マッシのアモーレ♡イタリアワイン イタリア人はフランス産ワインを飲まない!? 国民に根付く5つの共通認識とは。

Gourmet 2024.08.12

マッシ

日々の生活を彩るワインを自分らしく楽しむフィガロワインクラブ。ワインの本場でもあるイタリアでは、どのようにワインを楽しんでいるのだろうか? イタリア人ライター/エッセイストのマッシが、イタリア人とワインの切っても切り離せない関係性について教えてくれた。

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「真の文化遺産」であるワイン。

イタリア人にとって愛のように情熱的で、欠かせない日曜日のランチのように伝統的で、サッカーのように人気があるのがイタリア産ワイン。もっと言えば、人生の最高の仲間でもある。そして、イタリア人はフランス産などの外国産ワインをあまり飲まないのが現実だ。

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マッシの故郷、ピエモンテのワイナリーにて。レンガ造りの古い建物の中に、趣深いテイスティングルームがある。

イタリア国内外で高評価を受けるピエモンテのワイン産地に生まれ育った僕は、多くの人に新しい目線でワインを楽しんでもらいたいと思っている。忘れないでほしいのは、イタリア人にとってワインは単にブドウから造られる飲み物というだけではなく「真の文化遺産」だということだ。

イタリアのレストランでは水よりワインのほうが安いので、食事中は水よりワインを飲む人が多い。そしてその地域のワインを飲む時には、その地域の歴史と情熱も感じられる。きっとワイン好きな日本人にとって、イタリアは天国のように思えるだろう。いつの間にか、イタリアに恋に落ちてやめられなくなってしまうのだ!

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若年層を中心にワイン人気が高まっている!?

近年、イタリアにおけるワイン消費には大きな変化が見られる。特に注目すべきなのは、若年層を中心にワイン人気が高まっていることと、「イタリア産」への強いこだわりが根強いことだ。

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ピエモンテのワイナリーにて。伝統的な大きな木樽で、ワインを熟成している。

Enpaia-Censisというイタリア農業観測所が発表した「世代別のワイン消費に関する2024年レポート」によると、ワインはもはや単なる飲み物ではなく「人々の生活に深く根ざした文化の一部」として位置づけられているのだという。

イタリア人にとって、ワインは以下のような価値を持つことが共通認識になっている。

品質: 話題のものや人気なものより、高品質なワインを求める。
味: ボトルから注がれるワイン、ワクワクしながら味わいを楽しむ。
伝統: 思い出と地元愛の上に、長い歴史と伝統を持っている。
アイデンティティ: イタリアの文化やアイデンティティを象徴している。
持続可能性: 環境に配慮した生産方法で造られている。

食卓に欠かせないというのは家族と同等の大切な仲間だと言っても過言ではない。イタリア人は子どもの頃からそんな環境にいるから、ワインを飲まなくても無意識にその魅力と大切さが身体の一部になる。

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多様性と地域との繋がりが、イタリアワインの成功の秘密。

ワインの魅力は単なる味の評価だけではないと感じているイタリア人にとって、ワインは消費食品ではなく、生きる情熱の源となり、自分たちのアイデンティティを守る手段でもある。そしてワインに対しての向き合い方と感覚は、年齢によって変化する。18歳から34歳の若者たちは、ワインを社交の場での飲み物として捉え、友人との集まりや外食の時に楽しむ傾向が強い。一方、35歳から64歳の中年層は、家族や友人との食事の時にワインをともにすることを好み、より伝統的な飲み方をする傾向が見られる。

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ピエモンテのスーパーマーケットの様子。ワインコーナーには地元産のワインがずらりと並ぶ。

興味深いことに、多くのイタリア人にとって、ワインを選ぶことは単なる消費行動ではなく、感情的な体験とアモーレで行うことが多い。新しいワインを試すことや、ワインを通して自分自身を発見することなど、ワインは人々に多様な喜びをもたらす。そして、フランスワインとの大きな違いがどこにあるかというと、その多様性と地域との繋がりにある。これは同時に、イタリアワインの成功の秘密だ。イタリア人とワインの関係が深くておもしろいと思う瞬間は、海外で現地のスーパーに地元のワインを発見すると、喜ぶだけではなく自慢まですること。海外にいることを忘れることさえある。

ワイン産地でとれる食材とその郷土料理は密接に結びついている。たとえば、ピエモンテ料理にシチリアの白ワインを出してしまうと、現地の人たちには受け入れられない可能性が高い。料理とワインは最高の仲間になるか、最強の敵になるか。ワインの共通点で仲良くなるイタリア人がいれば、ワインで文句と戦いが始まるイタリア人もいるほどだ。せっかくおいしい料理と素晴らしいワインを味わえるのに、食材と味のことを考えずに組み合わせてしまったら胸が痛む。そして、食卓に隠れている楽しさもなくなる。

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僕の故郷であるピエモンテ州モンフェッラート地方は、爽やかな丘にどこまでもブドウ畑が広がっている。ワイナリーがたくさんあって試食や見学、イベントの体験から購入までできる。実際にワインを造っているワイナリーと仲良くなると、さらに地元愛が膨らむ。子どもの時からのこの風景がより親しいものになる。

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ピエモンテのブドウ畑より。ランゲ=ロエロとモンフェッラートの景観は2014年に世界遺産に登録された。
 

ちなみに、モンフェッラートで生産されるワインの量は年間でおよそ650万本だ。もし日本でピエモンテ産のワインを見たら、僕は必ずラベルを読むことにしている。故郷に近づけば近づくほど、テンション上がるというピエモンテラバーのピエモンテ人なのだ。 

日本人もイタリア人のように、ワインとより深い関係を造って、より楽しい時間を過ごせるようになってくればうれしい。

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1983年、イタリア・ピエモンテ生まれ。トリノ大学大学院文学部日本語学科修士課程修了。2007年に日本へ渡り、日本在住17年。現在は石川県金沢市に暮らす。著書に『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(2022年、KADOKAWA 刊)
X:@massi3112
Instagram:@massimiliano_fashion

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