シャネルとカール・ラガーフェルド。
シャネルを紐解く24のキーワード
1982年に、カール・ラガーフェルドはシャネルのファッション部門のアーティスティック ディレクターに任命された。83年に初めて自身が手がけたコレクションを発表して以来、今年2月19日に85歳で亡くなるまで、メゾンを牽引する偉大なクリエイターであり続けた。
2017/18年秋冬 プレタポルテ コレクションのバックステージにて。photo : BENOIT PEVERELLI
ドイツ・ハンブルクで生まれたカールは、14歳の時にパリへ移住。16歳の時に国際羊毛事務局(IWS)主催のコンクールの国際ウールマーク賞を受賞し、若くしてピエール・バルマンのアトリエでの仕事を得る。
その後、いくつかのブランドでキャリアを積み、82年にシャネルへ。ブランドの創立者、ガブリエル・シャネルが築いてきた歴史に敬意を払いつつも、アイコニックなピースのモダナイズに注力。ジャケット、バッグ、バイカラーシューズやチェーン、そしてコスチュームジュエリーなど、ひと目で分かるメゾンのアイコンを再解釈することで、新境地を切り開いてきた。
2017/18年 クルーズ コレクションのフィナーレ。photo : OLIVIER SAILLANT
カールの故郷であるドイツ・ハンブルクで発表された、2017/18年 パリ-ハンブルク メティエダール コレクションのフィナーレ。 © CHANEL
グラン・パレに滝が出現。PVC素材のハットやサイハイブーツが印象的な、清涼感溢れる2018年春夏 プレタポルテ コレクションのフィナーレ。photo : OLIVIER SAILLANT
2018/19年秋冬 プレタポルテ コレクションのフィナーレ。photo : OLIVIER SAILLANT
2018/19年秋冬 オートクチュール コレクションのフィナーレ。 © CHANEL
2018/19年 パリーニューヨーク メティエダール コレクションのフィナーレ。ニューヨークのメトロポリタン美術館にて、エジプト政府からアメリカ合衆国に寄贈された歴史的建造物、デンドゥール神殿を舞台に、コレクションが披露された。 © CHANEL
2019年春夏 プレタポルテ コレクションにて、2018/19年秋冬 プレコレクションの顔を務めた南スーダン出身のモデル、アドゥ・アケチとカール。 © CHANEL
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キャンペーンビジュアルにも手腕を発揮。
現在、オートクチュールにプレタポルテ、それにプラスし発表されるクルーズ コレクションやメディエダール コレクションもカールが生み出したもの。ほかにもカールが世に送り出した数多のマスターピースは、シャネルの歴史に残るものばかりだ。シャネルのDNAを色濃く反映した「ボーイ シャネル」や「ガブリエル ドゥ シャネル」のバッグシリーズなどは記憶にも新しい。
カイア・ガーバーを起用した、2018年春夏 ハンドバッグキャンペーンのビジュアル撮影を手がけるカール。photo : OLIVIER SAILLANT
2018/19年 クルーズ コレクションのキャンペーンの顔を務めたのは、女優のペネロペ・クルス。「私はカールの撮影のリズムがとても好きです。写真の中で何かが起きる瞬間を、彼は捉えることができるのです」と語った。photo : OLIVIER SAILLANT
87年にはキャンペーンビジュアルもカール自身が手がけるように。写真家としても高く評価されていた彼は、いくつかの賞にも輝いている。時代の空気感にマッチする女優やモデルをいち早く見つけ出し、メゾンの広告塔、さらにはアンバサダーとして起用するのも、また彼の得意とすることだった。
2017/18年 クルーズ コレクションのキャンペーンには、現在女優として活躍するシャネルのアンバサダー、マリーヌ・ヴァクトを起用。中古代ローマの女神を彷彿とさせる姿が印象的だった。photo : OLIVIER SAILLANT
2017/18年秋冬 プレタポルテ コレクションのキャンペーンのため、リリー=ローズ・デップを撮影するカール。photo : OLIVIER SAILLANT
同じく2017/18年秋冬 プレタポルテ コレクションのキャンペーンビジュアル撮影にて、リリー=ローズ・デップとカーラ・デルヴィーニュ。photo : OLIVIER SAILLANT
2017/18年 パリ-ハンブルク メティエダール コレクションのプレスキット撮影にて。photo : OLIVIER SAILLANT
2018/19年秋冬 プレタポルテ コレクションのキャンペーンビジュアルを撮影するカール。photo : OLIVIER SAILLANT
その撮影現場で、モデルたちと語らうカール。モデルたちの表情から、和やかな雰囲気が伝わってくる。photo : OLIVIER SAILLANT
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伝統へのリスペクトと革新性。
さらにカールは、昔ながらの卓越した手仕事を誇るアトリエとの恊働を大切にし、サポートを続けた。そして、オートクチュール コレクション、メティエダール コレクションで、その技を存分に発揮したクリエイションを披露。伝統的な技を駆使して、最先端の美しい世界を作り上げる、カール・ラガーフェルドは、それを可能にする偉大なアーティスティック ディレクターだった。
2017/18年秋冬 プレタポルテ コレクションのフィッティングにて。photo : BENOIT PEVERELLI
同じく2017/18年秋冬 プレタポルテ コレクションのフィッティングで、スケッチするカール。photo : BENOIT PEVERELLI
2018年春夏 オートクチュール コレクションのバックステージにて。photo : BENOIT PEVERELLI
2018年春夏 オートクチュール コレクションのフィナーレ。シャネルと縁の深いグラン・パレで、美しい花々が咲き乱れるようなコレクションが披露された。 © CHANEL
texte : TOMOKO KAWAKAMI, graphisme du titre : SANKAKUSHA