【韓国旅行】アート好きがいま訪れる、済州島の建築&美術館7選。

Travel 2026.03.25

韓国旅行で訪れたいもうひとつの目的地、済州島。美しい自然に囲まれたこの島には、安藤忠雄や伊丹潤の建築、美術館やギャラリーが点在する。アートを目的に巡る、感性が満たされる大人の済州旅へ。


済州

JEJU/제주

JEJU 1 (4).png
左上:エリアによって海岸の雰囲気が異なる。金陵(クンヌン)海水浴場は白い砂浜が広がる。 右上:済州馬の放牧地があちこちに。 左下:済州の方言で"石のおじいさん"を意味するトルハルバンは島の守り神。右下:温暖な気候を生かしたミカン栽培が盛ん。

韓国の"ハワイ"と呼ばれる済州島は、国内最高峰の漢拏山(ハルラサン)がシンボルの火山島。紺碧や瑠璃色といったさまざまな色彩の美しい海が裾野を囲む。暖かな気候で植物が生き生きと育つ光景を見れば、誰もが韓国随一のリゾートだと納得するはず。名建築家やアーティストがこの島に魅せられ、羽を伸ばして作品制作に向き合える、まるで大きなキャンバスのような包容力ある存在なのだ。

村野藤吾賞などを受賞した在日韓国人2世の建築家ユ・ドンリョン(伊丹潤)も、この島と深い繋がりを持つひとり。1999年竣工、2001年創業のポドホテルを皮切りに、水・風・石の美術館や方舟教会などを手がけてきた。伊丹の建築に続き、安藤忠雄が本態博物館や維民美術館などを設計。リアルな水滴を描き、世界的な現代アート作となったキム・チャンヨルに よる金昌烈美術館、韓国単色画の父と呼ばれるパク・ソボの財団による栖甫美術文化空間も誕生した。

島の西部、安徳(アンドク)や翰京(ハンギョン)などにその多くが位置しているのも興味深い。これは、一角に広がる楮旨(チョジ)文化芸術人村と深い関係がある。約20年前、人口減少によりこのエリア唯一の小学校が廃校の危機にさらされた時、村人たちが立ち上がり、無償で若手作家を家族ぐるみで誘致。画家や彫刻家、書道家や音楽家が集まるアーティストヴィレッジを形成した。いまでは済州現代美術館や済州工芸博物館を含む30以上のアート施設を擁する、いわば済州の芸術的ホットスポットとなった。長閑な自然と調和する現代建築やアート――。癒やしと刺激を享受する、感性が満たされる旅が済州なら叶うはず。


注目の2エリアで、建築&アートホッピングへ!

[安徳 アンドク 안덕 - 翰京 ハンギョン 한경]

島の中心部から西へ車で約40分走った先、楮旨文化芸術人村を中心に、自然を生かした大胆な建築と現代アートや地元の工芸を堪能。

1. 方舟教会

バンジュキョフェ
방주교회

方舟教会 1.png
正面から見た方舟教会。水面に浮かんださまは、いまにも動き出しそう。

青空と太陽の光が似合う、美しき祈りの場。
陽の光を目一杯浴びてキラキラ輝き、空の色を映し出す屋根。水盤に浮かぶ船のようなフォルムは、ノアの方舟をコンセプトにしたという伊丹潤による設計だ。いざ足を踏み入れると、木材で統一されたシックで厳かな空間が広がる。腰壁部分はガラスで囲まれ、水面を反射して足元から入る光が内部を自然に明るくする。ユニークな形の天窓は、外から見ると魚が口を空(天)に向けているイメージで造られている。

方舟教会 2.png
上:2009年にキリスト教教会として誕生。深い木材の色が心を落ち着かせてくれる。下:横から見ると、空に向かって伸びる中央の天窓がよくわかる。屋根は3色の亜鉛メッキ鋼板を採用し、角度や光の加減によって輝き方が変わる。教会の向かいには建築美と高台からの風景を楽しめるテラス付きのカフェもある。

方舟教会
バンジュキョフェ
방주교회

113 서귀포시 안덕면 산록남로 762번길
113 Sallongnam-ro 762beon-gil, Andeok-myeon, Seogwipo-si 
Tel: 064-794-0611 
開)9:00〜17:00(火、木、金) 13:00〜17:00(水) 
※上記は一般公開時間。
ミサ等の催し中は入館禁止
http://www.bangjuchurch.org/ 
※済州空港から車で約40分

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2. 伊丹潤美術館

ユ・ドンリョンミスルグァン
유동룡미술관

伊丹潤美術館 1.png
エントランスの先には第1の展示スペース兼ライブラリーがある。館内に漂う墨汁の香りがどこか心を落ち着かせてくれる。

日韓をバックボーンに持つ、世界的建築家の軌跡。
伊丹潤の死後、彼の功績やインスピレーション源、世界観を感じられる場所として、娘で建築家のユ・イファが設計&開館。無機質なコンクリートや黒い床と壁、窓から見える自然の対比が美しく、静粛な雰囲気が漂う。展示は大きく4つに分かれ、第1の展示室は「韓国と日本」がテーマ。韓国のパスポートや建築関連の資料、アイデアを走り書きした自筆のメモなどが置かれる。2階は建築模型が並ぶブースと映像室、それぞれの作品に対する背景や想いを文章で添えたドローイングコーナー。伊丹の考え方に触れることで、済州の建築巡りがより楽しく、深みが増す。

伊丹潤美術館 2.png
2階の模型コーナーには、方舟教会をはじめ港区赤坂のMビルディング(現・バルビゾン74)の建築模型などが、彼が描いた絵画と併せて展示されている。
伊丹潤美術館 3.png
上:文章、書くことを大切にしたという伊丹。一枚の布には、表にその作品に対するメッセージが、裏には建築スケッチが呼応するかたちで描かれている。 下:1階の奥にあるティーサロン。シグネチャーティーは店名と同じ「Song of the Wind(風の歌)」。済州産オーガニック緑茶をベースにしている。

伊丹潤美術館
ユ・ドンリョンミスルグァン
유동룡미술관

제주시 한림읍 용금로 906-10
906-10 Yonggeum-ro, Hallim-eup, Jeju-si
Tel)0507-1385-2678 
開)10:00〜17:00最終入場 
休)月、1/1 
料)一般26,000ウォン 
https://itamijunmuseum.com/
※済州空港から車で約40分

3. PODO Hotel

ポドホテル
포도호텔

PODO Hotel 1.png
韓室タイプの116号室。障子の奥にはホテルの庭が広がり、遠くに漢拏山が見える。オンドル&温泉付きなのもうれしい。

自然と意匠の融合を、済州随一のホテルで堪能。
伊丹潤が手がけた、韓国国内における代表作。丘の上で雲に包まれる場所ゆえ、雲をイメージした丸みのある屋根をデザインした。全室テラス付きの部屋は洋室、韓室とデザインの異なる2タイプ。木枠を室内側にして障子紙を外側に張る和式と、室内側に韓紙を張る韓国式、ふたつを組み合わせた障子は、両国にルーツを持つ伊丹ならではの発想。定期的に長期メンテナンスをすることで、リュクスなクラシックホテルの風格を保ち続けている。

PODO Hotel 2.png
上:積雲を模した屋根が特徴。ホテルの周りはミニトレッキングコース。春は菜の花、梅雨はアジサイ、秋はススキ、冬は椿と四季折々の草花が楽しめる庭も自慢。下:ホテル中央に位置する中庭、ケスケードには大きな吹き抜けがあり、季節の草木が飾られる。毎日17時から開催される無料の建築ツアーに参加するのもおすすめ。

PODO Hotel
ポドホテル
포도호텔

서귀포시 안덕면 산록남로 863
863 Sallongnam-ro, Andeok-myeon, Seogwipo-si 
Tel)064-793-7000 
全26室 全室バスタブ付き 
料)デラックス洋室1室880,000ウォン、デラックス韓室1室935,000ウォン(いずれも朝食付き) https://podo.thepinx.co.kr/
※済州空港から車で約40分

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4. 栖甫美術文化空間

ソボミスルムナゴンガン
서보미술문화공간

栖甫美術文化空間 1.png
メインの展示室は、コンクリート壁とガラス窓で構成。ガラスの奥の中庭には、済州の木々や火山石を配置。平面作品が多いが、同じアーティストによる立体作品も展示。

"一点ギャラリー"がコンセプト。韓国現代アート発見の場。
ルイ・ヴィトンやベルナルドとのコラボでも知られ、2023年に逝去するまで世界を舞台に活躍したアーティスト、パク・ソボ。24年、財団によるギャラリーが本格始動した。展示は韓国出身の30代をメインに、注目アーティストにフォーカス。自然光がたっぷりと入る半円柱形の建物で、財団推しの作家の作品をゆったりと鑑賞できる。取材時は画家キム・ソヌの作品を展示。済州に滞在して制作した作品は、サルスベリやミカンなど島の自然を存分に取り込んだ唯一無二のもの。韓国現代アートに触れるのに最適な場所。

栖甫美術文化空間 2.png
上:2階は新設したばかりのカフェで、自然をそのまま借景に。建物の裏にはパク・ソボの別荘が立つ。下:1階のサブ展示室。「絵は見る人の癒やしになることが大切」とのソボの言葉どおり、展示される作品はどこか温もりを感じさせるものばかり。

栖甫美術文化空間
ソボミスルムナゴンガン
서보미술문화공간

제주시 한경면 저지14길 23-4
Mail)seoboartspace@gmail.com
開)10:00〜17:00(1〜2月、10〜12月) 10:00〜18:00(3〜9月) 
休)月 
料)入館無料 
https://seoboartspace.com/
※済州空港から車で約40分

5. 本態博物館

ポンテバンムルグァン
본태박물관

本態博物館 1.png
朝鮮時代後期の食器は、自然光を生かした展示。上左:常設の第2展示室は草間彌生など国内外の現代アート。リラックスして見てほしいという考えから靴を脱いで入室する。

伝統工芸から現代アートまで、今昔を名建築で体感。
韓国伝統の瓦や石垣にコンクリートを合わせるなど、過去と現在を対比させたような建物は安藤忠雄によるもの。自然の中で美術を堪能することを目的に造られ、彷徨う中で庭や池が現れるサプライズが楽しい。5つの展示室は大小さまざまで、常設となる第1展示室は朝鮮時代のうつわなど伝統工芸が並ぶ。お膳に似た小さなテーブル、ソバンは160点収蔵され、圧巻のバリエーション。ナム・ジュン・パイクや奈良美智の作品が置かれる現代アートブースも必見。

本態博物館 2.png
上:第1展示室の伝統工芸コーナーから。一片、かけらを意味するチョガッポは、布のはぎれを縫い合わせた手拭いのようなもの。かつて布が貴重だった時代に生み出された工夫の賜物。左下:常設の第2展示室は草間彌生など国内外の現代アート。リラックスして見てほしいという考えから靴を脱いで入室する。 右下:第1展示室を抜けた先にあるカフェのテラス。安藤が青春のシンボルとしてデザインした『青いりんご』も。

本態博物館
ポンテバンムルグァン
본태박물관

서귀포시 안덕면 산록남로 762번길 69
69 Sallongnam-ro 762beon-gil, Andeok-myeon, Seogwipo-si
Tel)064-792-8108 
開)10:00〜18:00 
休)無休 
料)一般30,000ウォン
https://bontemuseum.com/en/ 
※済州空港から車で約40分

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6. 済州道立 金昌烈美術館

チェジュドリプキム・チャンヨルミスルグァン
제주도립 김창열미술관

済州道立 金昌烈美術館 1.png
館内にはチャンヨルの立体作品も複数展示。『Ceremony』(1993年)は、奥にガラスの水滴を、手前に無の状態を表現した作品。

豊富な所蔵数を誇る、"水滴画家"肝煎りの館。
リアルな水滴画で著名なキム・チャンヨルは存命中、描き終った瞬間から飛ぶように作品が売れていた人気アーティスト。彼の作品を約240点所蔵しているという希少性ゆえ、全国からファンが訪れている。本館には3つの展示室があり、テーマに合わせてチャンヨルの作品を常時30〜40点ほど展示。特別展示では、彼とゆかりのある人物や作品にフォーカスしたり、AIを活用して彼のコメントを復元・再現するなど、多面的なアプローチがおもしろい。

済州道立 金昌烈美術館 2.png
取材時はコレクションルームにて「水滴の部屋」をテーマにチャンヨルの1983〜85年頃の作品を展示。
済州道立 金昌烈美術館 3.png
上:黒い石で統一した建物は、コンペで選ばれた建築家のホン・ジェスンが担当。中庭の回廊にも3つの水滴とひとつの空洞(無)を表した作品を配置。下:済州はチャンヨルが20代の頃住んでいた思い出の地。島からの依頼もあり楮旨文化芸術人村の一角に美術館建設を承諾。周りには原生林が広がる。「アートの最終地点は美術館」というチャンヨルの考えにより、墓のようなデザインとなった。

済州道立 金昌烈美術館
チャンヨルミスルグァン・キム
김창열미술관 제주도립

제주시 한림읍 용금로 883-5
883-5 Yonggeum-ro, Hallim-eup, Jeju-si
Tel)064-710-4150
開)9:00〜17:30最終入場(1〜6月、10〜12月) 9:00〜18:30最終入場(7〜9月)
休)月 ※祝不定休 
料)一般2,000ウォン
https://kimtschang-yeul.jeju.go.kr/
※済州空港から車で約40分

7. 済州工芸博物館

チェジュコンイェバンムルグァン 
제주공예박물관

済州工芸博物館 1.png
2階の常設展示スペースにはオンギのほかタンスや儒教祭祀関連のものなど、民衆に広まった日用品&工芸品を展示。

韓国各地の歴史や特色と、工芸を通して出合う。
オンギ(韓国の甕)を中心に、朝鮮時代の民画、文字図屏風や昔の雨具など工芸品がずらり。キムチや醤油用オンギは通気性のあるもの、水は防水性のあるものなど用途別で見比べるのも興味深いが、済州のオンギは塩を含む火山性土壌で作られているなど、風土の特性も学べる。小さいながら民衆のかつての暮らしが見える濃厚な場所。

済州工芸博物館 2.png
楮旨文化芸術人村内にあるので、徒歩で散策するのもおすすめ。1階は企画展示。
済州工芸博物館
チェジュコンイェバンムルグァン 
제주공예박물관

제주시 한경면 저지14길 36
36 Jeoji 14-gil, Hangyeong-myeon, Jeju-si
Tel)064-772-4280 
開)10:00〜11:30最終入場、13:00〜17:30最終入場 
休)月 ※祝不定
料)5,000ウォン 
https://jejucraftmuseum.com/
※済州空港から車で約40分

立ち寄りスポット

Muroi

ムロイ
무로이

Muroi.png
上:手前から時計回りに、「Café Latte」6,500ウォン、ピーナッツ塩パン「우도 땅콩 소금빵」4,000ウォン、ナッツがのったパン「츄리넛」4,500ウォン、フィナンシェ「제주 현무암 휘낭시에」3,800ウォン、「Matcha Latte」7,500ウォン、下:天気によってはテラス席も利用可。

ギャラリーのような空間でパンを頰張る。
2021年に誕生したパンが自慢のご当地カフェ。黒で統一し、装飾を排した静かな空間はギャラリーさながら。済州産ピーナッツを使った塩パンや玄武岩をイメージした黒いフィナンシェなどオリジナルのパン&スイーツを、窓から見える広大な庭を観賞しながら召し上がれ。

Muroi
ムロイ
무로이

서귀포시 안덕면 동광본동로 21
21 Donggwangbondong-ro, Andeok-myeon, Seogwipo-si 
Tel)0507-1412-0008 
営)10:30〜18:30L.O. 
休)無休 
@_muroi 
※済州空港から車で約40分

*「フィガロジャポン」2026年2月号より抜粋

photography: Youngwoong Yim, coordination: Shinhae Song (Tano International), 協賛:韓国観光公社(@kto.japan)

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