんでした」って謝って戻って行くか、街を出てふたりだけで寄り添って行くしか選択肢がなさそう。
R子:チャーリーはセクハラしたから、あの職場にはもう居られないしね。
さかい:そう考えるとチャーリーがいちばんヤバい。お金をかけた結婚式も全部自分で台無しにして、一体何がしたかったのか。
N村:マリッジブルー、ここに極まれりという。あれじゃあクリスマスもニューイヤーもサンクスギビングも実家にはもう帰れないでしょ。「あの旦那は結婚直前に浮気しようとしてその相手の夫に殴られて式をめちゃくちゃにした。しかもみんなの前で性生活を暴露した!」って、永遠に親族に語り継がれるだろうし。
さかい:あのあとEDが回復したのかも気になるけど、きっともうダメな気がする。
N村:やっぱりホラー! 恋愛映画だと思っていたら、サイコホラーでした(笑)。
結婚とは、パートナーシップとは何なのか

R子:あれを観て、結婚やパートナーシップについてどう思いましたか?
N村:月並みですが、恋愛と結婚は違うよね、と。結婚は人と生きるってことだから許容力の問題もある。
R子:本当に。だけど許せないこと、つまりコップの水は日々溜まって行くわけで。水が勝手に抜けて行くことなんて、あるのかな?
N村:水が勝手に蒸発して行くならいいけど……、日本って高温多湿ですからね。
R子:(笑)! 忘れっぽい人が結婚には向いているよね。なんかもう嫌なことあっても気にしないくらいの方が結婚向き。コップに水が入っていることも忘れちゃうくらいの。
N村:あとはコップのサイズもあるじゃないですか。「この人、許容量がたらい並みだ!」って。そのたらいも、溢れたら終わりかもしれないけど。
さかい:だから絶対、結婚するなら包容力が大きい人とがいい。私は許されたいから。
N村:一緒に暮らすなら、生活する上でのノイズが少ないことが大事だというのはあるかも。
さかい:気になるポイントは、人によって違うもんね。あと最近思うのが、男性の方がパートナーを必要としているのかなってこと。女性はパートナー必須ではないと感じていて。極論かもしれないけど、突き詰めると、パートナーが欲しい気持ち、イコール性欲だから。女性は、心の繋がりや社会とのつながりも女同士で別に満たされるし。性欲がなければ、パートナーを煩わしいと思うことの方が多いのかなって。かたや男性は、一般的には性欲が女性よりあるとされているし、「セックスしてないと男らしさが証明できない性」みたいな強迫観念が強そう。
N村:たしかに70代くらいになったときでも、男性の方がまだまだパートナーを本気で欲しがっている感じはありますね。
R子:パートナーシップって、一体何なんですかね。
さかい:幸せは2倍になり、悲しみは半分となるのが理想だろうけど。結婚で考えると、女性の方がまだまだ子どもが出来たら家事と学校関連は女性がやる、みたいな刷り込みやプレッシャーがあるじゃない。そう考えると、実は居ない方が楽になることがいっぱいある。
R子:それは思うかも。相手が居るから「お前もやれよ」ってなるけど、そもそも居なければ最初から自分がやるものと思うから、期待して失望したり、イラついたりすることもないし。
さかい:私は人が結婚する理由の中には、世間体が5割くらいはある気がする。パートナーが居ないと人として欠陥があると思われるんじゃないかという不安な気持ち。子供が欲しいとか経済的な理由もあるとは思うけど。それさえなければ、特に女性は実はそこまでパートナーを欲してないことも多いんじゃないかなあ。
N村:それはありますね。時々「ああ俺は離婚したんだもんな」と、誰かと一緒に暮らすのが無理だったって、どこか欠陥があるのかなと不安になるときがある。
さかい:でもね、私の両親は離婚して、それぞれ再婚してるんだけど。ふたりとも何も変わっていないのに、新しいパートナーには離婚の原因になった欠点も許容されて、どちらの結婚生活も上手く行ってるの。前のパートナーには許されなかった部分を、新しいパートナーは気にしてないんだよね。だから本当は結婚に不適合なんてなくて、自分が許容される場所を見つけられるか否かなだけなんじゃないかな。自分もいつかそんな相手に出会えるんじゃないかと夢見てる。
N村:どこかにそんな場所があって、その相手に出会えたとしても、その人が「ひとりがいい」って思っているなんてこともありそう。
さかい:だからやっぱり、奇跡じゃない? エマとチャーリーって。
R子:あ、上手くまとまった(笑)!
―――ゼンデイヤとロバート・パティンソンの演技に引き込まれ、自分の恋愛観も浮き彫りになる。抉られるストーリーを描く、『ドラマなふたり』は絶賛上映中。
『ドラマなふたり』
監督・脚本:クリストファー・ボルグリ
製作:ラース・クヌードセン、アリ・アスター
出演:ゼンデイヤ、ロバート・パティンソン 、アラナ・ハイム、ママドゥ・アティエ、ヘイリー・ゲイツほか
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公式サイト:https://happinet-phantom.com/drama
8月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開