スタイリスト上杉美雪さん宅へ。「大きなダイニングテーブル」に似合う花とは?【花々の飾り方。vol.1】
花を飾るのは、誕生日やホームパーティの日だけではない。「特別な予定はないけれど、花を飾ろう」。そんな小さな選択が、いつもの景色を少しだけ違って見せてくれる。パリでの暮らしを経て感性を育んだフローリスト・岡本美穂さんが、アールドゥヴィーヴルのある人の家を訪ね、その住まいだからこそ映える花の飾り方を提案する。

第1回は、細部まで行き届いた美意識と、着る人の個性を引き出すスタイリングで多くの支持を集めるスタイリスト・上杉美雪さんの自宅へ。大きな大理石のダイニングテーブルを主役に、シノワズリの家具やオブジェが心地よいリズムを描く住まいに、岡本さんが選んだのは、しなやかに枝を伸ばすつるバラ「レイニーブルー」と「ブーゲンビリア」。


花は部屋を飾るものではなく、その人らしさを映すもの。
「美雪さんご本人にも、彼女がつくる世界観にも、足して完成させるというより、引いた先に残る美しさがあります。その凛とした佇まいに、いつも惹かれるんです」と岡本さん。だから今回は、花をデザインするのではなく、花そのものが持つ美しさを引き出すことを大切にした。「旬の花は、それだけで生命力があります。しなやかなラインを描くレイニーブルーと景色が鮮やかに変わるブーゲンビリア。その組み合わせに、美雪さんの軽やかな空気感を重ねました」(岡本)。

大きなダイニングテーブルには、「高さ」より「広がり」を。
リビングの中心にある大理石のダイニングテーブルは、上杉さんが2018年頃に購入したイタリアのヴィンテージ。このテーブルに合わせて岡本さんが選んだのは、花器ではなく、キッチンにあった背の低いボウルだった。「ここは食事をする場所なので、座ったときに目線を遮らないことが大切です。高さを出すより、横へ伸びるラインとボリュームを生かしました」
ボウルにはたっぷりと水を張り、花留めには剣山を。ラベンダー色のレイニーブルーがゆるやかに広がり、その合間からブーゲンビリアの鮮やかな色がのぞく。重厚な大理石に、有機的なラインが軽やかな余白を添えていた。
「リビングで花を飾るときは、目線を意識することが大切です。座ったときに眺める場所なのか、立ったときに目に入る場所なのか。それを考えるだけで、花の高さやボリュームは自然と決まってきます」(岡本)。

部屋の角には、「縦のライン」をつくる。
続いて花を飾ったのは、シノワズリなムードが漂うサイドテーブル。「部屋の角は自然と視線が上へ向かう場所なので、大理石のテーブルとは反対に、高さを意識しました」と、岡本さん。
合わせたのは、クリーム色が美しいバラ「バタースコッチ」と、上杉さんが10年ほど前にシボネで購入した一点もののフラワーベース。赤いビーズの装飾が印象的な花器は、南アフリカの農村部でビーズ細工を手がける女性たちによってつくられたものだという。勢いのある枝ぶりをそのまま生かしたバラが、存在感のある花器と響き合い、家具やオブジェとの美しいバランスを生み出す。黒、赤、クリームという印象的な色合わせも、不思議と住まいになじんでいた。

「同じ部屋でも、飾る場所によって花の見せ方は変わります。高さなのか、広がりなのか。その場所に合わせるだけで、花はぐっとインテリアになじみます」と、岡本さん。
花は、そこに暮らす人の感性やその人らしい時間の流れを映し出すもの。上杉さんの住まいに活けられた花が、そのことを静かに教えてくれた。
Profile
岡本美穂/Miho Okamoto
フローリスト。独立後、パリで1年間生活。神宮前2丁目にアトリエを構えて来年で10年。花や植物が持つ独特の美しさ、個性を引き出す表現を得意とし、フラワーギフトの制作から展示会の装花、ディスプレイ、雑誌や広告撮影のスタイリングなどを手がける。
Instagram @mihoflowers
上杉美雪/Miyuki Uesugi
スタイリスト。独自のセンスとバランス感覚で着る人の個性に調和したスタイルを作る。数々のモード誌、ブランド広告ビジュアルを手がけるスタイリスト。2023年に榮倉奈々がスタートしたアパレルブランド、ニューナウのクリエイティブ・ビジョン・ディレクターを務める。
Instagram @miyuki_blue
- photography: Riho Harashima