ブシュロンのハイジュエリー「MORE IS MORE」 既成概念を覆す、ポップなハイジュエリー。

Jewelry 2023.07.14

7月初旬、パリ・ヴァンドーム広場の本店で、ブシュロンの新作ハイジュエリーがお披露目された。これまでも、革新精神に満ちた独特のクリエイティビティでほかのジュエラーとは一線を画してきたブシュロン。今回の新作も、キューブや球体、カラフルな色使いとオプアートのような効果を盛り込んだ、ポップな表情に目を奪われる。既成概念を覆すクリエイションの立役者は、メゾンのクリエイティブディレクターを務めるクレール・ショワンヌだ。

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7月にヴァンドーム広場の本店で行われたプレゼンテーションにて。最後列の白い服の女性が、クリエイティブディレクターのクレール・ショワンヌ。

毎年1月と7月のオートクチュール週間に合わせて、パリではハイジュエリーの新作がお披露目されるのが恒例。ブシュロンでは、1月はメゾンの歴史にインスパイアされたコレクションを、7月にはクレールが自由なクリエイションを繰り広げるカルト ブランシュ(白紙委任状)を発表している。
今回の新作ハイジュエリーのテーマは、More is More。デザイン面でもテクニカル面でも既成概念を心地よく超越し、生きる歓びをそのまま形にしたようなコレクションだ。

「このコレクションに取りかかったのは2020年末、フランスではコロナによるロックダウンが断続的に続いていました。だから、明るく楽しい気持ちを与えたい、と決めたのです」。
クレールは、プレゼンテーションの冒頭でこう語った。ヴァンドーム広場26番地の本店の一室には、メンフィスと共に活躍した日本人デザイナー梅田正徳にちなんだ畳張りのボクシングリングが設置され,80年代のジョイフルなプレイリストが流れている。1点ずつ、クリエイティブデザイナー自らが、モデルが着用するジュエリーを丁寧に紹介するプレゼンテーションは、ブシュロンが毎シーズン行なっている独自の発表形式だ。

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ワンス イン ア ブルームーン クエスチョン マークネックレスをフラットにアレンジ。

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ジャスト アン イリュージョン ビッグサイズのチェーン。

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ドゥ ノット アイロン ワッペンのようなジュエリーたち。

80年代のメンフィスムーヴメントやコミックスにインスパイアされたコレクションは、キューブや球体、オプアート効果、色のコントラストやオーバーサイズなど、ポップな遊びに満ちたもの。メゾンを象徴するクエスチョンマーク形のネックレスや、チェーンをかたどったオーバーサイズのネックレスは、平面的に仕上げられてトロンプルイユ風の視覚効果を生む。クレールが子どもの頃に親しんだというワッペンをイメージしたブローチや、色鮮やかなキューブや球体のリングは、ハイジュエリーであることを忘れさせてしまう、ユーモアあふれるピースだ。
希少な宝石、伝統のサヴォワールフェール、メゾンの歴史やアイコンを振り返るデザインといったハイジュエリーのコードを超越した自由な発想とデザイン。クレールは、「イリュージョンを生み出したかった」と語る。

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左: ディス イズ ノット ア リング ダイヤモンドをちりばめたキューブとイエローサファイヤ、イエローダイヤモンドを封じ込めたロッククリスタルの球。
中: パール ソープ バブル アルミニウムのプレートにマザー・オブ・パールを吹き付けて。
右: タイ ザ ノット バイオアセテート、マグネシウムとダイヤモンド611石が織りなす、ビッグサイズのヘアアクセサリー。

カルト ブランシュ コレクションの真髄は、自由なデザインだけではない。クレールが発想し、夢に描いたジュエリーを形にするために、新しい素材の可能性が常に模索されている。例えば、イエローダイヤモンドとイエローサファイアを、ロッククリスタルの球体の内側に封じ込めたリング。アルミニウムにマザー・オブ・パールの粉末を吹きつけた、フラットなパールのネックレス。自然由来のバイオアセテートで鮮やかなレッドを実現し、ゴールドより10倍も軽量なマグネシウムを使用した巨大なリボン形のヘアアクセサリー。貴金属と宝石だけでは得られない表現と発色、しなやかさや軽さを可能にする素材の探求もまた、ブシュロンのクリエイティビティなのだ。

text: Masae Takata (Paris Office).

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