ザ・リッツ・カールトン東京にカフェをオープンしたパティシエ、ニナ・メタイエ。「花」がモチーフのスイーツに注目。
ニナ・メタイエ/パティシエ

Nina Métayer/ニナ・メタイエ
1988 年、フランス南西部ラ・ロシェル出身。パン職人からキャリアをスタート。パティシエに転向しル ムーリスなどで修業を積んだ後、2019年に独立。24年、「世界のベストレストラン50」が選ぶ「世界最優秀パティシエ」に。フラワーモチーフのほか、革新的な3Dプリンティングも活用している。
観察と分析が、美しいスイーツに昇華する。
いま最も注目されているフランス人女性パティシエの国外初展開は日本だった。4月にソフトオープンしたニナ ザ・リッツ・カールトン東京。優雅なその空間には、ニナ・メタイエが愛する季節の生花がテーブルごとに飾られている。
「咲く時期が限られ、どこか儚さのある“花”というものが大好きなんです。今回の来日はちょうど桜の季節で、ひと目で気に入りました。そんな時はよく観察し、自分がなぜそれをいいと思ったのか、どこに惹かれたのかを分析します。桜の場合、ずっしりした幹やしっかり硬い枝と、それと対照的にふわっと軽くて淡い色の花というコントラスト。こうやって気付いたことを自分のクリエイションに生かしていきます。いずれ、力強さと繊細さというコントラストがユニークなケーキが生まれると思うわ(笑)」
弾けんばかりの笑顔で話すメタイエ。店内入口にあるショーケースには、花を模った作品がいくつも並ぶ。いずれも緻密で、フォークを入れるのがためらわれるほどに精巧だ。
「フランスではお花はお菓子と並んでプレゼントの定番。どちらも、なくてはならないものではないけれど、喜びを与えてくれ、“時間”をより良くするものでしょう?」

最近は“時間”というものについて考えることが多くなってきた、というメタイエが続ける。
「忙しい皆さんが貴重な自分の時間を過ごしにやってきてくれるのがサロン・ド・テ。それに対して、最高の空間とおもてなしで迎えたい。もちろん、出てくるお菓子もね。中には、伝統菓子にインスパイアされ、それを自分なりに現代的に昇華させたものもあります。より軽やかに、シンプルにね。出来上がったものは、長い長い時間をかけることで生まれてきた一品、とも言えるんです」
この店は、ニナ・メタイエのお菓子が食べられる国外唯一の店というだけでなく、彼女が初めて作ったサロン・ド・テでもある。ここを皮切りに、出身地の近くのイル・ド・レやパリでも展開していくそうだ。
「それぞれの店はまったく違う内装、雰囲気でやっていくつもり。その土地ならではの歴史や職人技を取り入れながら、店にまったく違った命を吹き込みたいの。一つひとつを、ほかのどこでもない唯一の場所にしたいんです」
意気込みを語りながら、自分の作ったケーキにフォークを入れて口に運ぶ。ゆっくり味わい、そして頷きながら言う。
「食感、味。口の中でいろいろなことが変化しながら起きていく。それを感じてほしいんです。お客さま皆さんのパーフェクトな体験のためにチームみんなで頑張るの。いちばん素晴らしいものは、ひとりではできないのよ」
- text: Chieko Asazuma
*「フィガロジャポン」2026年7月号より抜粋