ファルツ地方のダイデスハイムはおとぎ話に出てきそうな可愛らしい町です。この町と周辺にある小規模ワイナリー12社から15人の若手ワインメーカーたちが集まって、2009年に「ワイン・チェンジ」というグループが結成されました。

ダイデスハイムの街並み。
「12種類のまったく別々のワイン哲学を持つ造り手が集まって、行動を共にしているんですよ」と言うのはグループのリーダー格、ヤン・ホックさん。この日はメンバーのうち4社からの5人が集まってわれわれのために合同試飲会を開いてくれました。

ワイン・チェンジのメンバー。

郷土料理でワインジャーナリストをおもてなし。
まずはヤンさんのワインから飲んでみましょう。ラベルに描かれた素朴な農夫の絵が、彼のワインが自然な造りであることを表しています。リースリングはスレンダーで極めてデリケートな味わい。ミネラル感の中から儚い果実味が覗くと、ゴツゴツとした岩の影に可憐な高山植物を見つけたような気分になります。

ポーランド人ワインジャーナリストにワインの説明をするヤンさん。
お隣のマルクス・シェードラーさんは、恰幅がよく、豪放磊落な印象。彼の造るワインも総じて温かみが感じられます。リースリングは剥きたてのみかんのよう。滑らかでスイスイと身体に染み込んでいく感じです。一方、ゲヴュルツ・トラミネールは極上の中国茶を彷彿させる高貴な香り。
顔の半分を覆う濃いヒゲがアーティストっぽいゲオルク・フッサーさん。彼の造るワインはどれもワイン本来の色合いを超えた、目に見えない色を放っているように感じられます。本人にそう言うと、「それはビオディナミ(思想家ルドルフ・シュタイナーの理念に従った有機農法)を実践しているからじゃないかな」とのこと。シュペート・ブルグンダー(ピノノワール)はいつまでも飲んでいたいと思わせる上品で伸びやかな味わいでした。

右からマルクスさん、ゲオルグさん、ヤンさんのワイン。

ワイン・チェンジのメンバー、カトリン・メリングさん。
「ワイン・チェンジ」のメンバーは確かにそれぞれ異なるフィロソフィーを持っているようでした。例えば同じリースリングを使っても、それぞれまったく違うスタイルのワインに仕上がっていました。ラベルも多種多彩。でも、そこには共通するものも感じられました。ひと言で言うなら、それは自然なアプローチということになるでしょうか。それは彼らのワインの中に飲みやすさという結果になって現れていました。この「飲みやすさ=ドリンカビリティ」という言葉はワイン・ジャーナリズムの世界でいま、もっとも頻繁に語られ、マーケットから求められているものです。

シュペッツレ(卵を練り込んだパスタ)にもリースリング。
6回にわたって、ドイツワインの若手ワインメーカーを訪ねた旅のレポートをお届けしてきました。今回ご紹介したワイナリーは、いずれも小規模で、日本未輸入のところばかりでした。近い将来、ドイツワインに対する認知が高まり、こういうところのワインがどんどん日本に入ってくるようになることを、ひとりのワインラヴァーとして強く熱望しています。

テイスティング会場にワイン・ドッグ登場!?
ライター、ワイン・ジャーナリスト、編集者
ワイン・ジャーナリストとして、これまで取材したワイン産地は11カ国30地域以上、訪問したワイナリーは約500軒に及ぶ。ワインと観光要素を結びつけた「ワイン・ツーリズム」の紹介に重点を置いている。各誌ワイン特集の企画・監修・ワインセレクトを担当することも。
吉田パンダ Panda Yoshida
フォトグラファー
世界の犬とおいしいものを、こよなく愛するフォトグラファー。スタジオ勤務を経て、2000年よりパリに拠点を移す。愛犬は黒いトイプードル。雑誌・広告媒体では吉田タイスケとして、旅、ライフスタイルを中心に幅広く活動。
texte: YASUYUKI UKITA, photos: PANDA YOSHIDA, collaboration: WINES OF GERMANY
この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/travel/161006-riesling.html