フランスの宿に学ぶ、ヴィンテージ家具をメインに作る心地良いインテリア。
フランスにて、食器やオブジェなどヴィンテージやブロカントを扱うインテリアショップ「Superchinerie(スュペルシヌリ)」を立ち上げたアヌーク・ルクレールに、ヴィンテージ家具を使った部屋作りのポイントについて聞きました。彼女が手がけるフランス・ペルシュ地方にある一棟貸しの宿 「Maison Légère(メゾン・レジェール)」の空間から見る、100%古いものだけで心地よい空間をつくる、その秘訣とは?

ランサローテ島への旅が、アヌーク・ルクレールの人生を大きく変えた。その旅をきっかけに、彼女はファッション業界での仕事を離れ、Maison Légèreと、セカンドハンドのインテリアブランド Superchinerieを立ち上げることを決意したのだ。
「2021年のことでした」と彼女は振り返る。「パートナーと訪れたこの島で、私たちは白く包まれた風景の中で日常から完全に解放されました! パリへ戻ったとき、ふたりともこの旅で感じた心地よさや、肩の力が抜けるような感覚、自然とのつながりを、人にも体験してもらえる場所をつくりたい。パリから気軽に訪れられる田舎の家を、宿として開きたいと思ったのです。」
思い立ったらすぐに行動へ。ふたりはそれまでの生活を大きく方向転換し、このプロジェクトに専念することを決意。不動産エージェントに依頼し、ル・ペルシュにある一軒の邸宅を案内してもらうことに。 車を降りたその瞬間、アヌークは「ここだ」と確信したという。ここが、自分たちの夢を形にする場所、Maison Légèreになるのだと。
「ロバがいること。それは私たちにとって譲れない条件でした。それに、目の前にはモンミライユ城を望む素晴らしい景色が広がっていたんです。家の中に入ると、その確信はさらに強まりました。白いコンクリートの階段をはじめ、私たちの好きな要素がすべてそろっていました。もちろん、内装は全面的に手を入れるつもりでしたが、家そのものの骨格は理想的だったのです。しかも私たちは、屋根の改修を除いて、リノベーションはすべて自分たちの手で行うと決めていました。実際、完成までには3年かかりました。」
2022年2月に家の鍵を受け取るよりも前から、アヌークの頭の中ではインテリアの構想が始まっていた。テーマは「100%ヴィンテージ」。それは、彼女が昔からセカンドハンドを愛してきたから。
「とても若い頃から古着を着ていました。当時は、古臭いと思われることもありましたが、私には古着はいつも大きな可能性を秘めた存在に映っていました。新しい価値を与えられる、アップサイクルの素材だったんです。その考え方はインテリアでも同じ。そして、その情熱から生まれたのがSuperchinerieです。何よりそれは、Maison Légèreという場所の核となる考え方でもあります。この名前には、“軽やかさ”という意味だけでなく、環境への負荷をできるだけ軽くするという思いも込められています。」
こうして、Maison Légèreの物語は、一台のピンク色の洗面台との出会いから始まることになった。
1. 空間の主役になる一点を見つける

クレージュがコラボしたピンクの洗面台!
「この洗面台は、Maison Légèreのために最初に買い付けたアイテムです。Superchinerieのために日頃からリサーチをしているなかで、ファッションブランドのクレージュと、サニタリーメーカーのアリアがコラボレーションしていたという意外な資料を見つけました。ピンクの洗面台が欲しいと思ったのは、きっとそれがきっかけだったのでしょうね。ただ、このモデルはブルーよりもずっと見つけるのが難しいんです。でも時間をかけて探し続けて、最終的には50ユーロ以下で理想の一台に出会うことができました。この洗面台を中心に、キングサイズベッドを備えた寝室に隣接するバスルーム全体のデザインを組み立てていきました。Maison Légèreには3つの寝室があり、それぞれに専用のバスルームがあります。私はあまり色を多用するのが好きではないので、それ以外はピュアでクリーンな印象のパレットにまとめました。床にはベージュのモザイクタイル、壁には白いタイル、シャワーブースの間仕切りにはガラスブロックを採用しています。さらに、1990年代にイケアから発売されていた白いPC Vagoチェアを置いて、ゆとりのある空間に心地よさをプラス。スパのようなリラックスした雰囲気を演出しています。すべては、このピンクの洗面台との出会いから始まったのです。」
2. 先入観を持たない

Baumannのパーテーションが教えてくれたこと
「このBaumannのパーテーションは、スイートルームに置いています。ブロンズのエプロン(化粧板)が付いた1920年代のバスタブのすぐそばにあるんです。この部屋全体のテーマは、ヌードというモチーフ。壁に飾ったドローイングや、お尻の形をしたフラワーベースなど、この空間にパーテーションを置くのはごく自然な流れでした。実は、このBaumannのパーテーション自体は、私が特別好きなデザインというわけではありません。1950年代のスタイルは、もともとあまり好みではないんです。でも、この部屋ではとてもよく馴染みました。1980年代のRoche Boboisによるフトンを思わせるブラックのベッドや、メタルフレームが印象的なUSMのナイトテーブルと組み合わせることで、時代やスタイルの異なる要素が心地よく溶け合ったんです。そうしたミックスによって、特定の時代性を感じさせすぎず、空間全体にほんのりとジャポニスムを思わせる雰囲気も生まれました。」
3. 異なる時代や素材を自由に組み合わせる

圧搾機とMarcel Breuerを思わせるチェア
「この古い圧搾機は、Maison Légèreのオープン後に迎え入れたものです。空間づくりを考えるとき、私がいちばん避けたかったのは、ラスティック・シックや田園風といった、誰もが思い描くようなカントリーハウスのスタイルでした。だから、木材を多用したり、古い職人家具ばかりを並べたりといった、田舎の家らしい定番の演出からは意識的に距離を置いていたんです。それでも、この圧搾機には一目惚れしてしまいました。だから思い切って、チューブ状のスチールフレームを持つ、Marcel Breuerを思わせるデザインのチェアと組み合わせてみたんです。そうすることで、この存在感のある道具がぐっと個性的に見えるようになりました。素材や年代の異なるものをあえてミックスし、ひとつのスタイルにまとめすぎないこと。それこそが、空間にオリジナリティと豊かな表情をもたらす秘訣だと思っています。」
4. 思い込みを捨てる

エルム材のローテーブルが教えてくれたこと
「リビングは70㎡ほどある、とても広い空間です。この空間に表情を与えるため、床はあえてブラックタイルとコンクリートの2種類を使い分けました。また、ここには美しい木の梁があるので、ラスティック・シックな雰囲気になりすぎないよう、木製家具はできるだけ増やしたくなかったのです。そこで当初は、Willy Rizzoを思わせるような、ブラックメタルのローテーブルを探していました。でも、その選択には少し迷いもありました。デザイン性が強くなりすぎて、このリビングがギャラリーのような空間や、“ロフト”のような雰囲気になってしまうのは避けたかったのです。そこで一度立ち止まり、本当に大切な条件は何かを考え直しました。それは、テーブルがとにかく低いこと。ソファも低めなので、その高さを揃えることで、よりくつろげる空間になり、部屋のどこにいても暖炉が視界に入るようにしたかったのです。そんなとき、偶然見つけたのがこのローテーブルでした。理想的な高さで、1970年代のエルム材(瘤杢)。実は私は、デザインとしては1970年代のスタイルが大の苦手なんです。それでも、この空間では驚くほどしっくり馴染みました。先入観に耳を貸しすぎないこと。それが、ときには思いがけない、最高の出会いにつながるのだと実感しました。」
5. 好きな素材を“軸”にする

ステンレスという選択
「私はステンレスという素材に目がありません。Superchinerie を見てもらえればわかると思いますが、扱っている商品のなかにはステンレス製のテーブルウェアがたくさんあります。Maison Légèreでも、その素材はさまざまな場所に登場します。USMの収納家具やベッドサイドテーブルをはじめ、クロームの輝きを放つアイテムを家のあちこちに取り入れているんです。なかでも、最もステンレスが主役になっているのはキッチンです。ワークトップには、もともとレストランで使われていた冷蔵カウンターをリメイクして再利用しました。このキッチンは、居心地がよく、使い勝手にも優れた空間にしたかったので、この家具を丁寧に修復し、空間に自然に馴染むよう仕上げています。もちろん、調理器具もすべてステンレス製。
6. できるだけ初期モデルを選ぶ

ヴィトラの「ウーテン シロ」を探し続けた理由
「ランサローテ島を訪れたとき、もちろんアーティストのCésar Manriqueの自邸も見学しました。そこには、ウーテン シロのウォールオーガナイザーが掛けられていて、彼は絵筆や制作道具を収納していたんです。無造作なのにきちんと整理されている、その絶妙な佇まいに強く惹かれました。フランスへ戻ってからも、その光景が頭から離れず、このウォールオーガナイザーを探し始めました。ただ、欲しかったのは現行品ではなく、初期モデルです。新しいものには、私が惹かれる色合いや、長い年月を経た素材ならではの風合い、味わいがないからです。最終的にオークションで一台見つけることができました。ただ、状態はかなり悪かったので、自分たちで修復しました。いまでは、そのウーテン シロは家の白いコンクリート階段に掛けられています。でも、小物は何も入れていません。収納としてではなく、一枚のアート作品のように飾っているんです。それは同時に、Maison Légèreで大切にしたかった、どこか修道院を思わせるような静謐でミニマルな空気感を象徴する存在にもなっています。」
Maison Légère
Le Tronchet Lieu-dit, 72320, Gréez-sur-Roc.
★Google Map
問い合わせ&予約
https://www.maisonlegere.com/
https://www.superchinerie.com/
From madameFIGARO.fr
※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
- text: Vanessa Zocchetti (madame.lefigaro.fr)