1足、もう1足......パリジェンヌを狂喜させるノマセイのすべて。

Paris 2022.12.16

2019年秋にファーストコレクションを発表した「NOMASEI(ノマセイ)」。マリーヌ・ブラケとポール・トゥナイヨンのふたり組によるシューズブランドだ。モード感と履き心地が共存するタイムレスな靴はパリジェンヌたちのハートをすぐさま射抜いたけれど、人気の理由はもうひとつある。いちどノマセイの靴を知った彼女たちは、マリーヌとポールの物作りの姿勢にも共感し、ますますファンになるのだ。クロエの靴部門での同僚だったというふたりが独立して、いまにいたるまでの話を聞いてみよう。

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左: 「NOMASEI(ノマセイ)」を設立したのは、クロエでシューズデザインを担当していたポール・トゥナイヨン(右)と商品開発担当だったマリーヌ・ブラケ。 右: パリ2区のショールーム。

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セレブリティが履いて、爆発的にヒットしたローファー「NONO」

「去年のクリスマスの頃に『エミリー、パリへ行く』があって、それから今年の1月にニコール・キッドマンが履いて、その後クリスティン・スチュワート、ジジ・ハディッドが続き……彼女たちが選んだのはローファーの『NONO(ノノ)』です。これ、ジャーナリストたちにはもともと絶大な人気があって、いまではブランドの名前に結びついている型なんです。私たちがいちばん遊べるデザインで、色を変えてリミテッドエディションをこれまでにいくつも出しています。だから色違いでノノを複数足持ってる女性も多いんですよ。もっとも販売した数という点でいうと、いちばんはノノじゃないんです。ベストセラーはリボンもラインストーンもついていないサンダルの『BAGHERA(バゲラ)』。ローファーのノノはその次です」

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真鍮のアイコニック・メダルがついたローファー「NONO」。

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左: 色遊びのバージョンは期間限定で。 右: 6センチヒールの「Trench」。

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女性の脚を美しく見せる

サンダルのバゲラ、パーティに映えるラインストーンを散りばめたタイプとリボン付きがあるサンダル「ADORA(アドラ)」。どれも甲の部分の深いV字カットが脚を美しく見せそう……。

「見せそうではなくて、本当に脚を美しく見せるんですよ!! 研究を重ね、深いカットに行きつきました。つねにどの型も脚が美しく見えるようにデザインしているし、また、オブジェとしての靴ではなく履きやすさの追求もあります。足の甲と重さのバランスを研究し、足に快適であるように考えられています。すでに、ノマセイの靴は履きやすい!という定評があります。私たちのオフィスはショールームを兼ねていて、ここに買いに来る女性たちからよく耳にするのは、足が痛くなる靴は欲しくない! だけど、スニーカーは飽き飽き、って」

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左: パーティシーズン、気になる「ADORA(アドラ)」。499ユーロ 右: リボン付きのアドラ。

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390ユーロ。

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履きやすく、価格もリーズナブル

「そして価格についても考えられています。ノマセイの靴は、今の若い女性たちが支払えるリーズナブルな価格なんです。ブティックではなく、私たちが直接販売しているので中間マージンが派生しません。パリではブティック58Mが少しノマセイを扱っているけど、これはブランドの知名度を広めるため。私たちのマージンを削ることで、58Mでも直接販売と同じ価格で売られています。私たちの周囲にはブーツに1000ユーロ支払うくらいなら、ヴァカンスに行きたいという女性ばかり。ブランドを始めるにあたって、最初から自分たちの友だちが履けるシューズブランドにしたい!と考えていました。私たちのような女性に向けたブランドなんです。だから彼女たちが欲しいものを想像することができるんですね」

ショールームで直接販売

ショールームでの販売は土曜はフリー、ウィークデーはアポイント制だ。マリーヌが客の対応をする。靴選びの相談にのる彼女にとって、これは女性たちの生の声を聞くチャンスなのだそうだ。彼女たちが何を望んでいるかをキャッチし、オフィスでデザインに勤しむポールにアイデアをもたらすことができる。

「私たちのような小さなブランドの利点って、クライアントとの距離の近さだと、よくふたりで話しているんです。地方からここに買いに来る女性もいて、雑誌の〇〇で見たといってページの切り抜きを持ってきて……。いろいろ試して、探しにきた靴と全く違うタイプのを買っていたりするのでおもしろいわ。いつかブティックを開くことがあっても、プライベートな雰囲気でひっそりと試着したり、買い物をしたいという女性たちのためにいまのようにショールームでの販売も続けてゆくつもりです」

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パリ2区、買い物客に開かれたショールーム。12月23日までポップアップを開催中。アドレスやドアコードなどはサイトかインスタグラムでチェックを。

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後ろに2本のラインが入ったブーツも人気

「これはスポーツからアイデアをいただいたものです。60年代のローラースケーターたちってみんな後ろに2本の帯が入ったニットの靴下を履いていたんですよ」。このポールの言葉に、マリーヌが続けた。「先にクロエを辞めたポールと毎週土曜の午後に会って、私たちブランドの準備を徐々に始めていたんです。その頃に彼女が見せてくれた綺麗なデッサン……いまでもまるで昨日のことのように覚えてるわ。まだブーツにもなっていず、フェルトで引いた2本線がデッサン帳にたくさんあって……。ポールがこう言ったの。『こうした2本の帯が入ったのを絶対に作るべきだ』って。『Strada』とかのブーツ、後ろから見るととってもきれいでしょ。いま、これはブランドのシグネチャーのひとつとなってるわ」。ルブタンの赤い靴底が“フォロー・ミー”の意味を持つように、この2本線に目を奪われて、履いている女性の後をつい追いかけたくなる!?

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左: 「Strada」510ユーロ 中: 「ARIA」535ユーロ 右: 「Twist」780ユーロ

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ちょっと不思議なブランド名の由来は

「“6本の手(セイ・マニ)”というイタリア語を反対にしてアレンジしたものです。6本、つまりマリーヌの手とポールの手と3人目の手という意味。3人目は私たち以外の靴に関わる全ての人々のことで、たとえば工場の職人、素材の業者、それにジャーナリスト、広報担当、購入者などいろいろ……ノマセイというのはチームの仕事で、各人が貢献しているんです。みんなが手に手をとって、という仕事の仕方をブランド名に取り入れたわけです。ノマセイはとてもヒューマンなプロジェクト。大勢がいて、ひとりひとりの価値を大切にしています」

「ブランドのシンボルとして手が描かれたメダルをクリエイトしました。これをローファーにつけて……。ブランド創設後わりとすぐに手のフォルムのペンダントも大小デザインして、販売しているんですよ。ポールの手相から生命線と幸運線が描かれた手で、その手がはめた指輪には数字の6がはいっています」

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シーズンごとにテーマのあるコレクションではない

「そうです。ノマセイは靴のタイプ、用途に応じてという考え方。最初に発表したのはデイタイムのサンダル、パーティサンダル、海岸用サンダル、デイタイムのブーツ、ソワレを意識したブーツ、登山ブーツ、ローファーの7型でした。現在は15型。新しい靴については毎回まず少量を出してテストをしています。女性たちにすぐさま気に入られる靴もあれば、まずはジャーナリストが飛びついて、それから女性たちに人気となるという靴もあります。たとえばバレエシューズですが、これ、ジャーナリストたちはすぐに気に入って、誌面などで取り上げられたのだけど、実際に売れるようになるのに時間がかかったんです。なぜだろうと、試しに価格を下げたところ、すぐに売れるようになりました。でも、それだと私たちの取り分がでません。意外かもしれないけれど、バレエシューズって製造価格がローファーと同じくらいで……。それゆえに安く製造できるようになるまで、しばらくこのデザインは中止に決定。またつま先が尖ったブーツは素材が入手不可能となったので、これも革が見つかるまでしばらく製造中止になります」

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左: 「Slalom」 中: 「Rodéo」 右: ユニセックスのミュール「Hotel de la plage」。イタリアのIl Capri Hotelとのコラボレーションでは、ホテルのコードカラーの2色をクリエイトした。

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イタリアの製造者を共同経営者に、より透明な物作りを

「ノマセイはイタリアのトスカーナ地方にあるモントポリという村の製造業者との共同事業なんです。だからブランド名にもParis×Montopoliと明記してあるんです。ふたりでブランドを始めるにあたって、人間的な製造業者を探していたところ、フローレンス出身の友人から紹介された人なんです。でも、最初は断られてしまったんですね。なぜかというと彼は仕事相手に対して情熱を傾けるタイプの男性で、10年前から仕事をしていたブランドがビッグになって彼よりもっと安い業者を探すからって去ってしまったところで……これにとてもがっかりした彼は、そんな思いを繰り返したくないというのが断りの理由でした。結局、彼のほうから共同経営の提案がきたんです。私たち新人にはこれは大きなチャンスで、コロナ期もおかげで乗り越えられました。私たちは職人全員を知っているし、素材の卸業者も知っているので製造について管理できる部分が大きいんです」

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ダービーシューズの「SONICS」。

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職人仕事とサステナビリティ

「いま、彼の工場は広い敷地へと移転の最中なんです。環境の持続可能性を求めたエコレスポンシビリティな製造を目指して、水もリサイクルして暖房に用いるとか……。職人たちは新しい仕事環境に慣れる必要があるので、靴の仕上がりに遅れがでてしまっています。私たちはそうした事情をクライアントに伝えて、理解を得ています。私たちは製造者とチームなので、鞭打って急がせるというようなことはしません。私たちが使用しているのはフランス、オランダ、イタリアからの革で、可能な限りローカーボンを心がけています。革はレザーワーキンググループの認定を得ているもの、あるいは認証を得るには小規模すぎるなめし業者からのも使いますけど、どれもメタルフリーのレザーです。ヒールは40%はリサイクルで、新しい素材の使用を避けているんです。業者によるとヒールはプラスチックなので廃棄するのも有料。それで再利用の方法を彼らは研究したんですね。私たちにとって再利用も新品も価格は同じだけれど、プラスチックの新たな使用量を減らすことができます。これも私たちが製造業者と共同経営だからできることなんです。こうしていろいろなことについて毎度解決策を探して、見つけて……というのはとても興味深い仕事です」

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過去のコラボレーション、来年のコラボレーション

「以前、ポールのお気に入りの双子のアメリカ人インフルエンサーであるブルスタイン姉妹とコラボレーションをしたところ、すごく話題となってブランドの知名度が広がりました。最近、とても気の合う人と素敵な出会いがあって……その人とのコラボレーショを来春に予定しています」

これは来年2月末のお楽しみである。コラボレーションのパートナーというのは、フランス版ヴォーグでファッションエディターとして活躍し、その後アメリカにベースを移したスタイリストのジュリア・フォン・ボエーム。コンテンポラリーなハイセンスの持ち主だ。コラボレーションは「NONO」を3種、「TRENCH」を2種、そしてそれらにコーディネートさせる5足のソックスという内容である。これもまた、パリジェンヌたちを狂喜させることだろう。

NOMASEI
25, boulevard Poissonière
75002 Paris
※ショールーム兼ブティック(毎週土曜オープン、月〜金は予約制)
休)日
2022年12月23日までポップアップ(予約不要)開催中。13:00〜18:00(月〜土)
https://nomasei.com
@nomasei_official

editing: Mariko Omura

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