【家のビフォーアフター】パリの45㎡のアトリエが、3フロアの住まいに大変身。

Lifestyle

住み慣れた家のリフォームや、中古マンションを購入してリノベーションを考えていたら、まずどこから始めるべきか予備知識を入れて、実例を基に計画をスタート。日本とフランス、小さな空間を自分たち好みに仕上げた4つのお宅のビフォーアフターを拝見!


改築・改修ビフォーアフター case 3
FRANCE ー PARIS

Caroline Pusset アートディレクター
Tomas Tissandier 写真家

白×ステンレス仕上げのリビングに色を添えて。

1970年代の雰囲気に。蚤の市で見つけたヴィンテージのリーン・ロゼのソファにメゾン・ドゥ・ヴァカンスのクッション、オークションで購入したステンレス製のローテーブル、その上にはジャン=バティスト・ファストレ×モノプリ×ヴィラ・ノアイユのクロームメタルのオブジェ、ラグはハビタ。ビューロー・バンジャマン×モノプリのボルドー色のラッカー仕上げのフロアランプとトリュフォーで購入した植物を置いた。壁には元オーナー、マリー・テュルマンの作品が飾られている。

Renovation Data
[所在地] フランス・パリ11区
[家族構成] 夫婦
[建物] 不明
[床面積] 45㎡ 1フロア→ 80㎡ 3フロア
[間取り] 1R→2LDK
[設計] 非公開
[施工] 非公開
[工事期間] 非公開
[工事費用] 非公開

パリ11区、ナシオン広場からほど近い魅力的な小さなパッサージュ。かつて食肉取引のために使われていた古い工業建築は1990年代末に住宅へと再生された。緑の扉が整然と並ぶひとつがこの家。アートディレクターのカロリーヌ・ピュセは写真家のトマ・ティサンディエとともに2024年、画家マリー・テュルマンのアトリエだった45平方メートルの空間を80平方メートルのアパルトマンへと生まれ変わらせた。

「私を魅了したのは、特別な場所に住むことになるという直感」とカロリーヌは語る。ふたりが初めて扉を開けた瞬間、画家の筆跡が残るそのままの空間に第2の人生を与えようと心に決めた。実際、このアトリエには大きな魅力があった。広さ、大きな開口部、中央にそびえるコンクリートの柱など。

「私たちは息づく空間、見上げれば建築そのものを感じられる場所が欲しかったんです」

Before

3.7mという見事な天井高と幅広のガラス窓が特徴。

天井を中2階にして、寝室とワークスペースに。

Before

物置だった天井部分を中2階に。

After

左:中2階下のワークスペースが、友人を泊められる部屋としても機能。アンティークの椅子、ランプとカレンダーはワレン&レティシア。ベッドのブランケットとクッションはメゾン・ドゥ・ヴァカンス。 右:階段は、バスルームのある地下とリビングの上に浮かぶような寝室に繋がる。クロームメタルのスツールはジャン=バティスト・ファストレ×モノプリ×ヴィラ・ノアイユのもの。
寝室は、カロリーヌがデザインし、AKRフレンチデザインが製作したスチールのガラス間仕切りがまるで船室のよう。壁はオクメ材。ムスタシュのイオナ・ヴォートランによるランプ、マルゴー・ケレーのキャンドル、ゴールドのブラケット灯「レスピロ」はDCWエディションズのもの。ベッドにはラ・ルドゥートのリネンシーツ、メゾン・ドゥ・ヴァカンスのクッションとブランケット。

平面図を担当したカロリーヌは天井高を最大限に生かし、地下の採光のない収納スペースをドレッシングルームとバスルームに変え、動線そのものを再構築。いまでは、玄関を入るとすぐに光に満ちたリビングが広がり、キッチン、ダイニング、そしてワークスペースまでがひと繋がりになっている。

中2階の寝室は、この生活空間の上に吊り下げられたように設けられ、ガラス張りの箱のような造りがグラフィカルに直線を柔らかく崩している。寝室へはオーダーメイドの階段で上がり、その踊り場にトイレがある。空間全体に開放感と静けさをもたらすシンプルな造りだ。

ゼロから水回りを工事、機能的なキッチン。

Before

水回りの設備は何もない。

After

イケアの白いセミハードボードの扉にル・ボン・マルシェの丸い取っ手を組み合わせ、ラ・メゾン・デュ・ミロワールの白いガラス製キッチンパネル、特注の白いラッカー仕上げのセミハードボードのアイランドカウンターを合わせた。右側面にオーブン、電子レンジがはめ込まれ、ステンレス板で仕上げたくぼみに小型家電が巧みに収納されている。床は空間を軽やかにするため白い塗料を選んだ。ハイスツールはパスカル・ムールグがフェルモブのためにデザインした金属製の「リューヌ・ダルジャン」。クロームメタルのランプはビュロー・バンジャマン×モノプリのもの。カラフェ「ニオロン」、花瓶「マダレナ」はマルゴー・ケレー・コレクション、ワイングラスはモノプリ。

リビングの床と壁は、ベルベットのような質感の白で仕上げられた。カロリーヌが「厳密さと静かな存在感が好き」というステンレスは、キッチン、巾木、ニッチなど随所に使われ、家の幾何学的な個性を際立たせる一本の軸となっている。一方、上階と地下では木材が温かみを添える。中2階には船室のようにオクメ材を、ドレッシングルームとバスルームにはプライベートな雰囲気を醸すオーク材。こうして工業的なストイシズムと家庭的な温もりの微妙な均衡の上に、調和が成り立っている。

倉庫だった地下を快適なバスルームへ。

Before

スペースを確保するため倉庫だった地下を大きなドレッシングルームと快適なバスルームに改装。

After

元のコンクリート床に白い塗料を施し、その上にエコール・カモンド×モノプリによるレオ・アシャールがデザインしたラグを敷き、同デザインのマットラッカー仕上げのスツールを置いた。壁はフィソールのタイル仕上げ。オーク材の家具は特注でデザイン・製作され、インターネットで見つけたトラバーチンのダブルシンク、水栓はグローエを使用。ラ・メゾン・デュ・ミロワールの鏡が収納を隠す造りになっている。

ニューヨークのミクロロフトとアムステルダムの船室の間にあるような個性的な住まいは、日常の使い方や住む喜びに根差した彼らの居住哲学を体現している。

「この場所にいると、時間がゆっくり流れるように感じる。光は絶えず変化して、まるでフォトスタジオのようなんだ」とトマは目を輝かせる。バウハウスやブルータリズムの影響を受けつつ、美しさと機能性を兼ね備えているのだ。

  • photography: Bénédicte Drummond (Madame Figaro)
  • text: Laurence Dougier (Madame Figaro)

*「フィガロジャポン」2026年3月号より抜粋